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ホワイトデー月のチョコレートEC市場で「無垢チョコ」が4年連続首位になる理由とは

※本記事の数値は、Nint ECommerceの推計データ(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大ECモール集計)に基づきます。

Nint ECommerceの推計データによると、3大ECモールの3月のチョコレート市場では、4年連続で「無垢チョコ」が売上構成比のトップを取り続けています。バレンタインで買われるのは詰め合わせ型の贈答用チョコ。一方、ホワイトデー月の主役は板チョコ・トリュフ・生チョコといった、チョコそのものを味わう商品群です。

「2月のバレンタインがチョコ商戦の頂点」というのは広く知られた話ですが、その翌月3月、ホワイトデーのチョコ市場の構造は、ほとんど語られてきませんでした。単なるバレンタインの残り火なのか、それとも別の商戦として独立した顔を持つのか。

本記事では、3大ECモールのチョコレート売上データを、2023年から2026年までの4年分横断で分析します。データから見えてきた「3月のチョコ市場」の実像と、そこから導かれるEC事業者向けの示唆を、整理していきます。

Nint ECommerce - 競合の売上・広告戦略をデータで把握

1. チョコレートEC市場はなぜ「数量減・売上維持」の構造になっているのか|2023〜2026年の推移

3大ECモールのチョコレート市場は、2023年以降「量は減っているが、売上は維持している」という単価主導の構造を続けています。

図1:チョコレート市場年間売上推移グラフ(売上・数量・平均単価、2023〜2025年)

2023年を100とした指数で見ると、売上は2024年に96まで一度落ち込み、2025年には106まで回復しています。一方の数量は100→95→93と、緩やかに右肩下がり。

それを補っているのが平均単価です。

2023年では、1,866円。2024年は大きな変化が無く1,885円で推移する一方で、2025年には2,139円と急上昇し、2,000円台に乗りました。

「数量は減っているのに売上は伸びている」ということはチョコレート市場が、安く大量に売る時代から、しっかりした単価で勝負する時代へ移行しつつあることを示しています。

要因として真っ先に挙がるのは「原料の高騰」と「世界的な需要増」の影響ではないでしょうか。しかしながら、それだけでは説明できない動きが、この後の章で見えてきます。

なお、2026年催事期間(1-3月)で見ると、平均単価は2,105円です。2023年同期間(1月~3月)の平均単価1,811円から+16.2%の上昇です。「同じ時期同士で比べても単価は確実に上がっている」と読める結果でした。

2. チョコレートEC市場の売上ピークはいつか|月次データで見る2月と3月の規模の違い

3大ECモールのチョコレート市場の月次の動きを見ると、売上のヤマと谷がはっきりと浮かび上がってきます。

図2:チョコレート市場月次売上推移グラフ(2023〜2025年・バレンタイン・ホワイトデーのピーク)

各年の月平均を100とすることで、月ごとの動きを年度横断で比較できます。最大の山はもちろん2月で、2023年は指数262、2024年は232、2025年は219と、3年通して全12ヶ月の中で最も高く推移しています。「バレンタインがチョコ商戦の頂点」という通説は、データでもしっかりと裏づけられた結果と言えるのでしょう。

注目したいのは、その翌月の3月の動きです。指数は2023年が199、2024年が161、2025年が156。1月(86〜100)よりは高いものの、2月の半分から7割程度の規模にとどまります。3月は確かに山ではありますが、バレンタインに比べると「商戦」と呼ぶには規模が小さい。これがホワイトデー月の実態と読み取れる結果です。

※バレンタイン=チョコレート中心 ホワイトデー=チョコレート以外も考えられるというのが、これらの市場動向からみてとれるのではないでしょうか。

そして、4月から9月までは指数30〜70で推移する長い谷が続きます。

とくに7月から9月は指数30前後と、年間で最も売れない時期です。気温が上がる夏場にチョコは避けられがち、という商品特性そのものがEC市場でも現れた結果ではないでしょうか。(とはいえ、需要が0ではない点は注目すべき内容になりそうですね)

ここまでで言えるのは「ホワイトデーは単独でチョコレート市場を動かすほどの商戦ではない」ということです。一方で、市場のピーク(2月)の7割という売上は決して小さくなく、そのタイミングで売られるチョコレートの中身はどうなっているのでしょうか」。ここから本記事の核心部分に入っていきます。

3. 3月のチョコレート市場で「無垢チョコ」が首位になる理由|贈答用との購買動機の違い

ここからが本記事でもっとも重要な発見です。

3月のチョコ市場の構造を理解するため、本記事ではチョコレート関連商品を以下の3分類に整理しました。

  • 無垢チョコ:チョコそのものを味わう商品(板チョコ/トリュフ/ボンボンショコラ/生チョコ/割れチョコ)
  • 贈答用チョコ:詰め合わせ・セット商品(チョコレートセット/詰め合わせボックス/バラエティーパック)
  • その他:ナッツチョコ、フルーツチョコ、チョコスナック等の派生・加工系

