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家具業界の「イマ」を徹底深掘り!市場規模の動向やアイテム別のEC売上推移

家具、インテリア業界におけるEC市場の規模は他の業界と比べても高い水準であり、店舗と併せてインターネットでの販売に力を入れる家具店も少なくありません。本記事では家具のEC市場規模の概況と動向、拡大の要因を解説します。

また、インターネットでの販売においては重要な存在である「主要3モール」の売上規模と販売数量についても紹介します。いずれも今後の展開を検討するためには欠かせない情報をまとめたので、ぜひ確認してください。

家具業界の概要

一言で家具業界と言っても、家具は大きく「業務用家具」と「家庭用家具」に分かれております。業務用家具は主に、オフィスや店舗に使用される家具でJIS規格に基づき強度試験を実施し耐久性が高い商品が多い傾向があります、一方の家庭用家具は、お家で見かける一般的な家具で、様々素材、価格帯などがあり、デザイン性重視の製品も多くあります。また、同一規格(寸法)での生産を前提としている事も多いため、サイズに関しては固定のものが多くなる傾向があります。家具業界にはこの「業務用家具」と「家庭用家具」の2つが存在し、業界を構成しております。

家具のEC市場規模と動向

EC(Electronic Commerce)は「電子商取引」という意味で、ネット通販やインターネットショップを総じて指すことが多いです。企業間取引(BtoB)、企業と個人の取引(BtoC)、個人間取引(CtoC)に分類でき、取引方法は主に「ECモール」もしくは「自社ECサイトによる直接取引」に区分されます。EC市場の調査を行っている主体は、官民さまざまですが、結果を調べる際は「どのような取引を対象にしているか」を明確に理解することが大切です。

本記事では、ECサイト全般におけるBtoC(消費者向け電子商取引)の市場規模のデータを参照し、家具・インテリアをめぐる動向をまとめます。

生活雑貨・家具・インテリア販売のEC市場規模

2023年8月、経済産業省が発表した「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2022年のBtoC-EC市場の日本国内の規模は22兆7449億円であり、前年比は9.9%増となっています。そのうち、生活雑貨、家具、インテリアが属する、物販系分野のBtoC-EC市場は13兆9,997億円と前年対比で5.37%上昇し、生活雑貨、家具、インテリアのEC市場規模は、2兆3,541億円と前年比3.47%増で推移したことが明らかになっています。

※出典:経済産業省
「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」(2023年8月31日)

生活雑貨、家具、インテリアジャンルには以下のものが含まれます。

■経済産業省の調査における生活雑貨、家具、インテリアの構成要素
・家事雑貨(食器台所用品など)
・家事用消耗品(洗剤やティッシュなど)
・一般家具(机・イスなど)
・インテリア(カーテンなど)
・寝具類(ベッド、布団など)

経済産業省の調査によると、上記の構成のうち約7割を家事雑貨、家事用消耗品が占めており、残りの3割が家具やインテリア、寝具類となっています。コロナ禍以前として比較されることの多い2019年は1兆7,428億円だった点、2020年以降も継続して成長し続けている点も考慮すると、EC市場における家具業界の市場規模は拡大傾向であると考えられます。

生活雑貨・家具・インテリア販売のEC化率

EC市場のトレンドを探るうえで着目すべき指標の1つが「EC化率」です。EC化率とはすべての商取引におけるEC市場の割合を指します。例えば、今回のケースだと「生活雑貨・家具・インテリア販売のEC市場規模÷生活雑貨・家具・インテリア販売の全取引の総額」によって、同カテゴリーにおけるEC市場規模の普及具合を明らかにできます。
つまり、EC化率が50%の場合、該当ジャンルの日本市場全体に対して、50%がEC市場での取引によって構成されているということです。

