土用の丑の日が終わった後、ECのかば焼き市場はどう年間売上をつくる? 4年間のデータから見えた「需要の切り替え」戦略
皆さんこんにちは、株式会社Nintの山本です。
2026年の夏の土用の丑の日は7月26日でした。うなぎは夏の代表的な季節商材ですが、主要ECモールのかば焼き市場では、2025年に商品名へ「土用」または「丑」を含む商品が市場売上の64.6%を占めました。実に市場の3分の2が、年に一度の行事に紐づいている計算です。
では、その山が過ぎた後、かば焼き市場ではどのような商品が売れているのでしょうか。Nint ECommerceの推計データをもとに、2022年から2026年6月までの動向を分析しました。(※年間比較は2022年を含む4年間、指数比較は2023年を100として推移を確認しています)
※本記事の数値はNint ECommerceによる推計売上データです。
【本記事のサマリー】
- 2025年、商品名に「土用」「丑」を含む商品がかば焼き市場売上の64.6%を占有
- 売上ピークは丑の日の7月ではなく、予約・ギフト需要が集まる6月
- 上位10ショップで市場売上の69.4%。専門店6店・総合店4店
- 上位店は同一商品の商品名を年5回書き換え、閑散期は大容量訴求へ切り替え
- 2026年上半期は稚魚回復で単価横ばい・数量+3.4%と4年ぶりの数量プラス

かば焼き市場の売上は微減にとどまる一方、販売数量は2年で17%減少

まずは、かば焼き市場の年間推移をみていきましょう。かば焼き市場の売上は、2023年を100とすると2024年は99.2、2025年は95.2と推移しています。一方で、販売数量はどうでしょうか。同じく2023年を100とした数量指数は、2024年に90.3、2025年に83.0と、2年間で17%減少しました。
1個当たりの平均単価は、2023年から2025年にかけて5,753円から6,601円へ約15%上がっています。うなぎは稚魚の漁獲量が仕入れ値に直結するため、価格の変化が平均単価に現れやすい商材です。2025年までのかば焼き市場は、平均単価の上昇が販売数量の減少をカバーすることで維持されてきたと言えます。
| 指標 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|
| 売上指数(2023年=100) | 93.6 | 100 | 99.2 | 95.2 |
| 数量指数(2023年=100) | 97 | 100 | 90.3 | 83 |
| 平均単価 | 5,553円 | 5,753円 | 6,324円 | 6,601円 |
ピークは丑の日の7月ではなく、前月の6月

次に、月次単位で市場を見ていきましょう。各年の月間平均売上を100として推移を確認すると、3年とも5月から平均を上回り、6月にピークを迎えます。8月以降は再び年間平均を下回って推移します。まさに5月〜7月が勝負の「季節商材」です。
なぜ土用の丑の日がある7月ではなく6月なのか。理由は、早割による丑の日に向けた予約注文と、父の日やお中元などのギフト需要が6月に集中するためです。
このように市場は5月〜7月の約3か月が勝負に見えます。しかし実際に年間で売上を立てているショップは、土用の丑の日以外の9か月間にも手を打っていました。
上位10ショップで市場売上の7割を占める

2025年、かば焼き市場のランキングに登場したのは165ショップです。この165ショップを1月から12月の年間売上順に並べると、上位10ショップだけで市場売上の69.4%を占めていました。上位20ショップまで広げると構成比は83.1%に達し、上位ショップへの集中度が高い市場であることが分かります。(※本記事における順位・上位の区分はすべて2025年の年間売上順位を指します)
年間売上上位10ショップは専門店か?総合店か?
結論から言うと、上位10ショップのすべてがうなぎ専門店ではありません。4店はかにや海産物を幅広く扱う総合店で、店舗全体の売上に占めるかば焼きの割合は約2割です。こうしたショップにとってうなぎは「夏に売る商材の一つ」という位置づけです。一方、残る6店はかば焼きが食品売上のほぼ全てを占める専門店です。「うなぎが本業」であるこれらのショップが、閑散期にどのような戦略をとっているのかを深掘りします。
同一商品を、商品名を変えながら1年で5回書き換える

上位ショップには、①閑散期にも売上が途切れない点、②同一商品の名前を掛け替えている点、という2つの特徴があります。
実際に年間売上上位10位以内に入る、あるショップの主力商品を見てみましょう。1個当たりの単価は約6,600円で、12か月ほぼ動いていません。中身も商品ページも同じまま、変わっていたのは商品名の先頭部分だけでした。1月・2月は「御年賀」、3月〜4月には「母の日早割」へと切り替わり、5月〜7月は「御中元」、8月・9月はそれに「敬老の日」を足し、10月・11月は「お歳暮」、そして12月に再び「御年賀」へ。1年で5回、行事名を書き換えています。
商品名に含まれる行事の種類を数えると、1〜10位の平均は7.0種類、11〜20位は5.5種類でした。うなぎ専業でECを回すショップほど、細かく行事を追って年間を埋めている傾向が見られます。
贈答が細る1〜3月、市場の3割は大容量商品に

