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母の日ギフト市場は本当に伸びているのか|3年データが示す「器」と「時期」の変化

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母の日ギフト市場は本当に伸びているのか|3年データが示す「器」と「時期」の変化

※本記事の数値は、Nint ECommerceによる推計売上データ(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング 等の主要ECモール/2024年〜2026年の各年4月〜母の日前後)をもとにしています。商品名・メーカー名・モール名はマスキングしています。

母の日は、ギフト市場のなかでも年々盛り上がっているイベントだと語られがちです。ところが、大手ECモールの3年分のデータをある定義に基づいて見ていくと、市場規模はむしろ緩やかな縮小局面にあることがわかってきました。

市場は伸びていないのに、母の日まわりの動きはたしかに変わってきています。動いているのは需要の総量ではなく、「何で受け取るか(器)」と「いつ受け取るか(時期)」の2点です。

本記事では、母の日需要をどう定義するかという入口から、市場規模の推移、需要の山が立つタイミング、市場を支えるジャンルの広がり、そして母の日当日前後で起きている受け皿の入れ替わりまでを、データで順に整理していきます。

この記事でわかること(要点サマリー)

  • 市場規模:「母の日として需要があるジャンル」で集計すると、母の日ギフト市場は2024年=100 → 2025年≈98 → 2026年≈92。2年連続で前年割れ(3年でおよそ8%縮小)。
  • 需要の山(時期):売上ピークは母の日当日ではなく3〜6日前。当日はピークの4〜6割まで落ち込む。最大ポイント還元日と重なる2026年でも山は戻らない。
  • 市場の主役(器):花・観葉植物が売上の約52%(2026年)。一方で「その他」ジャンルの裾野が約24%→約27%へ拡大。動いているのは「花単体」ではなく相性のいい体験への広がり。
  • 受け皿の入れ替わり:配送の締切を境に、物理ギフト(生花等)が失速しデジタルギフト(電子ギフト券等)が当日に立ち上がる。商品名の表現も「まだ間に合う」→「遅れてごめんね」へほぼ総入れ替わり。
  • EC事業者が押さえるポイント:母の日は価格やポイントよりも「間に合うか」で動く市場。商品力に加えて「タイミングをどう伝えるか」が勝負を分ける。
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母の日ギフト市場は本当に伸びている?──「母の日に売れた」と「母の日ギフト需要」は違う

母の日市場を正しくとらえるうえで、最初に整理しておきたいことがあります。「母の日に売れた」と「母の日ギフトとして売れた」は、同じとは限らないということです。これはどういうことでしょうか。

ECモールでは、よく特定の日にポイント還元が高まる日や、セールが開催されます。今回調査したモールでも母の日付近に販促日があるため、ほとんどのジャンルが一時的に跳ね上がります。商品名に「母の日」と付けて売り場を取りにいく動きも年々増えており、「母の日」という言葉で売上を拾うと、数字は実態よりも膨らみます。

そこで本記事では、こうした販促日の効果に左右されない独自の見方で、配送が間に合う締切の数日前に山が立つジャンル=母の日として需要があるジャンルと判断し、選り分けています(選別の具体的な組み立て方は割愛します)。この基準で残ったジャンル群を「母の日市場」と定義しました。

大手ECモール 母の日市場の市場規模推移。2024年を100とすると2025年は約98、2026年は約92で2年連続の前年割れ(Nint ECommerce調べ)
図1:大手ECモール 母の日市場 市場規模の推移(2024年=100/Nint ECommerce調べ)
市場規模指数(2024年=100)前年比
2024年100
2025年約98前年割れ
2026年約92前年割れ
母の日として需要があるジャンル群で集計。3年間でおよそ8%の縮小(Nint ECommerce調べ)

この方法で集計した母の日の市場規模は、2024年を100とすると、2025年は約98、2026年は約92と推移しています。2年連続で前年を下回り、3年間でおよそ8%の縮小です。

もちろん「抽出対象としなかったジャンル」に母の日需要が存在する可能性もありますので、一概に市場が落ちていると判断するのは早計です。データからはっきり言える点としては、直前のセール時期に左右されず、母の日に向けて需要があるジャンルでまとめると「市場が横ばい〜減少傾向」に見えるということです。

前回の記事「母の日ギフトEC市場で起きている『価格帯の二極化』とは何か」のように、「母の日」タグを含めた見かけの数字では市場は膨らみ続けている一方で、母の日に向けたギフト需要が想定されるジャンルでは、拡大しているとは言い難い状況にあります。前回は同じ市場を「価格帯」という縦軸で見ましたが、本記事はそれを「器」と「時期」という別の軸で読み解きます。母を想う気持ちの総量が大きく増えているわけではない、という前提に立って読み進めると、このあとの「器」と「時期」の変化が見えやすくなります。