経済産業省の調査によると、2022年の生活雑貨、家具、インテリアカテゴリーのEC化率は29.59%となっています。この数値は「書籍、映像・音楽ソフト」(52.16%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(42.01%)についで、全8カテゴリー中3番目に高い値です。そして、2022年における市場規模は、物販系8カテゴリーの中で4番目に高い2兆3,541億円です。上位4カテゴリーはいずれも2兆円市場であり、いずれも数千億円の中で拮抗しております。前年成長率から考えると、このまま成長を続けた場合、食品、飲料、酒類が2023年~24年に最も早く3兆円市場へ成長する可能性があります。
また、Bto-Cの物販系分野全体のEC化率は8.78%です。

これらのことから、生活雑貨、家具、インテリアカテゴリーの市場でいかにEC化が起きているか、そしてEC市場においても大きな売上を持っているかが分かります。

さらに、国内全体のBtoC-EC3分野(物販系分野+サービス分野+デジタル分野)の中でも、物販系分野は2022年度において売上構成比が61.52%と過半数以上を占めていることから、生活雑貨・家具・インテリア販売のEC化率は全体的にも高い部類に入ると考えられます。

家具全体の市場概況

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2022年の家庭用・オフィス用家具市場は前年比103.8%の1兆1,330億円とされています。内訳としては、家庭用家具の市場規模は7,090億円(前年比103.7%)、オフィス用家具の市場規模は、4,240億円(前年比103.9%)となっています。2022年は長引くコロナ禍の影響により、テレワーク環境の充実のための買い直し需要や、アフターコロナに向けたオフィス環境の整備が進み、前年を超える出荷額となったのではないかと考えられます。

※出典:株式会社矢野経済研究所
家庭用・オフィス用家具市場に関する調査(2023/10/13)

新築住宅着工数と家具には密接な関係があります。
理由として、新しい家には家具が無く、新たに購入する新規需要が見込まれる為です。上記市場推移が、新築の着工数とどのように関わっているか、次の項目で確認していきたいと思います。

新築住宅着工数推移

国土交通省が2023年1月31日に発表した、2022年の建築着工統計調査報告によると、2022年の新設住宅着工戸数は前年比0.4%増の853,287となり昨年に続き2年連続の増加となっています。一方で比較する、矢野経済研究所の市場規模推移、経済産業省の電子商取引に関する市場調査から算出した家具、インテリア、寝具の推計売上推移を確認すると、「比例関係」ではない事が分かります。
このことは、既存世帯での買い回りなど、いくつかの要因が考えられますが、ひょっとしたら、家具の平均単価が上昇傾向となっている可能性も示唆しております。

ECでの市場規模が拡大した要因

経済産業省は日本における個人消費が横這い傾向のなか、拡大し続けている物販系分野のBtoC-EC市場規模の成長率は「高い」と評価しています。そのなかでも上位4カテゴリーに入っておりEC化率も高い「生活雑貨・家具・インテリアカテゴリー」は、特に着目すべき市場といえるでしょう。同カテゴリーがEC市場で規模を拡大している2つの要因を解説します。

コロナ禍でのライフスタイルの変化

生活雑貨・家具・インテリアカテゴリーのEC市場規模は、2019年から2020年にかけて顕著に拡大しました。2019年のECの市場規模は1兆7428億円(前年比8.36%)だったのに対して、2020年は2兆1322億円で前年比は22.35%となっています。この成長の大きな要因になったと考えられているのが、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の流行です。

前述のとおりコロナ禍ではテレワークや在宅勤務を導入する企業が増えました。さらに外出を控える風潮が強かったことも加えて、平日・休日を問わず自宅で長時間過ごすライフスタイルが定着したと考えられています。そのため、従来よりも自宅に「快適性」を重視する傾向が強まり、デスクやチェアといった家具の買い替え需要が高まりました。さらに10万円の「特別定額給付金」を家具の購入費用にあてる人もいたと考えられます。

また、一般的に大型家具は店舗や展示場で実物を見てから購入する人は少なくありません。しかし、コロナ禍では外出しにくい風潮だったことからECサイトで購入した人も増えたと考えられるでしょう。新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた2020-2021年の前年比が6.71%増と緩やかになっていることからも、「巣ごもり需要」の影響が大きかったと予想できます。

