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家電市場、年末商戦を分析!3大ECモールの今を見る

本記事のポイント3点
  1. 3大ECモールの家電の成長率はEC市場全体よりも高く、ピークは12月>3月
  2. 年末商戦の売上アップのポイントはストーブ・ヒーター、空気清浄機などの季節家電の展開!
  3. 好調ショップと苦戦したショップの販促を比較!年末商戦と相性が良い販促方法が判明!?

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

最近は日没時刻もどんどん早くなり、日が落ちると肌寒い日も出てまいりました。本格的な秋・冬の到来ですね。本年も残すところあと2カ月ちょっと。年末どう過ごそうか等、年末年始のことを考え始める方も増えてきているのではないでしょうか。

ヒト・モノ・カネが大きく動く12月は、多くの業界で年間を通して一番売上が高くなる月でもあります。その背景には、ハレの日として最大の市場規模を誇るクリスマスや、冬のボーナス支給による消費、忘年会、大掃除など多くのイベントがあることが考えられます。

プレゼント需要や、ボーナス需要に向けて、多種多様の製品・サービスが展開され、12月は自然と商戦が活気づきます。また、活気づいた商戦に影響されてか、消費行動にも変化が起きます。皆さんも「年末だし」・「クリスマスだし」・「ボーナス支給されたし」といった具合で、家電の購入や、豪華な食事、自分ご褒美に装飾品などを購入した経験もあるのではないでしょうか。

今年はポストコロナ1年目の年末となります。ヒト・モノ・カネが大きく動く年末、そんな年末商戦でのEC市場の動きを、今回は「家電」に絞りまとめました。数年間の3大ECモール(楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング)での動向からその傾向を見ていきたいと思います。

3大ECモールの家電ジャンルの市場規模と売上推移

3大ECモールの家電市場の推移を見ていく前に、今回の「家電ジャンル」にどのようなものが含まれているかをご説明します。今回の家電ジャンルは以下のカテゴリーをまとめたもので構成されています。

<家電ジャンル構成カテゴリー>

1  :デジカメ(一眼レフ・コンパクト)
2  :テレビ
3  :ドライヤー(ストレートアイロン含む)
4  :加湿器
5  :空気清浄機
6  :炊飯器
7  :洗濯機
8  :掃除機
9  :電子レンジ・オーブンレンジ
10:冷蔵庫

では早速、推移を確認していきましょう。

図1:3大ECモール 家電ジャンル市場規模 売上推移(2019年1月~)

図1の内容を見ると、3大ECモールの市場規模は伸長傾向であることが伺えます。

次に、3大ECモールの家電市場が「EC市場全体」と比較した際にどのように推移しているかを確認してみたいと思います。

図2:3大ECモール家電ジャンル+EC市場(①生活家電、AV機器、PC・周辺機器等+②市場全体)前年比推移

今回3大ECモールの家電ジャンル推移の比較として、経済産業省が発表している電子商取引に関する市場調査の①生活家電、AV家電、PC・周辺機器等と②市場全体との前年比を用意しました。結果として、EC市場全体の類似ジャンル(生活家電、AV機器、PC・周辺機器等)の伸長率と比べても、3大ECモールの家電ジャンルが好調に推移していることがわかります。ジャンルとして同粒度ではないため一概には言えませんが、3大ECモールが家電ジャンルにおいて、市場をけん引する立場であることは言えそうです。

図1、2より、3大ECモールの家電ジャンルは、
 ①現在も成長が続いているおり、その成長は市場全体と比較しても高い
 ②EC市場全体をけん引している、もしくは3大ECモールへの集中化が起きている

という可能性が示唆されます。

3大ECモールの家電ジャンル及び詳細ジャンルの季節指数をチェックする!

3大ECモールで家電ジャンルが好調なことはわかりました。ですが「本当に家電って年末商戦品なの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
需要度を測る指標として、「季節指数」があります。季節指数は一定期間(今回は各年1月~12月)の売上や、販売数量の平均を100とし、100以上であれば需要が高い月、100以下であれば需要が低い月として判断する指標の一つになります。
今回、家電ジャンルを売上による季節指数にて確認し、その推移を見ていきます。

図3は3大ECモールの家電ジャンルを2019年~2022年の4年間の季節指数推移を各年で確認したものになり、図4・図5は家電ジャンルを10つのジャンルに分け、2019年~2022年の4年分の各月の季節の平均値をまとめた図になります。
※加湿器ジャンルのみ、季節指数の変動幅が非常に大きいため別図(図5)にしております。

図3:3大ECモール家電ジャンル 季節指数推移
図4:家電ジャンル(9ジャンル)季節指数推移
図5:加湿器ジャンル季節指数推移

それぞれの特徴を確認していくと、家電ジャンル全体としては、毎年12月が一番のヤマを迎えることがわかります(図3)。また、毎年3月にも上昇する傾向が伺えます。家電ジャンルの詳細を確認すると、全10ジャンル中7ジャンルにおいて、12月が一番季節指数の高い月であることがわかります。(図4・図5)
まさに家電業界の関係者にとって12月は非常に重要な月であることがわかります。

売るべき時期は12月?3月?

