ECモール市場規模の調べ方|3つのデータソースと推計の基本
ECモールの市場規模を調べようとして、「経産省の統計を見たが自分のカテゴリの数字がない」「モールのランキングは見られるが売上金額がわからない」と手が止まった経験はないでしょうか。市場規模は、どのデータソースを選ぶかで答えられる問いがまったく変わります。本記事では、EC事業者が使える3つのデータソースを整理し、目的別の使い分けと、実際にカテゴリ別の数字を確認する手順まで解説します。
この記事の要点
- ECモールの市場規模を調べるデータソースは、公的統計・モール公開情報・推計データの3つ
- 公的統計は全体像を置く用途に適するが、カテゴリ粒度が粗く更新は年1回・モール別が出ない
- モール公開情報は無料で売れ筋を確認できるが、売上金額がわからない
- 参入判断・商品企画・競合比較といった意思決定には、カテゴリ単位で金額が出る推計データが必要
- 販売数量と平均単価は必ず分けて追う。どちらが動いているかで打つべき施策が変わる
目次
ECモール市場規模の調べ方は「どのデータで見るか」で決まる
ECモールの市場規模とは、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングといったモール上で、特定のカテゴリがどれだけの金額で取引されたかを示す指標です。一見ひとつの数字に見えますが、実際には「どこまでを市場とみなすか」「どの粒度で見るか」によって、参照すべきデータがまったく異なります。
EC事業者が実務で使えるデータソースは、大きく3つに分かれます。
市場規模を調べる3つのデータソース
- 公的統計:EC市場全体・業種大分類の規模を把握する
- モール公開情報:売れ筋商品の傾向・順位を把握する
- 推計データ:カテゴリ×期間の金額・前年比・単価を把握する
この3つは競合するものではなく、答えられる問いが異なります。順に見ていきます。
データソース①:公的統計でEC市場全体の規模をつかむ
公的統計は、日本のEC市場全体の規模とEC化率を把握する用途に最も適しています。無料で参照でき、出典として社内資料や提案書にそのまま使える信頼性が最大の利点です。
経済産業省「電子商取引に関する市場調査」で何がわかるか
国内EC市場を調べる際の一次情報は、経済産業省が毎年公表している「電子商取引に関する市場調査」です。物販系・サービス系・デジタル系の分野別market規模、BtoC・BtoBそれぞれの取引額、そしてEC化率が掲載されています。
この調査で押さえられるのは、たとえば「食品・飲料・酒類」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」といった業種の大分類レベルの市場規模です。事業計画の前提を置く、社内で市場の大きさを共有する、といった場面では十分に機能します。
公的統計だけでは足りない3つの理由
一方で、商品企画や競合比較といった実務レベルの意思決定には、公的統計だけでは届きません。理由は3つあります。
- 粒度が粗い:大分類までしか出ないため、「ベビーゲート」「磁気ネックレス」といった実際に商品を並べる単位の市場規模はわからない
- 更新が年1回:季節性のあるカテゴリや、直近数か月の変調をつかむ用途には向かない
- モール別が出ない:楽天市場とAmazonでは売れ筋も価格帯も異なるが、その差は公的統計からは読み取れない
つまり公的統計は「市場の全体像を置く」ためのデータであり、「自社が戦う場所を決める」ためのデータではありません。
データソース②:モール公開情報で売れ筋の傾向をつかむ
モールが公開しているランキングやレビュー情報は、無料で今すぐ確認できる実データです。何が売れているかという方向感をつかむ用途では有効ですが、金額がわからないという構造的な限界があります。
ランキング・レビュー数から読み取れること
各モールのカテゴリ別ランキングからは、上位商品の顔ぶれ、価格帯の分布、レビュー数の多寡といった情報が得られます。新規参入を検討しているカテゴリで「どんなプレイヤーが上位にいるのか」を最初に把握する手段としては、コストゼロで始められる点が優れています。
価格そのものを比較したい場合は、EC 価格調査の方法で手順を整理しています。
売上金額が出ないという構造的な限界
モール公開情報の最大の制約は、順位はわかっても金額がわからない点にあります。ランキング1位の商品が月にいくら売れているのかは公開されていないため、「このカテゴリは参入する価値があるのか」という問いには答えられません。
加えて、ランキングは基本的に「今」しか見られません。過去にさかのぼって推移を追ったり、前年同期と比較したりすることは困難です。季節性のあるカテゴリでは、この制約が特に大きく効いてきます。
