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「ビール」「第三のビール」が値上げ?10月の酒税法改正による売上への影響をチェック!

こんにちは、Nintデータアナリストの山本です。

9月も終盤を迎え、寒暖差を感じる日々が増えてきましたね。日中の気温も日によって変わり、暑い日と過ごしやすい日が出てきました。残暑の厳しい暑い日には汗だくになりながら一日を終える。そんな一日の終わりにはおいしいビールを一杯。という方も多いのではないでしょうか。そんな中、ビール業界では2023年10月に酒税法改正という大きなイベントが予定されているのはご存じでしょうか。

ビールなどの酒類・アルコール飲料市場は何が変わり、どうなっていくのか。3大ECモール(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング)の前回改正時(2020年10月)の販売動向をチェックしていきます。はたして「ビール」「第三のビール」は今が買いなのか、それともこれからが買いなのか、酒税法改正の影響はどのくらいになるのか。今後を予想していきたいと思います!

本記事のポイント3点
①:2023年10月の酒税法改正により影響のあるのはビール・第三のビール ※新ジャンル
  • ビールは税率が低下するため販売価格が下がる可能性
  • 第三のビールは税率が上昇するため販売価格が上昇する見込み
②:2020年10月に上記①とほぼ同じ内容(税率)での改正が起きている その際の3大ECモール(楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon)の動向をみると「駆け込み需要」が「値上げ商品※新ジャンル」にて起きている。一方で「値下げ」となったビールでは「買い控え」も発生。 ③:EC市場では「2ケース」買いが基本。商品サイクルは約2カ月程度と予想

10月の酒税法改正内容とは

気になる酒税法改正に関して、簡単にまとめると以下になります。

※詳細は財務省HP「酒税に関する資料」をご確認ください。

税率が減少するもの

ビール :350mlあたり現在70円→63.35円(-6.65円)

清酒(日本酒) :1Klあたり現在11万円→10万円 (-1.0万円)

■税率が上昇するもの

新ジャンル(第三のビール):350mlあたり37.8円→46.99円(+9.19円)

■税率変動なし

発泡酒(麦芽比率25%未満)

酒税法改正による値上げ・値下げ商品は?

今回の酒税法改正により、価格改定が起きると予想されるジャンルは「ビール」と「第三のビール」、後述する「新ジャンル」になります。

ビールは税率が減少することで小売価格が下がる可能性が高いです。現に国内の大手ビール会社各社が、10月1日納品分より価格改定を行う旨を発表しています。

一方で、小売価格が上昇する可能性が高いのが「新ジャンル」です。前回2020年10月の酒税法改正時(350mlあたり、9.8円の増税)には、税率上昇は生産コスト・物流コスト内で吸収されず、店頭価格まで反映されておりました。昨今の物流コストの増加・原料高に加え、今回の酒税法改正が起きるため、今回も店頭価格への影響は間違いないでしょう。

このように考えると酒税法改正により下がった税率分、ビールは安くなり、新ジャンルは高くなる。と考えがちですが、店頭価格には製造コスト・物流コストの影響も反映される為、店頭価格への影響に関しては、一概には言えません。

ビール・発泡酒・新ジャンルの見分け方

ビールは安くなる!?よし!ビールを買おう!と思っているそこのアナタ!ビール・発泡酒・新ジャンルの違いはご存じですか?実は意外にこの3ジャンルの違いについて知らない方もいるのではないかと思います。せっかくの機会ですので、3ジャンルの見分け方と特徴に関して触れたいと思います。

一番わかりやすい見分け方は、パッケージの「表記」から判断する方法です。

筆者がよく使う方法です。製品パッケージには酒の酒類別の表記があり、その表記内容で、3ジャンルを見分けます。

ビール :ビールもしくは生ビールと記載 発泡酒 :発泡酒と記載 新ジャンル:リキュール(発泡性)②・その他の醸造酒(発泡性)② と記載 ※但し2023年10月より、新ジャンルの表記方法が発泡酒②(令和8年10月以降は発泡酒に統合)へと変更となります。一部例外あり。(参照:国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」)