※本来無垢チョコというと「板チョコ」や「ウエハース等を含まない純粋なチョコレート」の定義ですが、少々分類が難しいため今回はトリュフなども広義として加えております。3大ECモールのジャンル分類は、各モールで粒度がそれぞれ異なります。そのため3モール共通の集計軸として、本分類を適用しています。

この3分類で1-3月×4年分の売上構成比を見ると、はっきりとしたパターンが浮かび上がってきました。

図3:3月チョコ市場 分類別売上構成比推移グラフ(2023〜2026年)

3月は、4年連続で「無垢チョコ」の構成比が3分類中で最大になっています。

  • 2023年3月:無垢チョコ 50.1%/贈答用チョコ 26.2%/その他 23.7%
  • 2024年3月:無垢チョコ 37.1%/贈答用チョコ 33.6%/その他 29.4%
  • 2025年3月:無垢チョコ 36.7%/贈答用チョコ 31.9%/その他 31.4%
  • 2026年3月:無垢チョコ 40.1%/贈答用チョコ 28.0%/その他 31.8%

※構成比は端数処理の関係で合計が100%にならない場合があります。

一方の1月・2月、とくに2023年・2024年の1月では贈答用が4割超を占めており、無垢チョコ優勢の3月とは構造が全く異なります。

ここから読み取れることは、シンプルですが示唆に富んでいます。

バレンタインで動くのは「贈答用」、ホワイトデーで動くのは「無垢チョコ」

同じ「チョコレート市場」と言っても、2月と3月では消費者の購買動機が入れ替わっているということです。

ホワイトデーで男性が選ぶお返しチョコは、詰め合わせ型のギフトボックスではなく「品質のしっかりした単品(板チョコ・トリュフ等)」のほうがメインになっている、と解釈できる結果ではないでしょうか。

そしてもう一つ、図3には別の動きも隠れています。3月の「その他」シェアが、4年で着実に上昇しているのです。

2023年では23.7%、2024年には+5.7ポイント上昇し29.4%、2025年には+2.0ポイント上昇し、31.4%に。2026年には更に0.4ポイント上昇し31.8%へと上昇しています。

一方この4年間で「贈答用」のシェアは26.2%→28.0%と、ほぼ横ばいか微減で推移しています。

この「その他」を構成しているのは、ナッツチョコ・フルーツチョコ・チョコレートスナックといった派生・加工系の商品群。ホワイトデーのお返しが、伝統的な高級詰め合わせから、より気軽でカジュアルなチョコ菓子へとシフトしている可能性が見えてきます。

「義理チョコへの儀礼的なお返し」から「友チョコへの気軽なお返し」「自分用のご褒美」へ…このような購買動機の変化が起きているのではないでしょうか。

4. 2026年1月・2月・3月のチョコレートEC売上TOP10はどう違うか|三重構造の実態

構成比の話を、もう少し具体的な商品レベルで見ていきます。

図4-1:2026年1月チョコレートEC売上TOP10(分類・単価・シェア)
図4-2:2026年2月チョコレートEC売上TOP10(分類・単価・シェア)
図4-3:2026年3月チョコレートEC売上TOP10(分類・単価・シェア)

2026年1〜3月の月別TOP10を、商品分類のタグ付きで並べてみると、月ごとに違う特徴がはっきり見えてきます。

1月の特徴は、無垢チョコが8商品、贈答用が2商品とほぼ無垢が独占。1月固有のランクインとして「年始限定の福袋(14,500円)」が7位に入っています。健康志向の高カカオ板チョコ(カカオ72%・1kg/カカオ86%・940g)が3位・4位を占めるのも特徴的です。

2月の特徴は、無垢7・贈答用2・その他1。首位は国内大手Cの高カカオ板チョコ(カカオ72%・1kg)で、TOP10内シェアは3.3%。注目すべきは3位の「アソート小箱『ホワイトデー』訴求版」と、9位の「『ホワイトデー』訴求版トリュフアソート」です。海外高級ブランドAは2月時点から、すでに「ホワイトデー」「お返し」キーワードで先行販売を始めていることが読み取れます。さらに10位には「クリアランスバッグ(500g・50%OFF)」が登場。値下げ品が早くもTOP10入りしているのです。

3月の特徴は、無垢6・贈答用3・その他2。3分類の分散が、12ヶ月で最大の月になっています。

3月のテーブルで特に注目したいのは、以下の3点です。

  • 2位「クリアランスバッグ(50%OFF)」が、シェア3.0%で急浮上。ホワイトデー後の在庫整理と、消費者のお得志向の一致
  • 4位「いちごチョコ詰合せ」は母の日ギフト訴求の商品。シェア2.7%
  • 5位「チョコ菓子福袋」は「春ギフト」訴求

つまり3月は、「ホワイトデー商戦 × ブランドのクリアランスセール × 春ギフト(母の日プレゼント)」の三重構造になっている可能性が示唆されます。3月は単一の商戦月ではなく、複数の異なる需要層をまとめて取り込める「多層的な需要期」と捉えることができるのではないでしょうか。