母の日ギフトはいつ売れる?──需要の山のピークは母の日の数日前

母の日市場を語るうえで欠かせないのが、「いつ売れているのか」という時間軸です。最大ポイント還元日の当日でさえ、山は戻りません。

母の日前後の売上の山を日別・3年分重ねたグラフ。売上ピークは母の日当日ではなく3〜6日前に立ち、当日はピークの4〜6割まで落ち込む(Nint ECommerce調べ)
図2:母の日前後の売上の山(日別・各年ピーク=100/Nint ECommerce調べ)

日別の売上を3年分重ねると、共通した形が浮かび上がります。売上のピークは母の日の当日ではなく、その数日前に立ちます。3年間とも、最も売れる日は母の日のおよそ3〜6日前に集中しており、母の日当日には売上がピークの4〜6割程度まで落ち込みます。

注目すべきは、母の日当日が最大のポイント還元日と重なっている2026年でも、この形が変わらない点です。ポイントが最も得になる日であっても、当日には山が戻りません。これは、消費者が母の日ギフトに対して「お得さ」よりも「母の日までにきちんと届くこと」を強く優先していることを示しています。

つまり母の日ギフトは、価格やポイントよりも「間に合うかどうか」で動く市場だということです。この消費者心理が、このあとの章で見る受け皿の入れ替わりの伏線になります。

母の日に売れるカテゴリは?──売上の半分は花、動いているのは「体験」への広がり

母の日市場の中身を、ジャンル構成比で見てみます。

母の日市場の構成比(2026年・売上ベース)のドーナツグラフ。花・観葉植物が約52%で過半、洋菓子・和菓子・ケーキなどスイーツ各種とジュエリー類が続き、その他が約27%(Nint ECommerce調べ)
図3:母の日市場の構成比(2026年・売上ベース/Nint ECommerce調べ)
区分2024年2026年動き
花・観葉植物約55%約52%過半を維持
その他(上位ジャンル以外の合計)約24%約27%裾野が拡大
花以外では、洋菓子・和菓子・ケーキ等のスイーツ各種が脇を固める(Nint ECommerce調べ)

2026年の構成比を見ると、花・観葉植物が市場のおよそ52%を占めており、母の日市場の主役が花であることに変わりはありません。3年前の2024年も約55%で、過半を占める構図は安定しています。

注目すべきは、花以外の動きです。スイーツ各種(洋菓子・和菓子・ケーキなど)が脇を固める一方で、上位ジャンル以外をまとめた「その他」の割合が、2024年の約24%から2026年は約27%へと、じわじわ広がっています。市場全体は縮小していても、母の日ギフトとして選ばれるジャンルの裾野はむしろ広がっている、という二面性が見えてきます。

この広がりを読み解くカギは、「カテゴリ」ではなく「体験」です。花以外で母の日に効いているのは、甘いもので労うスイーツ、体をいたわる癒し・安眠グッズ、そして良いものを贈る装いや和洋のグルメといった、「母をいたわるシーン」が想像しやすい商品群です。「何のカテゴリか」よりも「母に贈る場面が思い浮かぶか」が、選ばれる分かれ目になりつつあると考えられます。

同じ「ギフト商戦」でも、イベントごとに市場の動き方は異なります。たとえばバレンタイン市場の最新動向と展望や、ホワイトデー月のチョコレートEC市場の分析もあわせてご覧いただくと、年間のギフト需要の輪郭がつかみやすくなります。

間に合わなくなった後はどこへ?──物理ギフトの締切とデジタルギフトの立ち上がり

ここまでで、母の日ギフトが「間に合うかどうか」で動く市場であることを見てきました。では、物理的な配送が間に合わなくなった後は、需要はどこへ向かうのでしょうか。

物理ギフトの失速とデジタルギフトの立ち上がりを示すグラフ(2026年)。生花は母の日の数日前にピークを迎え当日に向け失速、入れ替わるようにデジタルギフトが母の日当日に立ち上がる(Nint ECommerce調べ)
図4:物理ギフトの失速とデジタルギフトの立ち上がり(2026年・各系列ピーク=100/Nint ECommerce調べ)

生花を代表とする物理ギフトは、母の日の数日前にピークを迎え、当日に向けて急速に失速します。配送の締切を越えると、もう間に合わないからです。

ところが、その物理ギフトが失速するのと入れ替わるように、母の日当日に立ち上がるものがあります。電子ギフト券などのデジタルギフトです。デジタルギフトは配送の締切に縛られないため、「当日に何か渡したい」という需要の受け皿になります。物理が締め切る瞬間に需要がデジタルへ乗り換わる――この動きは、3年連続で続いています。

この境界線は、商品名の表現にも表れます。締切前は「まだ間に合う」ことを伝える表現が売り場を占め、締切を越えると「遅れてごめんね」といったお詫びの表現へと、ほぼ総入れ替わりになります。商品名そのものが、配送の締切ラインをリアルタイムに映し出しているのです。