データソース③:推計データでカテゴリ×期間の金額を出す
推計データは、公的統計の粒度とモール公開情報の金額欠落、その両方を埋めるために使います。カテゴリ単位・期間単位で売上金額を把握できるため、参入判断や商品企画といった具体的な意思決定に直接使えます。
推計データとは何か・どう作られるか
推計データとは、モールが公開している情報とランキングデータを組み合わせ、独自アルゴリズムによって売上金額を推計したものです。モール自身が公表する確定値ではないため、あくまで推計値として扱う必要があります。
重要なのは、推計値であることを理解したうえで「何に使うか」を選ぶことです。会計上の数値として扱うのではなく、市場の大きさや伸びの方向、競合との相対的な位置関係を判断する材料として使えば、実務上は十分に機能します。
推計データで初めて答えられる問い
推計データを使うと、公的統計とモール公開情報では届かなかった次のような問いに答えられるようになります。
- このカテゴリの市場は前年比で伸びているか、縮んでいるか
- 売上が伸びている要因は販売数量か、それとも単価の上昇か
- カテゴリ内でどの価格帯にボリュームがあるか
- 自社の売上はカテゴリ全体の何%を占めているか
特に「販売数量と単価のどちらが動いているか」は、施策の方向を決める分岐点になります。数量が減って単価が上がっている市場では値下げ競争に入るべきではありませんし、その逆もまた然りです。自社ポジションの把握手順はカテゴリ分析とは?EC市場での自社ポジション把握の手順で詳しく解説しています。
なお、Nint ECommerceは楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3モールに対応し、日本EC市場の約7割をカバーしています。1つのツール内で主要モールを横断したベンチマークが可能です。
目的別・データソースの選び方
3つのデータソースは、達成したい目的から逆算して選ぶのが最短です。以下の対応表を目安にしてください。
| やりたいこと | 適したデータソース | 理由 |
|---|---|---|
| 事業計画の前提を置く | 公的統計 | 出典として明示でき、全体規模とEC化率が押さえられる |
| 参入するカテゴリを選ぶ | 推計データ | カテゴリ単位の金額と前年比がないと判断できない |
| 売れ筋の顔ぶれを知る | モール公開情報 | 無料かつ即時に上位商品と価格帯を確認できる |
| 商品企画の価格帯を決める | 推計データ | 価格帯別の売上構成比が必要になる |
| 競合と自社を比較する | 推計データ | 競合の売上金額は公開されていないため推計が必要 |
| 季節性・繁忙期を把握する | 推計データ | 月次の推移を過去にさかのぼって追う必要がある |
実務では、公的統計で全体像を置き、推計データでカテゴリを掘り、モール公開情報で個別商品を確認する、という順序で進めると迷いが少なくなります。競合を軸に見ていく場合の手順はEC競合分析のやり方にまとめています。
カテゴリ別の市場レポートで実際の数字を確認する
調べ方を理解したら、次は実際の数字を見るのが早道です。Nint ECデータラボでは、主要ECモールの推計データをもとにしたカテゴリ別の市場レポートを公開しています。大カテゴリごとに、市場規模・前年比・平均単価・価格帯別の構成をまとめています。
気になるカテゴリから確認してみてください。各レポートからは、さらに細かい中カテゴリのレポートにも移動できます。
ファッション・雑貨
- レディースファッションのEC市場レポート
- メンズファッションのEC市場レポート
- インナー・下着・ナイトウェアのEC市場レポート
- 靴のEC市場レポート
- バッグ・小物・ブランド雑貨のEC市場レポート
- ジュエリー・アクセサリーのEC市場レポート
- 腕時計のEC市場レポート
家電・PC・スマートフォン
食品・飲料
住まい・日用品・キッチン
美容・健康・キッズ・ペット
- 美容・コスメ・香水のEC市場レポート
- ダイエット・健康のEC市場レポート
- 医薬品・コンタクト・介護のEC市場レポート
- キッズ・ベビー・マタニティのEC市場レポート
- ペット・ペットグッズのEC市場レポート
趣味・スポーツ・その他
- スポーツ・アウトドアのEC市場レポート
- おもちゃのEC市場レポート
- ホビーのEC市場レポート
- テレビゲームのEC市場レポート
- 本・雑誌・コミックのEC市場レポート
- CD・DVDのEC市場レポート
- 楽器・音響機器のEC市場レポート
- 車用品・バイク用品のEC市場レポート
- サービス・リフォームのEC市場レポート
- カタログギフト・チケットのEC市場レポート
よくある質問(FAQ)
ECモールの市場規模は無料で調べられますか?