2022年は長引くコロナ禍により在宅ワーク環境の整備や、出社頻度増加に伴うオフィス環境の整備が進んだ一方で、営業時間の短縮が緩和・解消されることにより、実店舗への来店が出来るようになった影響がEC市場の家具の売上へ影響し、前年比で3.47%増と緩やかになりました。

技術革新によるネットでの購入需要の増加

家具全体の市場規模が鈍化(横ばい)に対して、ECでの市場規模は成長曲線を描いています。大型家具などは「実物を見て購入したい」という消費者心理が一定数存在するため、さらにEC市場を拡大させるためにはそのような消費者に対する施策も必要になるでしょう。例えば、AR(拡張現実)によって、自宅に家具を設置したイメージをスマホで簡単に確認できるようなサービスを展開することで、ECサイトで購入する際の「抵抗感」を薄める取り組みを行っている企業があります。

同施策は家具メーカーのLOWYAが自社ECサイトで行っているほか、Amazonや楽天といったECモールでも一部導入されています。AIを活用することで、個々の消費者の趣味趣向に適した家具を紹介する技術も進化しており、さまざまなアプローチ方法でネットでの購買需要の増加を図っています。

3大ECモールにおける家具市場規模推移

ここでは2019年から2022年まで、年間のECモールにおける家具ジャンルの売上市場規模と販売数量の推移をNint ECommerceのデータで確認します。

3モール合計の売上規模は、2019年に比べ2022年には約336%へ成長となりました。2019年には収納家具が主な商品でしたが、2022年にはコロナ禍の中で家具やテーブルなどの大型家具の購入が活発になったことで、単価上昇に繋がり、市場全体の売上規模成長に貢献しました。

一方、販売数量は2022年になり落ち着きを見せています。2022年はオフライン店舗の営業も感染対策を講じながら通常営業に戻った影響だと思われます。ただし、上記の記述した通り、大型で高単価の家具の購入が活発になったことにより、売上規模は成長を続けています。

ECサイトの普及拡大が家具の市場における重要なポイント

ECサイトを活用することで、ショールームのスペースを削減できるほか、実店舗では難しい色違いや素材違いの家具も消費者に提案しやすくなるなど、増収増益を実現するためのさまざま施策を実施できます。ただし、高級ブランドから低価格帯の商品まで幅広い業者がECサイトを展開しているため、差別化を図るためのブランディングをSNSやインターネット上で行うなど、ECサイトならではのポイントを押さえたWebマーケティングも求められるでしょう。

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備考

・今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

●Amazon
∟カテゴリー:ホーム&キッチン、オープンシェルフ・ラック、ベッド・ベッドフレーム、チェスト・タンス、ワードローブ、テーブル、キッチンワゴン・アイランド、オフィスデスク

●楽天市場
∟カテゴリー:収納家具、本棚・ラック・カラーボックス、タンス・チェスト、キャビネット・コンソール、テーブル

●Yahoo!ショッピング
∟カテゴリー:テレビ台・キャビネット、ラック・シェルフ・本棚、チェスト・衣類収納、ダイニングテーブル・チェア、テーブル、ソファー・ソファーベッド、ベッド、キッチン収納、椅子・スツール・座椅子、子供部屋家具、こたつ・こたつ用品、子ども用家具

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2019年1⽉〜2022年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年10⽉時点のものを使⽤)

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【出典:家具業界の「イマ」を徹底深掘り!市場規模の動向やアイテム別のEC売上推移」(2023年12月11日更新)】

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■本記事について
作成:山本 真大(Masahiro Yamamoto) /デジタルマーケティングUnitアナリスト
編集:村上 咲(Saki Murakami)/ デジタルマーケティングUnitエディター
  :瀧坂 義尚(Yoshinao Takisaka)/デジタルマーケティングUnitユニットリーダー 兼ブログ監修

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