9月1日は防災の日!3大ECモールの防災グッズ市場のトレンド・売れ筋商品をチェック
こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。
9月1日は防災の日です。昨年は防災の日が制定されるに至った関東大震災より100周年と節目の年だったこともあり、各都道府県で防災に関しての取り組みが実施されたのは記憶に新しいのではないでしょうか。
近年、消費者の防災意識が高まりを見せています。特に、2024年は1月には能登半島地震が、8月には九州を中心に多くの地震が発生しております。
本記事では、3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上推計データを基に分析し、市場動向をより細かく把握するため、2022年1月から2024年7月にかけての防災関連商品の市場動向を月次単位で、最新の2024年8月の動向は日次単位で2024年7月から確認しました。最近の地震報道と購買行動の関連性について考察します。
目次
本記事のポイント3点
- 防災関連商品の需要は地震報道に強く影響される
- 非常用持ち出し袋や簡易トイレなどの売上が特に高い
- ECモールごとに売上のピーク時期が異なる
2023年防災関連市場の変遷
今回、防災関連のジャンルを「トイレ(簡易トイレ・携帯トイレ)」「ラジオ」「懐中電灯」「非常食」「防災頭巾」の6ジャンルに分類し、防災関連ジャンルとしてまとめました。まずは年度別の防災関連ジャンル全体と、分類した6ジャンルの売上推移を確認します。
2023年の防災関連市場は、前年と比較して89.1%で推移しました。防災関連商品は商品サイクルの長さと、報道の影響を受けやすく、中でも2022年は2019年から確認しても最も売上が高い年でしたので、その反動がこのような数字として表れたのかもしれません。
詳細ジャンルを確認すると、トイレ・懐中電灯・防災頭巾は前年を上回る結果となりました。この背景には、トイレに関しては新たな需要(渋滞時の緊急対応として・登山の1アイテムとして)を狙った商品展開がされた結果と、前回の防災関連記事でも述べたように、買い足し需要が高い傾向であることが要因ではないかと思われます。懐中電灯は非常時以外でも、日常的に使われる可能性が高く、家庭内での常備品として定着していることが考えられます。防災頭巾は商品サイクルが重なり、入れ替えの需要が起きたのではないかと推察します。
一方、ラジオや非常食・防災リュックサックなどの商品の売上が前年を下回った要因としては、ラジオ・非常食と防災セット・非常用持ち出し袋それぞれで理由が異なる可能性があります。まず新規で備災をする消費者の動向としては、関連商品がまとまった防災セット・非常用持ち出し袋を準備することが多いのではないでしょうか。ホームセンターやショッピングモール、ドラッグストア、スーパーなどでもこの非常用持ち出し袋が多くみられると思います。一方で、単品アイテムであるラジオや非常食は「すでに非常用持ち出し袋」を持っている方が食品の期限切れや古くなったからと、「買い足す需要」で構成されている可能性が高いです。これらのことから考えると、2023年の防災関連市場は2022年に比べ、備えに対して新規の消費者が急増することはなく、既存消費者の買い足し需要も低かった年だったのではないかと思われます。
2022年1月から2024年7月までの月次推移とジャンル別動向
次に、2022年1月から2024年7月までの、各ジャンルの月別推移を確認していきます。
注目点は、3月(東日本大震災3.11)、9月(防災の日9.1)に売上が上昇する点です。これは報道頻度の上昇により、消費者の防災意識が上昇することによる結果と考えられます。また、2023年5月にも上昇が見られますが、こちらも集中豪雨や、地震などにより「激甚災害指定」されるほどの影響が出た月です。当然報道の頻度も高く、報道を目にする機会の増加により、防災意識が高まり、結果として防災関連ジャンルの需要が高まったと考えられます。2024年1月は記憶に新しい、能登半島での地震がありました。該当期間の中では最も高い売上を示しています。その後、高い防災意識は継続し、3月の報道時も高い売上を示しています。
ジャンル別で推移を見ると、2022年3月、2022年9月、2023年5月、2024年1月は非常用持ち出し袋が最も売上が高く、新たに災害に備える消費者が増えたのではないかと推察されます。一方で、2024年3月は「トイレ」の売上が最も高くなり、「買い足し需要」が新規需要よりも高かったのではないかと思われます。農林中央金庫の調べによると、「災害時に避難する際の防災グッズを準備している」割合は、40.2%であり、非常用持ち出し袋の需要は引き続き高まる傾向が予想されます。
