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花火はいつ売れる? ECデータが暴いた「冬の隠れ需要」の正体

花火はいつ売れる? ECデータが暴いた「冬の隠れ需要」の正体|山あいに打ち上がる花火の夜景を背景にしたアイキャッチ

全国各地で梅雨明けの発表がされ、2026年に新たに設定された「酷暑日」が既に記録されている程暑い日が続く日本の夏。本番を迎え、風物詩とも言える「花火」が最も売れる季節の到来です。

一方で、ECの販売データをモール別に分解すると、最も売れる月が異なるなど繁忙期でも違いがみられます。さらに一部モールでは「冬場」にも需要の高まりがみられ、「花火=夏だけの商材」という常識が崩れていることが見えてきました。背景には「ECならでは」の理由と「新たな需要の可能性」が示唆されています。

本記事では、Nint ECommerceの推計データ(2021年〜2026年5月)をもとに、3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)の花火市場を分析しました。モール別の比較はAモール・Bモール・Cモールの匿名表記(順不同)としています。データの取り方や計算の定義は、記事末尾の注記にまとめました。

本記事のポイント

  • 花火のEC市場は堅調。3大モール合算で2021年比+27%、年間売上の約半分が7〜8月に集中する。
  • 同じ花火でも、モールによって売れる山の月がずれる(背景は納期と「買う人の段取り」の違い)。
  • 夏が終わっても、あるモールだけ冬に需要が残る。中身はパーティー演出・鳥獣対策・季節外の「普通の花火」。
  • 「新年の花火」の芽:打ち上げ花火は直近3冬すべてで1月が12月を上回る。
  • 実店舗の売場が消えても需要は消えない——ECの販売データにだけ現れる「隠れ需要」。

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花火市場そのものは、堅調な夏商材

まず全体像からです。図1は、3モール合算の花火の年間売上を、2021年を100とした指数で並べたものです。

3大ECモール合算の花火市場 年間売上推移の指数グラフ。2021年を100とすると2025年は127で、5年でおよそ1.3倍に伸びている
図1:3大ECモール合算 花火市場の年間売上推移(指数)
年間売上 指数(2021年=100)
2021年100
2022年104
2023年122
2024年130
2025年127
図1の数値(3大ECモール合算・Nint ECommerce推計値)

この5年でおよそ1.3倍。派手ではありませんが、着実に伸びています。そして年間売上の約半分は、7月と8月の2ヶ月に集中します。花火は家族で楽しむ夏のレジャー商材で、より広い遊び・玩具全体の動きはおもちゃのEC市場規模レポートでも扱っています。ここまでは誰もが知っている「夏の花火」です。

面白いのは、ここから先です。

同じ花火なのに、モールによって「売れる月」が違う

図2は、モール別の月次売上の推移です。金額ではなく、それぞれのモールにとっての「平均的な月」を100とした指数にしています。線が100より上ならそのモールの忙しい月、下なら静かな月です。

モール別の花火 月次売上推移の指数グラフ(各モールの平均的な月を100)。3モールとも夏に大きな山があり、冬(12月・1月)はCモールだけ需要が残る
図2:モール別 花火の月次売上推移(指数)

3本の線とも、夏に大きな山を作る点は同じです。ところが山のてっぺんの位置が違います。Aモールは毎年7月、Cモールは毎年8月。Bモールは年によって7月と8月を行き来します。

最初に疑ったのは、モールごとのセール時期でした。ところが、これが合いません。8月がピークのモールの大型セールはむしろ7月にありますし、7月がピークのモールに、7月だけ特別大きなセールがあるわけでもないのです。

そこで、売れている商品を一つずつ見比べてみました。すると、どのモールでも人気の花火セットはほぼ同じでした。売れ筋の中心は、家族で遊ぶ手持ち花火や噴出花火の大容量詰め合わせセット。まったく同じ商品が、7月ピークのモールと8月ピークのモールの両方で上位に入っています。

