セミナー開催報告「中国最新ECプラットフォーム最新動向 TEMU・SHEINの日本EC市場進出は脅威か好機か?」

はじめに

本資料は、2023年8月23日に株式会社Nintが開催したウェビナー「ブランドマネージャー必見!破竹の中国EC勢!TEMU・SHEIN襲来は日本ブランドにとって脅威?好機?」の内容を第一部を抜粋、再編集したものです。ショートムービーのTiktok、ECのSHEIN(シーイン)、TEMU(ティームー)といった中国発のプラットフォームや中国ブランドの最新動向を、中国・日本のEC市場で10年以上データマーケティングサービスを提供するNintの独自の知見から解説をしております。ぜひご一読ください。 本コンテンツはYouTubeで無料公開しているため、動画でも御覧いただけます。

登壇者

堀井 良威 (Yoshitake Horii)
株式会社Nint 経営戦略室 堀井 良威 (Yoshitake Horii) 2005年株式会社アドウェイズ入社、日本国内のデジタルマーケティング事業に従事し、その後中国の広告・マーケティング事業責任者、台湾子会社の役員を経て2021年より株式会社Nintへ参画。現在は中国を拠点として中国企業の日本市場進出及び日本企業の中国事業においてビッグデータを活用したビジネス支援を担当。
川島 和弘 (Kawashima Takahiro)
株式会社Nint エンタプライズディビジョンマネージャー 川島 和弘 (Kawashima Takahiro) 新卒サイゼリヤ、株式会社TMJを経て2016年アマゾンジャパン合同会社へ。 ・Seller Service Account Mgr (モール事業 / 営業) ・Retail PC Vender Mgr (直販事業 / バイヤー) ・SCM Inbound Planner (物流事業 / プランナー) モール・Retail・物流を経験し、2022年Nintへ。Nint Mission 「データで世界を自由にする」 を実現するために、鋭意活動中。

強力なサプライチェーンネットワークとIT技術で日本の脅威になっている中国ECプラットフォーム

日本にとって大きなビジネスチャンスだった中国EC市場

皆さんよろしくお願いします。Nint 上海オフィスの堀井と申します。今日は中国のブランド、中国のECプラットフォームが日本に上陸・進出して来ている昨今の状況を、中国側から見てどう捉えているかについて、いくつかのデータを交えてお話ししたいと思います。
もともと中国は日本企業にとって大きな消費市場となっていました。日本を含めた世界のEC小売市場では、中国ECの市場規模が全体の50%のシェアを占め、すでにナンバーワンです。 その中国EC市場の中で、すでに4,000を超える日本の企業・ブランドが進出を果たしています。国別で見た日本ブランドの中国EC市場におけるシェアは10%、これは米国ブランドに次ぐ2番手です。なかなか貿易ができなかったコロナ禍においても、日本企業は中国ECに積極的に投資をしてきました。

中国EC市場で苦戦を強いられる日本ブランド

しかし、その一方で直近5年ほど、日本ブランドを含めた海外ブランドが中国EC市場で苦戦を強いられるようになってきました。背景には、OEMなどで”世界の工場”として培ってきたモノづくり技術で中国の国産ブランド・製品の品質が向上したこと、さらに「2025年までに世界の製造強国入り」を目指す中国製造2025という国策の後押し、国潮(グオチャオ)と呼ばれる「中国製のファッションや製品を積極的に購入しよう」という中国の若者の中で新たに生まれた流行・ムーブメントが重なり合い、外国・海外のブランドや商品が勝ちづらくなっている最近の中国EC市場の状況があります。

中国ブランド、中国プラットフォームの日本市場進出は脅威となるか?

世界の工場として構築された中国国内の強力なサプライチェーンネットワーク、走出去(ゾウチュチィ)と呼ばれる中国企業の海外進出を後押しする国家戦略、アリババやWechat(テンセント)など高度なIT技術を持つ中国企業が運営するプラットフォームがグローバルで台頭した結果、中国メーカー・ブランドにとって海外進出が容易になっています。これまでの中国企業の海外進出は、下記のようなものでした。
1.海外進出先行型 仕様や規格要求の厳しい欧米諸国へ先行して進出し、要求水準に耐えうる技術力を獲得し、その後国内含めた市場を獲得する 例:ハイアール、MINISO 国:欧米、日本、アジア諸国 2.資源獲得型 海外企業が有する優位な経営資源を買収し、海外進出を果たす 例:レノボ・ボルボ・TCL 国:欧米 3.BOP先行型 海外ではTOPやMOPを狙わず、(商品に対して)低要求なBOPマーケットを先行させる 例:ファーウェイ、ZTE、小米 国:アジア諸国 ※BoP(Bottom of the Pyramid or Base of the economic Pyramid:低所得者層) ※MoP(Middle of the economic Pyramid:中所得者層) ※ToP(Top of the economic Pyramid:高所得者層) しかし、いま起きている中国企業の海外進出の特徴は、 ・独自の経営資源で ・世界最先端のテック技術を展開し ・日本や欧米などのモノ(商品)に対する消費要求が高い国へ進出する という点で、これまでの海外進出のパターンとは一線を画すものになっています。これは日本ブランドが問題意識を持つべきポイントです。

