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母の日ギフトEC市場で起きている「価格帯の二極化」とは何か|3年間のデータで読む構造変化

※本データはNint ECommerceによる推計値です(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大ECモール集計)。

Nint ECommerceの推計データによると、3大ECモールの母の日ギフト市場では、2023年から2025年までの3年間で、売れ筋の価格帯が大きく塗り替わっています。3,000〜5,000円帯の主役級だった「無難なギフト」が縮小する一方、2万円を超える本格ギフトの売上が急伸する構造変化が起きていました。

「母の日=カーネーションを贈っておけば間違いない」というのは広く知られた認識ですが、ECモール上で実際に何がどの価格帯で売れているかという市場の中身は、ここ数年で意外なほど大きく変化しています。それは単なる物価高の影響なのか、それとも消費者の購買動機そのものが変わってきているのか。

本記事では、3大ECモールの売上データを、各年の4月〜5月の母の日商戦期間に絞って2023年から2025年までの3年分横断で分析します。データから見えてきた「母の日ギフト市場」の構造変化と、そこから導かれるEC事業者向けの示唆を、整理していきます。

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1. 母の日ギフトEC市場はなぜ2025年に過去最大規模(2023年比1.34倍)まで拡大したのか

3大ECモールの母の日ギフト市場は、2023年以降「2024年に一度落ち込んだあと、2025年に過去最大規模まで反発した」というV字回復の構造を描いています。

図1:母の日ギフト市場の年間売上推移(Nint ECommerce調べ)
2023年〜2025年の各年4-5月(各年の母の日商戦期間/2023年=100として指数化)

2023年を100とした売上指数は、2024年に97.6へ微減した後、2025年には134.6まで急伸。販売数量も同様のカーブ(100→95.6→127.6)を描いており、2025年の市場拡大は明らかに「販売個数の増加」が牽引しています。

ここで注目すべきは平均単価の動きです。2023年の3,781円から、2024年は3,860円、2025年には3,988円と、3年間で+5.5%の上昇を記録しました。一見すると「物価高を背景に、単価がじわじわと上がっている順調な市場」に見えます。しかし、この+5.5%という穏やかな数字は、市場内部で起きている「価格の二極化」を平均値でならした結果に過ぎません。

2. 母の日ギフトで3,000〜5,000円帯が急縮小し、2万円以上が約7倍に急伸している理由

3大ECモールの母の日ギフトの売れ筋を価格帯別に見ると、「3,000〜5,000円帯のシェア縮小と、2万円を超える高価格帯の急伸」という、極めて明確な二極化が起きていました。

図2:母の日ギフトTOP300商品 価格帯別売上規模推移(Nint ECommerce調べ)
2023年〜2025年の各年4-5月/TOP300商品の価格帯別売上を比較

長年、母の日ギフトのボリュームゾーンであった「3,000〜5,000円帯(鉢植え+カードや、手頃なスイーツなど)」の規模が、2025年に激減しました。指数で見ると、2023年(=100)から2024年(=96)までは持ちこたえたものの、2025年には「37」へと急落。

わずか1年で前年の約4割未満まで市場規模が縮小しています。

その消えた売上を飲み込むように急伸したのが、2万円以上の「高価格帯」です。2023年を100とした指数で比較すると、その異常な伸び率が際立ちます。

  • 2万〜3万円帯: 100(23年)→ 158(24年)→ 710(25年) = 3年で約7.1倍
  • 3万円以上帯: 100(23年)→ 206(24年)→ 625(25年) = 3年で約6.3倍

ここで一つ、データの裏側にある「当社の集計仕様」を説明しておきます。2万円以上の商品が急激に伸びたからといって、「みんなが突然、2万円もする超高級なカーネーションを買い始めた」わけではありません。

背景には、お店側の「売り方」が変わったという影響があります。もともと1年中よく売れている高級なドライヤーやヘアアイロンなどの商品名に、お店側が「母の日」という言葉を付け足すようになりました(※今回の集計は「商品名に【母の日】」が含まれる商品を集計、分析しているため)。