モノが同じで、月だけが違う。だとすると、違うのは商品ではなく「買う人の段取り」です。

7月がピークのモールでは、商品名に「子供会」「景品」「ビンゴ大会」を掲げたまとめ買い向けの商品が上位に目立ちます。夏のイベントの予定が決まっていて、届くまでの日数も見込んで早めに手配しておく買い方です。一方、8月がピークのモールでは、思い立ってから注文しても間に合う買い方が中心です。お盆に家族が集まって「今夜、花火やろうか」となってから注文しても間に合う、というわけです。

裏づけもあります。7月ピークのモールでは、8月に入ると商品名に「発送は9月以降」と付記された商品が上位に現れ始めます。8月に注文しても、その夏には間に合わないことがあるわけです。だから段取りのいい人ほど7月のうちに買い、思い立った人は直前でも間に合うモールへ向かう。ピークの月がずれる理由は、セールではなく、納期と段取りの違いと考えられます。

冬になると、1つのモールにだけ需要が残る

もう一度、図2をご覧ください。次に注目する点は、夏の山が終わった後、薄い帯を付けた12月と1月のあたりです。

9月、3本の線はそろって急落します。実店舗でも8月の終わりには花火売場の在庫処分が始まり、9月中旬までにはほぼ撤去されるとされていますから、ここまではオフラインの売場と同じ動きです。

ところが12月から1月にかけて、Cモールの線だけが持ち上がります。真冬のCモールは、平均的な月の半分前後の水準で花火を売り続けています。他の2モールは12月に2割ほど、年が明けると1割ほどまで沈んだままです。真冬にまとまった花火需要が残っているのは、実質このCモールだけなのです。

真冬に、花火。いったい誰が、何のために買っているのでしょうか。

「新年の花火でしょ?」──実は、違うんです

12月と1月に売れていると聞けば、年末年始を思い浮かべた方が多いはずです。海外では年越しの瞬間に花火を打ち上げる国がたくさんありますから、「日本でも新年を花火で祝う人が増えているのか」と。

ところが、この時期に売れている商品の名前を一つずつ確かめていくと、「正月」「新年」「カウントダウン」を名乗る商品は1つもありませんでした。

代わりに出てきたのは、まったく別の顔ぶれです。図3は、Cモールの冬(12月・1月)の花火売上を、商品名から用途別に分けたものです。

Cモールの冬の花火売上 用途別内訳の円グラフ。遊び用の花火64.8%、パーティー演出系19.1%、鳥獣対策系11.0%、その他5.1%
図3:Cモール 冬の花火売上の内訳(用途別)
用途冬(12月・1月)の売上構成比
遊び用の花火64.8%
パーティー演出系19.1%
鳥獣対策系11.0%
その他5.1%
図3の数値(Cモール・商品名から用途を分類・Nint ECommerce推計値)

1つ目は、パーティー演出用です。ケーキに挿すスパーク花火や、シャンパンボトルに付ける演出用の花火。冬の売上の約2割を占め、上位には2万円を超えるパーティー用の商品や、飲食店向けとみられる業務用の演出機材が入ってきます。忘年会、クリスマス、誕生日。花火は「夏の夜の遊び」だけでなく「乾杯の演出」としても買われていて、しかもこの用途は月ごとに見ると夏の山がなく、一年中ほぼ一定で売れ続けています。こうした演出アイテムの底堅い需要は、パーティー用品のEC市場レポートでも見られます。

2つ目は、鳥獣対策です。商品名に「鳥獣威嚇にも最適」と書かれた爆竹が、冬の売上上位に入ります。畑からイノシシやカラスを追い払う、農家の道具としての花火です。収穫期の10月・11月に山があり、遊びの花火とは全く別の動きをします。冬の売上の約1割がこの系統です。

残りは、季節はずれの「普通の花火」です。誕生日に、記念日に、冬のイベントに。理由はそれぞれでしょうが、真冬でも「今、花火をやりたい」人は途切れない、ということです。

では、「新年の花火」需要は存在しないのか

ここで終わらないのが、データの面白いところです。

図4は、Cモールの打ち上げ花火だけを取り出して、12月と翌1月の売上を並べたものです。

Cモールの打ち上げ花火 12月と翌1月の売上指数を並べた棒グラフ。直近3冬すべてで翌1月が12月を上回っている
図4:打ち上げ花火は3冬連続で「1月が12月を上回る」
12月 指数翌1月 指数
2023年12月→2024年1月100116
2024年12月→2025年1月158232
2025年12月→2026年1月141148
図4の数値(Cモールの打ち上げ花火・2023年12月=100の指数・Nint ECommerce推計値)

