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2024年、ECのバレンタイン市場はどうなる?3大ECモールの2023年の動向から予想

#ECトレンド #市場規模

~アフターコロナを迎え、消費動向が変化!?バレンタイン市場のイマ~

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

2024年が始まり、1月もあっという間に過ぎました。節分も過ぎ、暦の上では春を迎えております。この時期の注目催事といえば、EC市場・オフライン市場どちらも「バレンタイン」ではないでしょうか。昨年度、PRTimesにて「バレンタイン市場の調査レポート」を発信させて頂きました。

EC市場は市場規模の把握がオフライン市場に比べ、困難な点があります。POSデータの収集がオフラインに比べ難しいからと思われます。そのため、前回の調査レポートは3大ECモールの「チョコレート市場」を知る機会となったのではないかと自負しております。

昨年度はアフターコロナを迎え、多くの百貨店がバレンタイン催事イベントを開催、大盛況だったのは記憶に新しいのではないでしょうか。このオフライン市場の復活はEC市場へどのような影響を与えたのか、気になっている方も多くいると推察します。

そこで、本年は昨年度(2023年)とは違う切り口で、ECのチョコレート市場を深堀りし、チョコレート市場の2024年を予想したいと思います。

本記事のポイント3点
・2023年のバレンタイン時期(1月~3月)は前年107.5%で成長
・「板チョコ」が復調。「手作り需要」再燃か!
・チョコレート市場年間におけるバレンタイン時期(1月~3月)の構成比は、年々減少。日常消費が増加の兆候

ECのチョコレート市場について

3大ECモールのチョコレート市場について、今回いくつかの観点から3つのジャンルに定義しました。分類したジャンルは以下3つです。

  1. 製菓材料:チョコレートケーキや、チョコレート菓子を作る際に使用するチョコレート素材が含まれるジャンル。「手作り需要」の確認の為、分類しました。
  2. 板チョコ・割チョコ:製菓材料と用途が近いですが、製菓材料の「割チョコ」が板チョコに分類される場合と、チョコレートカテゴリーに分類される場合があり、一旦板チョコへ統合。製菓材料の欠品時には「板チョコ」が使用されることが多いため、「手作りチョコ需要」の確認のため、分類しました。
  3. ギフト・自己消費向け:「手作り需要」以外の需要に関して分類。「バレンタイン」や「ホワイトデー」・「クリスマス」需要での「自己消費・ギフト需要」の確認のため、分類しました。

上記3ジャンルを一つにまとめて、「チョコレート市場」としています。

図2:製菓材料全体売上推移(2020年1月~2023年12月)
図3:板チョコ・割れチョコ全体売上推移(2020年1月~2023年12月)
図4:ギフト・自己消費向け全体売上推移(2020年1月~2023年12月)

チョコレート市場全体の推移(図1)を確認すると、アフターコロナを迎えた2023年も、市場として大きな変化は見られないことが分かります。市場は10月より上昇し始め、1月から2月にかけて急上昇し、2月にピークを迎えます。3月まで緩やかに減少をし、4月以降は急激に低下するのが特徴です。分類した3ジャンルで確認すると、その動向は異なることが分かります。(図2.3.4)

製菓材料ジャンルは、例年9月から需要が高まり、1月から2月にかけて売上が急上昇します。2月にかけて売上が大きく上昇することから「バレンタイン時期」の手作り需要は一定数あると予想されます。

板チョコ・割りチョコジャンルは3ジャンルの中でも特殊です。「製菓材料」「ギフト・自己消費向け」ジャンルが、バレンタインのある2月に売上が最も高くなる一方、板チョコジャンルは「3月」の売上が最も高くなります。その傾向は2021年を除き確認することができます。(図3)
板チョコには、手作り向けの製菓材料が不足した際の代品としての需要と、製品単体としての需要があります。3月に最も季節指数が高まる要素としては、「ホワイトデー」「製菓材料の欠品」「手作り需要」「製品自体の需要」などが考えられます。
また、2020年9月・2021年9月に「ヤマ」があることも特徴です。該当月の売れ筋TOP10商品を確認すると、割れチョコが他の年に比べ多いことが分かりました。このことから、コロナ禍で外出自粛が求められた2020年・2021年、長い休みであるシルバーウィークを使って、お家時間を楽しく過ごす一つの手段として、手づくり需要での使用があったのではないかと予想されます。
ギフト・自己消費向けジャンルはチョコレート市場とほぼ同じ推移をします。これは、バレンタイン・ホワイトデーなどの催事時期に動く商品がこのジャンルに属していることを示唆しています。アフターコロナの2023年とその他の年を比較しても、季節指数の推移に大きな変化は見られませんでした。(図4)