3大ECモールそれぞれの売上動向
各モールでの防災関連ジャンルの売上推移はどのようになっているのでしょうか?推移を確認します。
AモールとBモールでは2024年1月に売上が最も高まりました。これは能登半島地震の報道が売上に影響与えたと推察します。一方、Cモールでは2023年3月が最も高い売上を記録しました。この違いは、各モールにおけるユーザー層の違いや購買行動の違いに起因している可能性があります。このように、モール内でもユーザーの特徴により動きが異なることが分かります。
南海トラフ地震警戒報道と購買行動の関係
2024年8月8日には、南海トラフ地震の警戒情報が日本気象庁から発表されました。この警戒情報の発表は、同日朝に九州の宮崎県沖で発生したマグニチュード7.1の地震を受けてのもので、南海トラフでのさらなる大地震の可能性が高まったとの判断に基づくものです。この情報は、2019年に導入された新システムによる初めての発表であり、沿岸部29都道府県に警戒が促されました。先ほどより、災害報道が多くされることにより、消費者の防災意識が高まり、購買行動へつながると述べていますが、南海トラフ地震の警報情報発出によって防災グッズの売上に変化はあったのでしょうか。報道前のひと月分(2024年7月)からの日別売上を確認します。
今回、2024年7月1日~2024年8月28日の日別売上推移を確認することで、3大ECモールにおける、消費者購買行動を読み解きます。図7は2024年7月1日からの推移で、図8は2024年8月1日からの推移です。図7では「平常時」からの推移を、図8は「8月のみ」にフォーカスし、より見やすくしております。
3大ECモールの防災関連ジャンルの売上推移を日別に抽出した結果、この警戒情報の発表後の翌日である8月9日に非常に高い売上を示していることが分かりました。また、最も売れているジャンルは、非常用持ち出し袋であり、次いで「トイレ」「非常食」と続きます。
高い売上は翌日10日まで続きその後、減少しますが、ここで「トイレ」が非常用持ち出し袋の売上と逆転します。8月25日前後に再び上昇しましたが、こちらは「台風」による影響です。その際は、「トイレ」が最も上昇する傾向が見られました。おそらく、建物の崩壊や避難所のイメージが非常に強い「地震」と断水や停電のイメージが強い「台風」に対する備えの違いと、「新規購入」と「追加購入」の違いがトイレの売上を最も高くしたと推察します。
防災グッズ売れ筋商品と今後の市場予測
防災グッズの直近のトレンドを売れ筋商品からも確認します。もう一度図3「3大ECモール防災関連ジャンル月次推移」を確認してみましょう。このグラフから、2024年1月では非常用持ち出し袋が売上トップジャンルに、2024年3月ではトイレが売上トップジャンルになっていることが分かります。
非常用持ち出し袋は新規需要、トイレは買い足しの既存需要が想定されるため、2024年1月と2024年3月は異なる需要だった可能性が高いです。この2つの時期の売れ筋TOP10商品を確認することで、直近のトレンドを把握します。
◆2024年1月TOP10商品
(※新規需要が多い可能性)
1位:防災セット(2人用)
2位:簡易トイレセットA(50+10回分)
3位:簡易トイレセットB(予約受付中)
4位:防災セット(1人用)
5位:防災セット(2人用/キャリー付)
6位:防災セット(3人用)
7位:簡易トイレセットC(100回分)
8位:非常食セット(4人用/3日分/36食)
9位:ラジオ(ハイエンド受信機)
10位:簡易トイレセットD(50回分)
◆特徴
防災セットや非常食セットが多く、保存食、ラジオ、ライトなどが含まれる総合的な防災グッズが多いのが特徴。また、簡易トイレも多様なバリエーションで長期保存対応。
◆2024年3月TOP10商品
(※既存の買い足し需要が多い可能性)
1位:簡易トイレセットA(50+10回分)
2位:簡易トイレセットB(50回分)
3位:簡易トイレセットC(50回分)
4位:携帯トイレ袋D(400回分)
5位:防災セット(2人用)
6位:簡易トイレセットF(大容量)
7位:簡易トイレセットG(60回分)
8位:簡易トイレセットH(50回分)
9位:簡易トイレセットI(60回分/1人8日分)
10位:非常食セット(7日分/28食)
◆特徴
簡易トイレ関連の商品が中心で、長期保存可能なセットが多いのが特徴。防災セットは消防士との共同開発の商品が含まれます。全体としては、トイレ関連の備えに特化していることが伺えます。