はい、全体像であれば無料で調べられます。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」で、EC市場全体と業種大分類の規模・EC化率を確認できます。ただしカテゴリ単位の金額や前年比までは無料の公開情報では把握できないため、その粒度が必要な場合は推計データを使うことになります。
推計値は実際の売上とどのくらい違いますか?
推計値はモールが公表する確定値ではないため、実際の売上と完全に一致するものではありません。重要なのは絶対値の精度そのものよりも、同じ基準で継続的に比較できることです。前年同期との比較やカテゴリ間の相対比較といった用途であれば、意思決定の材料として実務上機能します。
モールごとに市場規模を分けて見る必要はありますか?
はい、必要です。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングでは、同じカテゴリでも売れ筋の商品や価格帯の分布が異なります。出店しているモール、あるいは出店を検討しているモールの数字を個別に確認しないと、実態と合わない判断につながる可能性があります。
市場規模はどのくらいの頻度で確認すべきですか?
カテゴリの性質によりますが、季節性のある商材では月次、通年型の商材でも四半期ごとの確認が目安です。特に販売数量と平均単価は別々に追うことをおすすめします。売上が横ばいでも、数量減を単価上昇が補っている状態と、その逆とでは、打つべき施策がまったく変わるためです。
自社の市場シェアはどう計算しますか?
自社の実売上を分子、対象カテゴリの推計市場規模を分母に置いて算出します。分母には推計値を使うことになるため、シェアの絶対値を厳密に扱うのではなく、時系列でどう動いているかを追う指標として使うのが実務的です。
まとめ:全体像は公的統計、意思決定は推計データ
ECモールの市場規模を調べる際は、目的に応じて3つのデータソースを使い分けることが要点です。事業計画の前提を置くなら公的統計、売れ筋の顔ぶれを知るならモール公開情報、そして参入判断・商品企画・競合比較といった具体的な意思決定には推計データが必要になります。
特に見落とされやすいのが、公的統計の粒度とモール公開情報の金額欠落という2つの制約です。この2つを理解しておくと、「調べたけれど判断に使えなかった」という手戻りを避けられます。
執筆者の視点
市場規模の相談を受けるとき、最初にうかがうのは「その数字で何を決めたいですか」という点です。数字そのものより、決めたいことが先にある方が、必要なデータソースは自然に絞られます。事業計画の前提を置くだけなら公的統計で足りますし、来期の商品構成を決めるなら価格帯別の構成比まで見に行く必要があります。
もうひとつ、現場でよく起きるのが「市場が伸びている」という一言で議論が終わってしまうケースです。売上が伸びていても、数量が減って単価だけが上がっている市場では、取るべき打ち手はまったく違います。市場規模を見るときは、必ず数量と単価に分解してから解釈することをおすすめします。
カテゴリ単位の市場規模を、金額で把握する
Nint ECommerceは、主要ECモールのカテゴリ別売上・前年比・平均単価・価格帯構成を可視化するEC市場分析プラットフォームです。2,300社以上のEC事業者・メーカーに導入されています(2026年4月時点)。ITreview GRID AWARD 2026 Winterでは「競合サイト分析ツール部門」「予測分析部門」でLEADERを受賞しました。
関連サービス・資料
- 導入事例:実際にどのようにデータが使われているかを紹介しています
- AIインサイトレポートサービス資料:市場データの分析を自動化する仕組みを解説しています
- 資料請求・お問い合わせ:料金プラン・機能詳細をご案内します
- EC Talent:即戦力のEC人材をお探しの場合はこちら
この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト
note:https://note.com/nint_ecommerce
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は100以上となり、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。
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