表記の基準には、酒税法による定義が影響しております。

ビール :麦芽使用率が原料の2/3以上であること。使用出来る原料・副原料に制限があり、基準を満たすものが、ビールと記載できます。 発泡酒 :麦芽の使用量に関しては指定はありません。※一般的には、25%未満。ビールに比べ、制限が少ないため、プリン体や、糖質などをカットすることも出来ます。ビールに比べ口当たりが軽い。 新ジャンル:麦芽「以外」の原料を使用している場合と、酒類と糖類やその他物品を使用しています。麦芽以外の穀物ではトウモロコシなどを使用することが多いです。発泡酒にスピリッツなど他のアルコール類を加えたものなどもこのジャンルになります。

前回の酒税法改正時はどうだった!?2020年10月の改正時前後のビール市場の変動を見る!

ここからは、前回の酒税法改正時、3大ECモールの動きはどうだったのかを見ていきます。今回は、2020年10月の酒税法改正時に増税・減税・変更なしであった、ビール系3ジャンルの季節指数推移を増税後の2021年・2022年比較の8月~11月で比較しました。

特徴的な点は3つです。

①:駆け込み需要の存在

2020年9月の「第三のビール」の推移を見ると季節指数の増加が見られ、10月からの店頭価格上昇に伴う駆け込み需要の存在が見られます。毎年9月には各ジャンルの季節指数が平均値の100を超えますが、この特徴はより顕著に出ています。

②:購入「待ち」の動き

2020年9月の「ビール」の動きを他の年度、ジャンルと比較すると、「唯一」低下しています。これは、10月からの酒税法改正による店頭価格の変更を待った結果ではないかと推察されます。

③:在庫による価格の変動に時間を要した可能性

2020年10月・11月「ビール」の推移を見ると、10月に大きく動くかと思いきや、緩やかな上昇傾向となっております。これは、ショップの在庫による影響が考えられます。季節指数から判断すると、消費者は「値上がり」には大きく反応する一方、「値下げ」に関しては反応が薄いと言えます。もしかすると、税率低減の割合が350mlあたり6.65円と新ジャンルの増加率よりも小さかったこと、下がった税率分が価格に反映されたとしても、「ビール」と「新ジャンル」・「発泡酒」の間には、引き続き価格差があるため税率が変更されても大きな購買行動に繋がらなかった可能性が考えられます。

その他にも、近年の健康意識により、発泡酒や、新ジャンルが謳う「糖質」「カロリー」オフ製品が好まれる傾向がありそうです。

価格推移から見る動き。2020年10月の酒税法改正時前後の変動を見る!

Nint ECommerceでは、商品の平均単価を調べることができます。3大モールのビール系3ジャンルの2020年~2023年における平均単価の推移を調査しました。

特徴的な点は以下3点です。

①:平均単価は年々上昇傾向

各ジャンルとも8月・9月においては2022年度の平均単価が最も高くなっています。

②:ビールの平均単価は他のジャンルに比べ価格の上下が緩やか

税率が下がった2020年10月・11月のビールの平均単価の動きを見てみると、大きく価格変動はなく、緩やかな低下傾向となっています。

③:「値上げ」傾向は類似した動きを見せる

2020年10月、第三のビールの税率が上昇したことで、小売価格も上昇しました。また、2022年10月には、原料高騰による値上げが大手ビール各社より起きており、年度は違いますが、同時期での値上げが発生しました。このことを2020年の第三のビールの価格推移と、2022年の第三のビールの価格推移で比較すると、「9月」に価格上昇が見られ、その後「10月」に一度低下傾向、そして11月からは再び上昇傾向と似た動きをしていることがわかります。これはいくつかの可能性がありますが、9月に大量仕入れを行った結果、10月には値下げをしながら一部販売をし、11月からは価格が上昇に転じた結果なのかもしれません。

2020年の税率変更による税額増加と、2022年の原材料・物流費高騰による商品値上げによる影響は、売価が上がるという点において同様の現象であり、価格が上昇した月は実はモール全体では、「平均単価の減少」が起きるという点は非常に興味深い点になります。

モール毎に異なる!2022年度各モール別メーカーシェアを見る

各モールごとのメーカーシェアはどうなっているのでしょうか?Nint ECommerceを使い、2022年度(1月~12月)の各モールにおけるメーカーシェアを確認しました。