2024年1月は、総合的な防災グッズが多く、家族全員の備えに対応する商品が中心です。一方2024年3月は、トイレ関連に特化した商品が多く、長期保存や使いやすさが強調されています。
防災グッズ市場動向まとめ
防災グッズには、新規では非常用持ち出し袋、追加購入はトイレ用品を購入する傾向がみられ、地震の報道に関してより強く反応する傾向がみられます。近年では1月・3月の売上が上昇しておりますが、ジャンル別に確認すると違いがあります。また、日別売上で確認すると、報道直後にEC市場でも反応がみられることが分かりました。
今後の市場予測としては、地震報道や季節要因が購買行動に及ぼす影響を踏まえ、消費者のニーズに応じた商品の提案が求められるでしょう。特に、防災意識の高まりが持続する中で、消費者が何を優先的に購入するのかを正確に把握することが、成功の鍵となります。
いざという時の備えという少々特殊なジャンルですが、備えあれば憂いなし。万が一に備え高い防災意識で「備災」活動をしていきましょう。
本記事を通じて、国内のEC市場を調査するツール「Nint ECommerce」の有用性を感じていただければ幸いです。
Nint ECommerceに関して
日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。
活用例
商品在庫(SKU単位)の拡充
・競合価格を見ながら自社の販売価格を設定
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・商品名(商品情報)での差別化
・検索露出(RPPなど)の強化
Nint ECommerceを活用することで、ECビジネスチャンス創出に役立ちます。ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりNint ECommerceの詳細をご確認ください。
■調査概要・免責事項
・本調査は、Nint ECommerceを用い、国内の3大ECモールである楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングを対象として調査しました。
今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。
・Amazon
DIY・工具・ガーデン>安全・セキュリティ>非常用品・備品
ホーム&キッチン>防犯・防災用品>非常時・緊急避難用品
家電&カメラ>ポータブルオーディオ>ポータブルラジオ
家電&カメラ>オーディオ>ラジオ
スポーツ&アウトドア>アウトドア>ライト・ランタン>ハンディライト
スポーツ&アウトドア>アウトドア>安全対策・サバイバル>充電式ライト・ラジオ
・Rakuten
日用品雑貨・文房具・手芸>防災関連グッズ以下
TV・オーディオ・カメラ>オーディオ>ラジオ
日用品雑貨・文房具・手芸>防災関連グッズ>防災ラジオ
日用品雑貨・文房具・手芸>防災関連グッズ>懐中電灯
・Yahoo!ショッピング
キッチン、日用品、文具>防災、防犯、セーフティ
キッチン、日用品、文具>防災、防犯、セーフティ>避難生活用品>非常用食品
テレビ、オーディオ、カメラ>オーディオ機器>ミニコンポ、ラジカセ>ラジオ
アウトドア、釣り、旅行用品>アウトドア、キャンプ、登山>ライト、ランタン>懐中電灯、ハンディライト
※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。
・レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。
■調査期間
2020 年 1 ⽉〜2024 年 8 ⽉
※本稿における Nint 推計データは 2024 年 8 ⽉時点のものを使⽤
■調査機関(調査主体)
株式会社Nint
■調査対象
Nint推計データ
Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。
■転載・引用について
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下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記してください。
【出典:「9月1日は防災の日!3大ECモールの防災グッズ市場のトレンド・売れ筋商品をチェック」(2024年9月5日公開)】
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