花TOP100商品の商品名ワード推移(2026年)。母の日の3日前は「まだ間に合う」系の表現が100商品中およそ80商品に付くが、当日には数商品まで激減し「遅れてごめんね」系が50商品以上へ急増(Nint ECommerce調べ)
図5:花TOP100 商品名ワード推移(2026年/Nint ECommerce調べ)

実際に花のジャンルで、売れ筋上位100商品の名前を毎日数えてみると、この入れ替わりがくっきり表れます。母の日の3日前には「まだ間に合う」系の表現が100商品中およそ80商品に付いていましたが、母の日当日にはわずか数商品にまで激減。代わりに「遅れてごめんね」系の表現が、当日には50商品以上へと一気に広がります。商品名の言葉が、配送の締切を境にほぼ総入れ替わりしているのです。

その差がどれほど大きいか――ここが母の日商戦のもっとも実利的なポイントですが、同じ商品どうしで比べても、売上に約2倍の差が出ています。母の日は、商品力に加えて「タイミングをどう伝えるか」で勝負が決まる市場だと言えます。

まとめ──母を想う需要は変わらない。動いているのは「器」と「時期」

大手ECモールの3年分のデータから見えてきたことを、要点として整理します。

  • 需要の総量:母を想う気持ちの総量は、ほとんど動いていない(市場規模は2年連続で前年割れ・3年でおよそ8%縮小)。
  • 器のシフト:物理ギフト(生花等)からデジタルギフト(電子ギフト券等)へ、受け皿が入れ替わる。
  • 時期のシフト:配送の締切を境に需要が移り変わる。ピークは当日ではなく数日前。

動いているのは、母を想う気持ちを「何で受け取るか(器)」と「いつ受け取るか(時期)」です。物理からデジタルへ、そして締切を境にした時期の移り変わりという2つのシフトは、母の日が暦のうえでゴールデンウィークに近づくほど強まる可能性があり、2027年に向けてさらに鮮明になると考えられます。

この変化を「数字」でとらえられる事業者だけが、まだ取り切れていない需要を先に押さえられる――母の日市場は、そういう局面に入りつつあります。

執筆者の視点

「母の日は早めに動く」という以前からの定石は、いまも有効です。ただしデータが示しているのは、その「早さ」が”安く買う”ためではなく”遅れずに届ける”ための早さに変わってきたこと、そして配送の締切を越えた当日以降は、デジタルギフトという別の受け皿が立ち上がることです。物理ギフトの「まだ間に合う」訴求と、締切後の「当日でも渡せる」デジタルの提案を、ひとつの商戦設計のなかに二段構えで用意できるか――母の日商戦の取りこぼしは、この切り替えを設計できているかで決まります。

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本記事ではメーカー名・商品名・モール名をマスキングしていますが、Nint ECommerceでは実名での売上ランキングや商品別の売上推移を確認できます。記事中の指数表記の元となる推計売上データも、Nint ECommerceで詳細にご覧いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 母の日ギフト市場は拡大していますか?

A. いいえ。商品名に「母の日」が付く商品まで含めた見かけの数字は膨らみ続けていますが、販促日の影響を除き「母の日として需要があるジャンル」で集計すると、市場規模は2024年=100に対し2025年≈98、2026年≈92と2年連続で前年割れし、3年でおよそ8%縮小しています(Nint ECommerce調べ)。

Q2. 母の日ギフトが最も売れるのはいつですか?

A. 母の日当日ではなく、母の日のおよそ3〜6日前です。当日には売上がピークの4〜6割程度まで落ち込みます。母の日当日が最大のポイント還元日と重なる2026年でも、この形は変わりませんでした。配送が「間に合うか」が消費者の最優先事項だからです。

Q3. 母の日に最も売れるカテゴリは何ですか?

A. 花・観葉植物です。2026年の売上構成比で約52%を占め、過半を維持しています。一方で、スイーツ各種や癒し・安眠グッズなど「母をいたわるシーンが思い浮かぶ商品群」をまとめた「その他」の裾野が、2024年の約24%から約27%へ広がっています。

Q4. 配送の締切に間に合わない母の日需要はどこへ向かいますか?

A. 電子ギフト券などのデジタルギフトへ向かいます。配送の締切に縛られないデジタルギフトは「当日に何か渡したい」という需要の受け皿となり、物理ギフトが失速する母の日当日に立ち上がります。この入れ替わりは3年連続で確認されています。

対象期間:2024年〜2026年の各年4月〜母の日前後(主要ECモールの推計売上データ/Nint ECommerce調べ)

最終更新:2026年6月7日

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この記事を書いた人

山本真大 / 株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

note:https://note.com/nint_ecommerce

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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