楽天市場

Yahoo!ショッピング

Amazon

大手4社が高いシェア率を占めますが、Amazonではシェア1位がB社になるなど、各モール毎に特徴が出ています。

ビール系3ジャンル、上位ショップを調べる

今回は、Nint ECommerceの価格分析機能を用いて、各ジャンルの上位5位以内に入るショップを無作為に選択し、ショップ単位での価格分布とその特徴を調べました。

「ビールジャンル」2022年度売上 ショップAの構成比

ビールジャンルに強いこのショップでは中心価格帯は2つ存在し、4,000円台と8,000円での展開にて売上を作っています。ビールジャンルの販売価格としては、4,000円台の1ケース売りもしくは、8,000円台の2ケース売りが主流であり、全体としては「2ケース」購入が好まれているようです。

「新ジャンル」2022年度売上 ショップBの構成比

新ジャンルに強いこのショップに関しては、6,000円台が売上の主力となっているようです。また、8,000円台の価格帯も売上構成比が高いです。6,000円台は350ml缶の2ケース、8,000円台は500ml缶の2ケース販売ではないでしょうか。こちらのショップも「2ケース」単位での販売が中心のようです。

「発泡酒ジャンル」2022年度売上 ショップCの構成比

発泡酒ジャンルに強いこのショップでは新ジャンル同様、6,000円台の売上が高いようです。発泡酒ジャンルも他の2ジャンル同様、価格帯から判断すると、「2ケース」販売が主流のようです。

2ケース販売とリピーターから想像できること

ECモールでのビール系ジャンルの販売は2ケース販売が基本のようです。2ケース販売の場合、350ml缶・500ml缶共に、48本の計算となります。税率変更が起きていない、値上げが起きていない発泡酒ジャンルで売上推移をみると、大変興味深い結果が見れました。

上記9月~11月に注目すると、9月にヤマが出来たのち、10月には低下、11月に再上昇していることがわかります。このことから、①10月は9月の反動が起きている可能性 ②11月は9月のリピート購入が起きている可能性が考えられます。

政府統計の国民健康・栄養調査によると、毎日飲酒する人の割合は18.1%、週5~6日の人の割合が5.5%となり、約2割の人が週5日以上で飲酒をしていることがわかります。飲酒量は1合~2合の間が多い、とのことですが、上記2ケースを2カ月サイクルで1合(1缶程度)のむと考えると、面白いほどに一致します。

酒税法改正まとめ

酒税法改正により影響のあるジャンルはビールと新ジャンルです。ビールは値下げの可能性が、新ジャンルは値上げが起きます。値下げによる影響に比べ値上げに関してより消費者は反応するため、9月の駆け込み需要は、新ジャンルにて発生するのではないかと予想されます。ショップの方は「新ジャンル」の在庫を増やし、「10月の平均単価を下げないで販売」することがポイントになりそうです。

また、EC市場においては、「2ケース」購入が主流となっており、リピート購入までのサイクルは概ね2カ月前後ではないかと思われます。メーカーの方に関しては今後ビールの比重が高まることが予想されますが、初速にとらわれず、11月の動向までチェックする必要がありそうです。

備考

今回調査にあたり抽出したジャンルは以下の通りです。

  • Amazon :食品・飲料・お酒、お酒、ビール・発泡酒 ジャンル以下
  • 楽天 :ビール・洋酒、ビール・発泡酒 ジャンル以下
  • Yahoo!ショッピング:食品、ドリンク、水、お酒、ビール、発泡酒ジャンル以下

※詳細ジャンルに関しては株式会社Nintへお問い合わせください。

※当社サービスの売上・数量は推計データです。

参考URL

調査対象:Nint推計データ

Nint推計データは、AIやクローリングなどの技術により⽇本国内の3⼤ECモールで販売される商品の売上⾦額・販売数量を⾼精度に推計したデータに、サイト内でのプロモーションデータ等を加えた、EC市場の総合的な分析を可能にするビッグデータです。

データ抽出期間:2020 年8⽉〜2022年12⽉(※本稿における Nint 推計データは 2023年9⽉時点のものを使⽤)

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【出典:Nint BLOG「「ビール」「第三のビール」が値上げ?10月の酒税法改正による売上への影響をチェック!」(2023年9月27日公開)】

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