直近3回の冬、すべてで1月が12月を上回っています。宴会シーズンの年末より、年が明けてからのほうが打ち上げ花火は売れているのです。しかも、他のモールでは年明けに売上が半分以下へ落ちるのに、Cモールだけは1月になってもほとんど水準が落ちません。

商品名に「正月」の文字はない。それでも、年明けに打ち上げ花火を買う人が確かにいる。「新年を花火で祝う」文化が育ちつつあると言い切るのはまだ早いですが、その気配だけは、データからも読み取れます。

売場が消えても、買いたい人は消えない

ここまでの話を並べると、1つの構図が見えてきます。

実店舗の花火売場は、季節が終われば消えます。それでも、買いたい人がいなくなるわけではありません。ケーキ用の花火が要る飲食店も、畑を守りたい農家も、真冬の誕生日を祝いたい人も、店頭で買えなくなれば、ネットで探して買う。そしてその動きは、ECの販売データに全部残っています。

夏の花火は、実店舗でもECでも買えます。冬の花火は、ECでしか買えません。冬のCモールに残っていたものの正体は、ECが新しく作り出した需要というより、売場がないせいで、これまで誰にも見えていなかった需要だと言えます。

この冬需要は、どこまで育つのか

最後に、この先の話です。データの最新は2026年5月。この夏が年間最大の商戦になることは間違いありませんが、注目したいのはその先の冬です。

正直に言えば、冬の花火は楽観できる話ばかりではありません。直近の冬は前の冬より水準を落としており、伸びは一本調子ではない。仮に「新年の花火」が育つとしても、夏のように季節全体に広がる需要ではなく、ハロウィンと同じで特定の日に集中するタイプの需要の可能性が高いです。住宅事情や騒音への配慮という、日本ならではの壁もあります。同じ季節商材でも住宅事情が需要のかたちを変える例は花火に限らず、雛祭り・端午の節句市場レポートでも、屋外用の大型こいのぼりが振るわず室内向けのコンパクト商品へ需要が移る動きが見られました。

それでも、需要は存在します。今後この需要が育っていくと、オフライン店舗で年末年始に小さな花火コーナーができる。なんて未来も起きるかもしれません。いまはECのデータにだけ映っているこの需要が、売場という後押しを得たときにどこまで大きくなるのか。楽しみな観察ポイントです。

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花火に限った話ではないはずです

あなたの扱う商品にも、オフラインでは棚の都合上、売場から消える季節商品はないでしょうか。

棚がなくなった後も、諦めずにネットで探して買っている人が毎年一定数いる。そういう需要は店頭の数字には決して現れません。見えるのは、ECの販売データだけです。

本記事ではモール名・商品名をマスキングしていますが、Nint ECommerceでは実名での売上ランキングや商品別の売上推移まで確認できます。自社カテゴリ版、「冬の花火」需要のようなECならではの需要を探してみたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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データについて(注記)

  • 集計対象:楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの花火カテゴリ(Nint ECommerce推計値)。
  • 集計期間:2021年1月〜2026年5月(図によって対象期間が異なるため、各図に明記)。
  • 指数の定義:図1は2021年=100、図2は各モールの月平均(2023年1月〜2025年12月)=100、図4は2023年12月=100とした指数。金額そのものではなく、水準の推移を比べるための指標です。
  • モールの匿名化:モール別の比較はA・B・Cの匿名表記(順不同)で、特定モールの売上規模やシェアの優劣を示すものではありません。
  • 用途分類:図3・図4の用途・カテゴリは商品名をもとに機械的に分類した参考値です。
  • 実店舗の花火売場の時期や海外の年越し花火に関する記述は、一般に知られた傾向をふまえた一般的な記述であり、Nintの推計データに基づくものではありません。

対象期間: 2021年1月〜2026年5月/データソース: Nint ECommerce(推計値)/対象カテゴリ: 花火

この記事を書いた人

山本真大 / 株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

note:https://note.com/nint_ecommerce

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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