3大モールを軸に見てみると、各モールの戦略が伺えます。(下記図5.6.7)

図5:Aモール チョコレート市場売上推移(2020年1月~2023年12月)
図6:Bモール チョコレート市場売上推移(2020年1月~2023年12月)
図7:Cモールチョコレート市場売上推移(2020年1月~2023年12月)

Aモールはギフト・自己消費向けジャンルの構成比が高く、その規模は年々上昇傾向が伺えます。
Bモールはギフト・自己消費向けジャンルの構成比が次第に減少傾向であり、板チョコ・割れチョコの売上増加が目立ちます。
CモールはAモールと近い売上推移ですが、ギフト・自己消費向けジャンルの減少が伺えます。

各モールそれぞれの特徴はありますが、2023年のチョコレート市場の繁忙期は例年と変わらず1月~3月と言えそうです。

繁忙期のチョコレート市場規模と販売数量の推移

次に、繁忙期のチョコレート市場の推移を確認していきます。

図8:繁忙期(1月~3月)チョコレート市場売上推移
図9:チョコレート市場 販売数量推移
図10:繁忙期チョコレート市場平均単価推移
図11:2019年(左)、2022年(中央)、2023年(右)における、チョコレート市場年間売上にける、繁忙期の売上構成比

繁忙期のチョコレート市場の推移(図8)を確認すると2023年のチョコレート市場は2022年に比べ、上昇していることが分かります。市場全体では、2022年と比較し、107.5%成長でした。3ジャンルで確認すると、最も成長率の高いジャンルは板チョコで前年比166.6%成長、次いでギフト・自己消費向けで前年比103.0%、最後が製菓材料ジャンルで95.8%成長です。3ジャンルの構成比は、ギフト・自己消費向けが最も高く、構成比の8割以上を占めます。市場成長率から考えると、主力であるギフト・自己消費向けは前年を越えるものの市場成長率を下回っており、注意深く今後の動向を確認する必要がある状況と言えそうです。製菓材料は前年を下回りますが、補完するように板チョコが2桁成長でカバーしています。板チョコの伸長が良いことからも、手作り需要が継続・もしくは増加傾向にあると推察します。

市場成長(売上増加)には、「単価」「数量」が大きく影響します。販売数量の推移と平均単価推移を確認したところ、販売量・平均単価共に上昇傾向が見られます。(図9・図10)2023年の「単価」「数量」の成長率を確認すると、単価は前年比106.0%成長、数量は前年比101.5%となり、単価の上昇が市場の売上増加に貢献したことが分かります。
平均単価推移では各年「3月」が最も高くなることも注目です。これは、「製菓材料」や「板チョコ」の構成比と平均単価による影響が大きいです。

「製菓材料」や「板チョコ」は平均単価がギフト・自己消費向けに比べ、「高い傾向」がみられます。2023年は、3月にかけて「板チョコ」の構成比が上昇することで、平均単価が上昇します。一方、2021年・2022年は「ギフト・自己消費向け」が板チョコジャンル、製菓材料ジャンルの平均単価を「上回った」為、2月と3月の平均単価の差が小さくなっています。

繁忙期のチョコレート市場はチョコレート市場の年間売上の54%~57%を占めるため、1月~3月はチョコレート市場において、非常に重要な時期であることが改めて分かります。(図11)一方で、繁忙期の構成比は減少傾向が見られます。繁忙期に集中していたチョコレート市場ですが、その他の時期での需要(日常消費や、クリスマス)の広がりの可能性を示唆しています。

2023年の売れ筋商品を確認すると、健康を意識した日常消費の商品に関しては売上を上昇させる一方、上位商品の一部が売上を減少させています。一方、TOP10には入らないものの、市場を担う商品の売上が上昇する傾向も見られ、市場の需要が「分散傾向」となっていることがうかがえます。

チョコレート市場を取り巻く競合環境

繁忙期におけるチョコレート市場のメーカー構成比を確認します。

図12:2023年繁忙期チョコレート市場メーカー構成比
図13:上位5社売上推移

チョコレート市場は上位5社で37%のシェアを占めています。現在は、A社がシェア率16%と他の4社に比べ一歩抜きん出ています。上位5社が占める市場シェアに関しては、2022年と変化はありません。一方で、2019年からの5社の売上推移を確認すると、売上を急激に伸ばした「A社」「C社」において2023年横ばい~売上の減少が、「B社」に関しては、売上の増加が起きています。A社・C社は先ほど述べた需要の分散により、主力商品での苦戦が見られました。