しかし、行事名だけで12か月が埋まるわけではありません。行事訴求の効果が弱いのは、2月、3月、9月、10月の4か月です。

| 月 | 1月 | 2月 | 3月 | 6月 |
|---|---|---|---|---|
| まとめ買い向け商品の売上構成比 | 29.1% | 33.4% | 28.2% | 3.8% |
1月〜3月の市場の中で構成比が高まっているのが「大容量」「1kg」などのキーワードを含む、まとめ買い向け商品です。まとめ買い向け商品の売上構成比は、1月29.1%、2月33.4%、3月28.2%に達します。一方で6月はわずか3.8%。小分け向け商品の売上構成比を見ると、1〜3月と10〜11月は大容量が上回り、5〜6月は小分けが上回るという動きを見せています。
贈り物としての需要が減る時期は、冷凍保存して自宅で食べる層へターゲットを移していると考えられます。
なお、うなぎ以外の商材を持つショップも一部にはあります。ある上位ショップは冬に柑橘類を売り、別の上位店は冷凍果実を1年を通じて扱っています。うなぎと売れる季節が重ならない商材の組み合わせですが、金額の規模はどちらもかば焼き本体の売上の1割に満たない状況です。
谷を埋めている主役は、あくまで「同じうなぎの売り方の切り替え」でした。ただし、これは市場全体のパイが小さくなる閑散期において構成比が高まっているだけであり、上位店ですら売上の谷を完全に埋め切れているわけではありません。裏を返せば、2月や9月はまだ需要開拓の余地が空いているとも言えます。
売上規模が大きいショップほど、商品名を書き換えている
2025年に6か月以上売れ続けた商品で比べると、毎月商品名を書き換えている商品の割合は、上位10ショップでは、それ以外のショップの約2.1倍に上りました。
1個当たりの平均単価(上位6,644円/それ以外6,471円)や、「ギフト」などの訴求の有無に大きな差は見られません。上位ショップとそれ以外のショップで目立った違いは、価格や品揃えではなく「商品名を季節に合わせて更新する頻度」でした。
「すべての行事名を最初からまとめて並べておく」方が効率的に思えますが、実はそうした商品は上位に入っていません。一般に検索エンジンでは、キーワードを詰め込みすぎると1語あたりの関連度が薄まるとされており、ECモール内の検索でも同様の力学が働いていると推察されます(モール内検索の考え方は楽天SEO対策の解説記事でも解説しています)。その月に来る買い手が使う言葉だけを置くことで、季節ごとの検索順位を有利に戦っている側が勝っていたと考えられます。
まとめ ── 2026年のかば焼き市場はどうなるか
うなぎのかば焼き市場は、年に一度の行事に大きく寄りかかった季節市場です。その中で年間売上を維持しているショップは、丑の日以外の9か月間を、商品の名称や容量の訴求をターゲットに合わせて掛け替えることで、需要を拾いに行く姿が、本調査からみえてきました。
今後の動き:4年続いた値上げが2026年に止まった
2026年上半期(6月まで)のデータを見ると、売上は前年同期比でプラス3.5%、販売数量がプラス3.4%となり、1個当たりの単価はほぼ横ばいでした。数量が前年を上回ったのは4年ぶりです。
背景には稚魚の回復があります。水産庁の発表(※「令和7年度 国際漁業資源の現況」)によると、2025年漁期のシラスウナギ国内採捕量は14.8トン(推定値)規模まで回復し、過去最低だった2019年漁期の3.7トンという水準から大きく戻りました。シラスウナギの取引価格(1kg当たり)も約250万円台から約130万円台へとおよそ半値に下がったと報じられています。
4年続いた値上げが止まった途端に数量が戻ったことは、かば焼き市場が「値上げが止まれば客が戻る」価格感応度の高い市場である可能性を示唆しています。
さらに、2026年は「二の丑」がなく、夏の丑の日は7月26日の1回のみでした。需要が1日に集中するため、ピークがより鋭く、その前後の谷がより深くなる年でもあります。
価格が下がり買いやすくなった年だからこそ、丑の日以外の9か月にどれだけ適切なターゲットへ客を呼べるかで差がつきます。なお、商品名を月次で書き換えるという手法は、うなぎに限った話ではなく、カニやフルーツ、肉などのギフト商材全般に応用できる運用です。
自社の主力商品の名前を、この1年で何回書き換えたか。そこから見直してみる価値はありそうです。
そして、競合はこの1年で何回書き換えたのか――商品名だけなら、競合のページを見張り続ければ追えなくもありません。しかし、その書き換えで売上がどう動いたのかは、外からは見えません。
魚介類カテゴリ全体の動向は魚介類EC市場レポートで、ギフト需要のシフトは母の日ギフト市場の分析でも扱っています。季節商材の意外な需要をECデータで読み解いた分析としては、花火はいつ売れる? ECデータが暴いた「冬の隠れ需要」の正体もあわせてご覧ください。
参考文献
- 水産庁「令和7年度 国際漁業資源の現況」ほか(シラスウナギ国内採捕量・取引価格の推移)
本記事で見てきたショップ別の売上推移、商品名の変遷、容量訴求の切り替えは、いずれもNint ECommerceの推計データで確認できます。記事中では伏せたショップ名も、Nint ECommerce上では実名でご覧いただけます。自社カテゴリで同じ分析をしてみたい方は、お気軽にお問い合わせください。


関連サービス・資料
執筆者の視点
今回の調査でいちばん印象的だったのは、上位ショップの強さの正体が、価格でも品揃えでもなく「商品名を更新する頻度」だったことです。同じ商品・同じ値段のまま、名前の先頭だけを行事に合わせて年5回書き換える。地味な運用ですが、その積み重ねが閑散期の売上の差になっていました。うなぎに限らず、季節に寄りかかったギフト商材を扱う方には、まず自社と競合の「商品名の変遷」を見比べることをおすすめします。
対象期間: 2022年1月〜2026年6月/データソース: Nint ECommerce(推計値)/対象カテゴリ: かば焼き(主要ECモール)
この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト
note:https://note.com/nint_ecommerce
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は100以上となり、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。
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