5. 無垢チョコと贈答用チョコの売れ筋価格帯はどこか|TOP300商品の価格帯×分類分析

3月の構造を、さらに別角度から確認するため、TOP300商品の価格帯×分類別の件数分布を見ていきます。

図5:TOP300商品 価格帯×分類別 件数分布グラフ(2025年)

2025年TOP300の300商品を、6つの価格帯と3つの分類で分けて件数集計したものです。

贈答用チョコは、3,001〜5,000円の価格帯に40件と、明確に集中しています。「ギフトとして渡しやすい価格感」のゾーンに、贈答用商品が集まっている結果と言えるのではないでしょうか。

無垢チョコもまた、3,001〜5,000円帯(35件)と5,001〜10,000円帯(23件)で計58件。中〜高価格帯が主戦場になっています。

その他(ナッツ・フルーツ・スナック系)は、〜1,000円から3,000円帯までの低〜中価格帯に分散しています。「お試し感覚」「気軽なお返し」のニーズに対応した価格設計と言えそうですね。

ここから見えてくるのが、冒頭に触れた「市場の単価上昇」を支えているのが何かという構造です。3,000円超の無垢チョコ・贈答用チョコの群が、TOP300の中で大きな塊を作っており、これらが市場全体の単価押し上げに寄与している。そう読み取ることができます。

6. チョコレートEC市場で4年間にシェアを約3倍に伸ばしたメーカーはどこか

最後に、メーカー側の視点から1-3月の構造を見ていきます。

図6:主要メーカー売上構成比推移(2023〜2026年・1〜3月)

2026年1-3月時点でのTOP4メーカー+その他、という形で4年分を並べました。

海外高級ブランドAは、シェア14〜16%の範囲で4年間ほぼ不動のトップを維持しています。ホワイトデー訴求や年始福袋など、毎年的確に商戦商品を投入し続けているブランドです。

注目すべきは国内大手Cの動きです。2023年は3.4%(5位圏)でした。それが2024年4.6%、2025年8.2%、2026年10.0%と、4年で約3倍の急成長を遂げ、2026年は3位までシェアを伸ばしています。

国内大手Cを牽引しているのは、TOP10にも複数ランクインしている「高カカオ板チョコ(カカオ72%/86%)」シリーズです。1kg級の大容量パッケージで、単価も4,500〜5,500円程度と決して安くはありません。これが毎月のTOP10で上位を占めているのですから、その購買層はかなり厚いと推察されます。

一方、伝統的な贈答用チョコブランドの動向は対照的です。海外老舗ブランドBは9.1%(2023年)→6.2%(2026年)と、シェアを2.9ポイント落としています。国内専門店Dも6.2%→4.3%と微減。詰め合わせ型ギフトの強豪が、いずれもじわじわとシェアを下げているのです。

ここから読み取れるのは、「健康志向の高カカオ板チョコ」という、贈答とは別軸の需要が、伝統的なギフトブランドのシェアを侵食しているという構造ではないでしょうか。市場全体の単価上昇は、贈答用商品の値上げだけでなく、「大容量・高単価の自分用板チョコ」という新しい需要層の拡大にも支えられている、と言えます。

チョコレートは「人に贈るもの」から「自分のために選ぶ機能性食品」へ。こうした転換が始まりつつあるのかもしれません。

7. ホワイトデー商戦でEC事業者が押さえるべき7つのポイント|3月チョコ市場まとめ

ここまでの分析を、要点として整理します。

  • バレンタインは贈答用、ホワイトデーは無垢チョコ。3月は4年連続で無垢チョコの構成比が3分類中で最大(40〜50%)
  • ホワイトデー商戦の規模は、バレンタインの約6〜7割。単独では小さいものの、3月は春ギフト需要等が重なる多層的な月
  • 無垢チョコの主戦場は3,000〜10,000円帯。市場全体の単価押し上げ要因はここにある
  • 高カカオ板チョコを武器にした国内大手メーカーが、4年でシェアを約3倍に拡大
  • 3月の「その他」(ナッツ・フルーツ・スナック系)シェアが+8ポイント上昇。お返しの「カジュアル化」が進行している可能性
  • 3月は「ホワイトデー×クリアランスセール×春ギフト(母の日)」の三重構造。複数の需要層を同月内で取り込める
  • EC事業者には「自分用の上質チョコ」「カジュアルなお返し」という両軸を押さえる戦略が有効

「3月=ホワイトデーの月」という1次元の捉え方では、市場の半分を取りこぼしてしまう可能性があります。バレンタインから連続するチョコ商戦の流れの中で、消費者の購買動機が月をまたいで入れ替わっていく—この構造を踏まえた商品ラインアップ・販促設計が、ECにおけるチョコレートカテゴリの勝ち筋になるのではないでしょうか。

Nintでは、こうしたECモールの精緻な推計データをもとに、市場の「今」と「次」を可視化しています。自社商品の市場動向や、データ分析についてもっと深く知りたいという方は、ぜひお問い合わせください。

Nint ECommerce - 楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングの市場データ分析
NintのAIインサイトレポート - EC市場トレンドと競合分析

この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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