その結果、「お母さんに何か良い実用品を贈りたい」と検索した人たちの目に留まり、プレゼントとして買われるようになったのです。「母の日専用の新しい高額ギフト」が急に売れ出したのではなく、「普段から人気の高額家電」を母の日用として提案するお店が増えた、というのがこの数字の変化の正体です。

3. 母の日ギフトで「花単体」が3年で4割から1割に後退し「理美容家電」が台頭した理由

母の日ギフトの売れ筋上位300商品の構造を理解するため、本記事ではTOP300商品を以下の5分類に整理しました。

  • 花単体:花のみで構成される商品(カーネーション・鉢植え・ブーケ等)
  • 花+スイーツ:花とお菓子をセットにした商品
  • 理美容家電:ドライヤー・ヘアアイロン・美顔器・マッサージ器等
  • 家電:上記以外の家電(生活家電・キッチン家電・ロボット掃除機等)
  • その他:スイーツ単体・食品・ファッション・コスメ・カタログギフト等

※花単体と花+スイーツの判定は、商品名とモールのジャンル分類を併用して分類・解析を行いました。3大ECモールのジャンル分類は粒度がそれぞれ異なるため、3モール共通の集計軸として、本分類を適用しています。

図3:母の日ギフトTOP300商品 カテゴリ別売上構成比の推移(Nint ECommerce調べ)
2023年〜2025年の各年4-5月/5分類の売上構成比(各年合計=100%)

この3年で、注目すべき3つの変化が起きていました。

花単体の母の日ギフトが構成比36%から14%に後退した背景

最も注目すべきなのは、花単体カテゴリの後退です。2023年には売上構成比36.6%を占めていたのが、2024年33.3%、そして2025年は14.0%まで下落しています。

指数で見ると2023年=100に対し2025年は18.4と、3年で5分の1近くの水準まで縮小した計算です。ただし、ここで誤解しないでいただきたいのは、花が売れなくなったわけではないという点です。後述する「花+スイーツ」のセット品が大きく伸びているため、花は”単体で売る”形から”何かと組み合わせて売る”形へとシフトしている傾向がデータに表れています。

花+スイーツのセットギフトが母の日市場で構成比を約2倍に伸ばした理由

カーネーションとお菓子をセットにした商品は、構成比で2023年7.2%→2024年7.6%→2025年13.9%と、3年で約2倍に拡大しています。

「花だけだと味気ない」「食べ物も一緒のほうが喜ばれる」というニーズに応える形で、贈り手からの支持を集めていると考えられます。

理美容家電が母の日ギフトとして選ばれるようになった理由|構成比は3年で2倍以上

そしてもう一つの主役が理美容家電です。

構成比は2023年の7.4%から2024年15.1%、2025年16.3%と、3年で2倍以上まで拡大しています。

価格帯で言えば、第2章で見た「2万円超」の伸びの実態を担っているのが、まさにこのカテゴリでした。ドライヤー、ヘアアイロン、頭皮ケア機器、マッサージガンといった、「お母さんが日常で使えて、自分では買わないけれど、贈られたら嬉しいモノ」が、母の日における実用ギフトとしての地位を確立しつつある様子がうかがえます。

ちなみに通常の家電(キッチン家電やロボット掃除機など)も、構成比が2023年の0.9%から2025年の4.1%へと、4倍以上に成長しており、「家電を贈る」という選択肢が母の日において存在感を増していることが確認できます。

4. 2025年の母の日EC売上TOP10で「5,000〜20,000円の中間価格帯」が消えた理由

2025年の売上TOP10を、商品分類のタグ付きで並べてみると、母の日商戦で勝っている商品の特徴がはっきり見えてきます。

図4:母の日ギフト 2025年売上TOP10商品(Nint ECommerce調べ)
2025年4-5月/3大ECモール合算でのTOP10商品(商品名はマスキング済)