家電ジャンルの需要期は12月と3月に存在することが分かりましたが、この需要時期に売れるジャンルは同じでしょうか。いくつかの切り口から、12月の方が売れる(需要が高い可能性がある)ジャンルと、3月の方が売れる(需要が高い可能性がある)ジャンルを各ジャンルの<売上順位変動数>と<季節指数の変動数>から判断し、その結果を以下の図に示しました。

評価基準は以下の通りです。
・〇:売上順位変動(±1以上)・季節指数変動(±30以上)がある。
・△:売上順位変動(±1以上)・季節指数変動(±30以上)のどちらかがある。
・✕:売上順位変動(±1以上)・季節指数変動(±30以上)のどちらもない。

図6:順位変動数・季節指数変動数から判断する、家電ジャンル評価表

図6より、以下のジャンルは12月により販売強化をすると有効ではないかと思われます。

12月の販売(販促)を強化すると良いと思われるジャンル
・テレビ
・加湿器
・空気清浄機
・掃除機
・ドライヤー
・デジカメ

3月の販売(販促)を強化すると良いと思われるジャンル
・冷蔵庫
・炊飯器
・洗濯機
・電子レンジ・オーブンレンジ

実際に3大ECモールにおける12月単月の売上・販売数TOP10の推移を確認すると、12月に販売強化をすると良いと思われるジャンルが多くランクインしていることが分かります。(図7、図8)

図7:2019年~2022年 12月単月売上TOP10商品
図8:2019年~2022年 12月単月販売数10商品

季節商品が重要!?好調ショップ・苦戦ショップのジャンル構成をチェック

家電市場における重要時期である12月に、市場シェアを上げたショップはどのようなジャンル構成をしているのでしょうか。今回は2022年12月のシェア率が平均シェア率と比べ「高まった」ショップAと、「最も下がった」ショップBのジャンル構成比を見ていきたいと思います。Nint ECommerceの「ショップ分析」機能を活用し、ショップAとショップBの違いを確認しました。

図9:2022年12月 好調ショップジャンル構成比
図10:2022年12月 苦戦ショップジャンル構成比

好調ショップ、苦戦ショップの内訳を確認すると、好調ショップは「季節家電」(ストーブ・ヒーター)の構成比が高くなっています。一方で苦戦したショップは3月の方が販売ポテンシャルの高い「洗濯機」の構成比が高くなっております。

メルマガ広告が成功のカギ!?販促状況のチェック

販売ジャンルの違いがショップの好調・不調を分けた原因かもしれませんが、「販促」による影響もあるかもしれません。先ほどのショップAとショップBの販促内容を以下の項目で比較していきたいと思います。

◆サーチ広告
 対象となったキーワード数の合計 or アイテムマッチの出向商品数の合計です。
 ※サーチワード広告(RPP型広告)の出稿数ではありません。

◆メルマガ広告
 メールマガジンに掲載されていた、商品URLの合計数になります。
 Nint ECommerceでは商品単位で確認が可能なため、どの商品にメール広告をかけているのかが確認できます。

◆WEB広告
 モール内で露出が確認できた純広告の合計数
 ※出稿数とは異なる場合があります。

図12:ショップA・Bの2022年12月販促内容比較

両社の大きな差は、「メルマガ広告」です。好調Aショップは、メルマガ広告を実施していますが、苦戦したBショップは実施していませんでした。
一方でWEB広告は苦戦したBショップは多めに実施していますが、Aショップではほとんど実施していないという結果でした。これらのことが、ショップの売上に影響した可能性が考えられます。

まとめ 家電市場年末商戦に関して

家電市場には年間を通して2つ大きな需要期があります。1つ目は、12月。2つ目は3月です。これらの2つの「ヤマ」は販売ポテンシャルのある商品が異なっている可能性があります。

12月は加湿器やヒーターなど季節需要の高いジャンルが売れる傾向が強く、普段の家電製品に加えて「季節家電」の販売をいかに上手く展開するかが売上創出において重要となります。また、販促方法としては、メルマガ広告を中心に展開することでより高い販促効果が見込める可能性がありそうです。

季節性の高い製品は需要時期を過ぎると一気に売上が低下するため、その数量・需要を見極めることが重要になります。チャンスロスをせずに、必要数を見極め、適正在庫にて売上を創出することが、小売店の売上の明暗をわける要素の一つとなりそうです。メーカーの課題としては、気温により左右される季節商材の需要を予測し、適正な製造数を見極めることが必要になりそうです。

一方で、3月は、冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機のような生活必需品の需要が高まるようです。3月の家電需要に関しては、以前公開した新生活需要に関するレポートをご参考にしていただければ幸いです。

これから始まるポストコロナ時代初の年末商戦、今年は例年に比べ、旅行や行楽、クリスマスイベントなど、家電ジャンル以外での競合が多く、消費者の選択肢も多種多様になっているとも言えます。一方で、昨今の世情から、節電家電へのニーズは一層高まっているのも事実です。どのような動きとなるのか、どのようなジャンルの商品が売れるのか、家電業界に身を置く方々は要チェックです!

備考

今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

  • Amazon:ホーム&キッチン>家電 ジャンル以下一部、大型家電 ジャンル以下一部
  • 楽天市場:家電 ジャンル以下一部、TV・オーディオ・カメラ ジャンル以下一部
  • Yahoo!ショッピング:家電 ジャンル以下一部、テレビ、オーディオ、カメラ ジャンル以下一部

※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間
2019 年1⽉〜2023年8⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年10⽉時点のものを使⽤)

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【出典:Nint BLOG「家電市場、年末商戦を分析!3大ECモールの今を見る」(2023年11月1日公開)】

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