SHEIN、TEMU “逆”越境ECプラットフォームの構造

次に、今回テーマになっている中国発の代表的なECプラットフォームの中から日本でもすでにリリースされているSHEINとTEMUを重点的に説明します。
SHEINは、米国のファストファッション市場の中で、すでにH&MやZaraを大きく上回り、50%のシェアに達すると言われています。SHEINは自営のECサービスで、在庫や価格決定の権利を自ら持ち、アフターサービスまで自社で対応しています。 では、TEMUはどうかというと、2022年にリリースされた複数のメーカーやショップが参入するマーケットプレイス、プラットフォーム型のECサービスです。在庫の権利はメーカーが持ちます。大きな特徴として、価格の決定権をプラットフォームであるTEMU自身が持つことです。一般的なECプラットフォームでは、出店・出品するショップやメーカーが価格決定権を持ちますが、TEMUはプラットフォーム側が独自に価格を設定します。 その他に、AliExpressやTikTok Shopを加えた4つが中国発の海外ECプラットフォームの4大巨頭とされています。

TEMUのビジネスモデル・構造

TEMUは、「みんなで買えば安くなる(共同購入)」「価格(安さ)こそが正義」というポリシーと仕組みで運営されているプラットフォームです。TEMUのアプリを開くと、皆さん驚かれるのが出品された商品の価格の安さです。では、なぜそのような低価格での販売が可能かというと、親会社の拼多多(ピンドウドウ)から授かった強固なサプライヤーネットワークとフルフィルメントサービスを保有していること、それらサプライヤーとの間にあるTEMU独自の入札制度と価格コントロール権によって価格破壊が可能なことです。その反面、TEMUはサプライヤーが疲弊しやすいプラットフォームと言われるため、進出する企業は注意が必要です。

SHEINのビジネスモデル・構造

SHEINは、すでに日本の市場に進出してしばらく経っており、よく認知されつつあるECサービスだと思います。SHEINの特徴は、中国にある世界最大の繊維産業都市「広東省東莞市」という生産拠点の地の利を活かした強固なサプライヤーネットワークを持つこと、ビッグデータを活用して在庫リスクを抑え小ロットで多品種生産を可能にした効率的なサプライヤーの生産体制を構築したこと、と言われています。

注目すべき中国発のメーカー・ブランドの海外進出状況

中国EC市場における主要ブランドのポジションと日本進出状況

我々Nintの持つ中国EC市場データで主要ジャンルの売上動向を分析しました。 ※当社のサービスにおける「売上」は弊社独自の統計技術により算出された「推計データ」です。
中国ECの女性向けアパレル市場では、日本ブランドはユニクロ(UNIQLO/优衣库)一強となっています。中国ブランドだけを見てみると、日本に進出しているブランドはSHEIN等のDTCブランドが中心になっています。
次に、中国ECのロボット掃除機市場では、なんと売上上位商品はすべて中国ブランドで占められていて海外ブランドはゼロです。価格は1万円程度から10万円のミドルプライス程度が主流で、エコバックスなどの日本市場モデル(ハイエンド)開発を代表例に、積極的かつ本格的な日本進出が目立つカテゴリです。
メイクアップ・コスメ市場は、従来、欧米ブランド中心の市場でしたが、近年は花西子(Florasis)や完美日記(PerfectDiary)といった新興ブランドの台頭で市場が大きく変化しています。中国ブランドが欧米ブランドとの勝負に勝ち、上位ブランドでは、中国ブランドのシェアが3割〜4割を占めるようになってきたことに加え、上位ブランドの海外進出(日本含む)が顕著です。
最後にスマホ市場では、従来、アメリカ・韓国・中国ブランドの群雄割拠マーケットでしたが、いまや米国ブランドのApple以外は小米、OPPO、VIVO、栄耀などすべて中国ブランドが上位を占めています。

SHEIN・TEMUなど中国ECプラットフォームが日本市場に与える影響

影響の広さ 〜参入ジャンルが拡大

現状の日本のEC市場では、ファストファッション、ロボット掃除機、小型家電といったジャンルで中国ブランドの参入が目立ちます。しかし、中国国内で着実に実力をつけた中国ブランドが海外に進出している傾向から、今後は健康食品、紙おむつ、珈琲飲料などのジャンル・カテゴリでも中国ブランドが台頭する可能性が高いと考えられます。中国市場では、これらのジャンルはすでに中国ブランドが海外ブランドを追い抜き売上上位を占めているためです。

影響の深さ 〜BOPからTOPへ

いま、日本のEC市場で中国ブランドといえば主にBOP(低所得者層)マーケットでの活躍が目立ちますが、今後は高価格帯でも中国ブランドが目立つようになると予測しています。世界の工場として培った中国ブランドの強力な商品開発力とブランド力、走出去(ゾウチュチィ)などさまざまな政策による後押し、高度にエコシステム化されたSHEIN・TEMUなどの越境ECプラットフォームの登場と、中国ブランドにとって好機となる材料が揃っているためです。

影響の長さ 〜影響は長期化し、新たな脅威も登場する

中国ECプラットフォームには、労働問題、知的財産問題、品質問題、サプライヤー疲弊問題、収益性課題で成長鈍化・撤退などさまざまな問題がありますが、これらは短期的な影響で長期的には改善されていくと考えられます。しかしながら、SHEINのプラットフォーム化、TEMUのグローバル規模でのサプライヤーネットワークの拡大、次世代(Cider, Urbanic, ChicV, Doublefs, Cupshe,  JollyChic)ECプラットフォームの登場など、日本市場に長期的に影響を与える動きがあるため、日本の企業・ブランドやECプラットフォームはその動向を注視する必要があります。
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調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本と中国の国内の主要ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

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