TOP10の顔ぶれは、見事に「2つのグループ」しか存在しません。

  • 手軽な気遣い層(3,000〜4,500円): 花+スイーツ等のセット品(計6商品)
  • 本格的な実用層(23,000〜40,000円): 有名ブランドの理美容家電(計4商品)

ここから読み取れるのは、「5,000円〜20,000円の中間価格帯」の空洞化という事実です。消費者は「手頃に済ませる」か「数万円出してでも確かな実用品を贈る」かの両極端な意思決定を行っており、中途半端な価格設定の商品はランキングから完全に駆逐されています。

5. 2026年の母の日商戦でEC事業者が押さえるべきポイントとは|価格帯の二極化への対応

ここまでの分析を、要点として整理します。

  • 市場は数量増で過去最大へ: 母の日のEC市場は2024年に微減後、2025年に過去最大規模(2023年比1.34倍)まで成長。販売数量の増加が市場拡大を牽引している。
  • 平均単価の上昇は「激しい二極化」の結果: 平均単価は3年連続で上昇(3,781円→3,988円・+5.5%)。ただしこれは単なる平均値であり、市場の中身では激しい変動が起きている。
  • 価格帯の二極化: 3,000〜5,000円帯は2023年比で前年の約4割未満と急縮小。一方で2万円〜3万円帯は約7.1倍、3万円以上は約6.3倍まで規模が拡大している。
  • 「花単体」から「セット・家電」へ: 「花単体」の構成比は3年で4割→1割へ後退。代わりに「花+スイーツのセット」「理美容家電」が主役級のカテゴリへと台頭。
  • 中間価格帯の空洞化: 2025年の売上TOP10は、花系(3〜5千円)6商品+理美容家電(2万円超)4商品で完全に2極化。5千〜2万円の中間価格帯が選ばれにくくなっている。

「母の日は、3,000〜5,000円でカーネーションを売るイベント」という昔ながらの考え方では、現在の市場の半分を取りこぼしてしまいます。贈る相手や予算によって「手軽なセット」と「高額な実用品」にハッキリと分かれる時代になった、というのがこの3年間のデータが示唆している内容です。

EC事業者にとって、2026年の母の日商戦に向けた鍵は2つあります。

1つ目は、自社の商品を「3,000〜5,000円の手頃なギフト」として売るのか、それとも「2万円超のしっかりした実用品ギフト」として売るのか、立ち位置をハッキリ決めることです。中途半端な価格帯は今の市場では苦戦します。

2つ目は、前の章でも触れた「売り方の工夫」です。「母の日専用の特別なギフトセット」をわざわざ開発しなくても、普段からよく売れている自社の主力商品(実用品や家電など)に、母の日のキーワードやギフト対応を加えるだけで、商戦の波に乗るチャンスは十分にあります。

「自分の扱っているカテゴリでも、実は気づかないうちにこうした変化が起きているのでは?」

表面の売上や平均値だけを見ていては、この変化には気づけません。データを価格帯やカテゴリごとに分解して、はじめて市場の本当の姿が見えてきます。これこそがECデータ分析の面白さであり、ビジネス上の強力な武器になります。

「競合が何を売り、どんな施策を打っているのか」——Nint ECommerceなら、その答えをデータで瞬時に把握できます。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングの市場データ分析に、ぜひお役立てください。

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「データは見ているが、次の一手が見えない」という方へ。NintのAIインサイトレポートは、EC市場トレンドと競合分析をもとに、戦略立案の力になります。

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国内の3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の売上・販売データがみえる画期的なツール、Nint ECommerceについてもっと知りたい方は以下からご覧いただけます。

※本記事のデータの集計仕様について:本記事で扱う「母の日ギフト市場」は、商品名・タイトルに「母の日」関連のキーワードが含まれる商品を対象として集計しています。「市場で実際に母の日に贈られた商品の総量」ではなく、「店舗様側で”母の日商品”として商品名・タイトルに明示して販売した商品群の動向」を見ている点にご注意ください。

この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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