競合は国内だけではありません。近年、百貨店のバレンタイン催事をはじめとして、海外の高級チョコレートや、有名チョコメーカーの出店が見られます。オフラインのみの展開企業・自社ショップのみの企業等、その戦略はさまざまですが、3大ECモール市場において、海外メーカーはどのくらい進出し、その割合はどのくらいあるのでしょうか。今回、繁忙期(1月~3月)のチョコレート市場売上上位50社に注目し、日本メーカーと海外メーカーの社数と売上規模を確認しました。

図14:上位50社 日本メーカー・海外メーカー社数・売上規模推移

確認すると、海外メーカー数は8社~9社で推移しており、日本メーカーが41社~42社でした。この推移は2019年から大きな変化は見られません。一方、売上規模で確認すると、如何に海外メーカー1社あたりの販売力が高いかが伺えます。このことは、他の海外メーカーが数社市場参入することで、3大モールのチョコレート市場が大きく変化する可能性を示唆していると考えます。
海外メーカー参入に関しては、在庫の保管・出荷管理など、流通面においていくつかの課題があります。一方で、直営店舗展開による中間流通費用の削減や、資本力を元に、大々的な販促・価格戦略を実施した場合、まさに「チョコレート市場の黒船」となる可能性があります。

チョコレート市場動向まとめ

2023年、バレンタイン時期のチョコレート市場は前年比107.5%で推移しました。しかし、売上商品の内訳をみると、上位売れ筋商品の一部には苦戦がみられました。市場は、好調に推移している「健康」を意識したチョコレートと、分散した需要により、下から支えられる形で前年を越えています。このことは、上位商品の1極集中への陰りとも捉えられます。2024年のバレンタイン、チョコレート市場を考えるといくつかの考慮すべき点が挙げられます。

一つ目は、オフライン市場の活性化です。2024年は百貨店などで開かれるバレンタイン催事がより盛り上がることが予想されます。バレンタインでの予算は概ね決めている方が多いため、催事場で購入することで、EC市場での購入が控えられる可能性があります。

二つ目は、「ポストコロナ」という意味で本格的なバレンタインが「本年」であることです。バレンタインは2月の催事ですが、昨年度2月を思い出してみると、行動制限などはありませんでしたが、外出時は「マスク着用」・新型コロナウイルス感染症は「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」であり、「5類」ではありませんでした。本格的な人の動きは、「5月以降」であるため、2023年のバレンタインはポストコロナ前と近い動きであった可能性があります。本年、真の意味でポストコロナ初のバレンタインとなるため、一つ目で挙げた「オフラインの催事場」での消費が増加する可能性が考えられます。

三つ目は、「商品の分散傾向」による影響です。今まで1極集中していた人気商品が苦戦し、商品が分散傾向となったことは、市場に新たな波を起こさないと苦戦することを示唆しているのではないでしょうか。人気商品の一つを担うある海外メーカーはオフライン店舗の出店を増やしており、オフライン店舗とオンライン市場の境界が曖昧になっています。それらの影響も本年は影響すると考えます。一方で、面を増やす(商品数を増やす)ことに対するリスクが少なく、24時時間いつでも注文ができ、自宅まで届くECの利便性に魅力を感じる消費者も一定数います。また、「混雑」が嫌な方は「バレンタイン催事場」へは行かないことも考えられます。2024年、バレンタイン市場を中心としたチョコレート市場の動向がどのように推移するのか、目が離せません。

備考

・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

・Rakuten
スイーツ・お菓子>チョコレート以下階層
スイーツ・お菓子>製菓・製パン材料>製菓用チョコレート

・Yahoo!ショッピング
食品>スイーツ、洋菓子>チョコレート以下階層
食品>製菓材料、パン材料>製菓用チョコレート

・Amazon
食品・飲料・お酒>スイーツ・スナック菓子>チョコレート以下階層
食品・飲料・お酒>製菓・製パン材料>製菓用チョコレート

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2019 年1⽉〜2023年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2024年1⽉時点のものを使⽤)

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【出典:Nint Blog「2024年、ECのバレンタイン市場はどうなる?3大ECモールの2023年の動向から予想」(2024年2月14日公開)】

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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto) 
編集:瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)、村上 咲(Saki Murakami)

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