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節電予測の夏、2023年EC市場の扇風機市場を予想~2021年・2022年の需要期に売れた商品と、2023年直近トレンドを分析!~



5月も終わり、少しずつ夏日や、平均気温が例年より高い日々が増えてきております。日差しにも日々、力強さを感じている方も多いのではないでしょうか?



気象庁が2023年2月21日に発表した夏の天候の見通しによると、今年の夏(6月~8月)は沖縄を除く全国で「平年並みか高い」見込みとなっています。これは、今年の夏の暑さ対策が例年以上に必要であることを示しています。部屋が暑いとき、あるいはムシムシしているとき、どのような対策をとられていますか?「エアコンを使う」「扇風機を使う」と答える方が大半ではないでしょうか。ある調査データによると、国内での扇風機(据置型)の保有率は約8割前後と言われており、非常に馴染みのある家電と言えます。小さい頃に一度は扇風機の前で「あ”ぁぁぁ」とやった経験もあるのではないでしょうか。今回は、そんな扇風機のEC市場でのトレンドについて調査しました。このジャンルには近年流行している「ハンディファンやネッククーラー」も含まれますので、非常に興味深いジャンルです。



【目次】
1. 扇風機市場場の現状と今後の展望
2. 扇風機市場の平均単価
3. 扇風機市場のメーカー状況
4. 扇風機市場のショップ状況とその注力商品
5. 扇風機市場での売れ筋商品特徴と、直近トレンド
6. まとめ




1. 扇風機市場の現状と今後の展望

EC3大モールにおける、扇風機ジャンルの需要はいつ高まるのでしょうか?
下記にNintECommerceを使った売上推移を元に作った季節指数のグラフを用意しました。
各月の指数は、過去3年分(2020年~2022年)の平均値としております。
⇒年間平均売上を100として、各月が100より高いか低いかで季節トレンドを把握します。




扇風機はよく「季節家電」と言われることがありますが、まさにその呼ばれ方の通りの動きをしております。季節指数は5月から急上昇し、6月・7月にピークを迎え、9月からは一気に下降します。指数の最大値は7月で、最低値は2月です。その数値差は、なんと31倍もあります。これには、季節性の需要だけでなく、取り扱いをする販売店等の「面」の要素も大きいかと思われます。
このように、扇風機の需要は非常に特徴的であり、特に5月~8月の間が重要だと言えます。扇風機の最も需要が高い時期、【6月・7月】の需要と傾向を詳しく見ていきます。

市場が最需要期を迎える6月・7月のAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3モールの売上について確認しました。2023年5月時点のNint推計データによると、2022年6月・7月の扇風機ジャンル(※注)は前年同時期(2021年度の6月・7月)と比較し、131%と急速に拡大しています。今後の市場規模は、当社のAI分析を踏まえると、継続して上昇傾向との結果となりました。




また、今年は6月1日より大手電力各社が電気料金の値上げを予定しており、約2,000円~5,000円の負担増になりそうです。さらに、電力消費の多い夏場・冬場に関してはそれ以上の影響が予想される為、節電対策として、エアコンよりも消費電力が少ないとされる据置型扇風機への需要と、ポストコロナ時代を迎え、例年よりも外出が増加すること、加えて平均気温が全国的に高い夏が予想されることなどから、携帯型の扇風機(ハンディファン・ネッククーラー)にも注目が集まる可能性が高いと思われます。

各モールを観察するとAmazonの売上は横ばいしております。しかしながら、サブジャンルで詳細を確認すると、その明暗はハッキリと分かれております。一般的な扇風機(据置型タイプ)のリビング扇風機ジャンルと、エアコンを使わず水の気化熱を利用して冷たい風を出す冷風扇ジャンルは、前年比で80%を下回り、苦戦しています。
一方で、ネッククーラーやUSBで動く小型扇風機などが含まれる携帯扇風機ジャンル・卓上扇風機ジャンルは前年比139%、127.9%と好調に推移しています。

楽天市場の売上は急速に拡大しております。その要因は既存商品の大幅な前年越えと、ネッククーラーをはじめとした新商品の登場です。
既存商品では、上位30品中20品が既存商品であり、そのうち4品以外は前年を越える結果でした。中でも、1位の羽無しのタワー型タイプが前年同時期比392.9%と大幅伸長しており、この伸長が市場の成長に寄与していると考えます。新商品(昨年度売上の無い商品)は上位30品中10品と非常に多くランクインしており、中でも、ネッククーラーや、首振り機能付きのサーキュレーターがその大半となっております。新商品の数の多さに関しては、扇風機は季節商材であるため、同じ商品が継続し続けて販売されるよりは、毎年新商品として登場する可能性も考えられます。

Yahoo!ショッピングの売上は急速に拡大しております。その要因は楽天市場同様、既存商品の大幅伸長と、新商品でした。
既存商品は特に売上1位になった小型の静音タイプのサーキュレーターが前年比1200%以上と大きく伸長したことが主要因となっております。既存商品は上位30品中、26品を占めており、売上前年割れは4品のみとなっております。新規商品は30品中4品となっており、ネッククーラーとUSB接続で動く卓上型の扇風機がその中心となっております。

3モールの売れ筋商品傾向から、一般的に普及率が8割前後と言われる「据置型」に関しては、その需要は飽和気味で苦戦傾向です。一方で、ネッククーラーや、小型化されたサーキュレーター・卓上扇風機などは、ニーズが継続し、拡大しているようです。商品によく使われるワードや特徴に関しては、後程商品トレンドでまとめます。

⇒昨年市場を見ると、据置型タイプは苦戦傾向
⇒新商品の登場が多いカテゴリー。2022年はネッククーラーと小型扇風機が目立つ


2. 扇風機市場の平均単価

平均単価は4,631円と前年同時期比で109%と低単価商品の販売数が減少し、高単価商品の販売比率が増えたため増加しております。 特にサブジャンルの携帯扇風機ジャンルにおいて、メーカーA社の単価貢献が大きく、扇風機ジャンル全体の単価上昇381円の内、77円の単価上昇に貢献しております。

ジャンルとしては、楽天市場の扇風機ジャンル(平均単価:5,010円)の貢献が大きいです。該当ジャンルは高単価商品の販売個数を上昇させながら売上を上昇させており、ジャンルとしての売上構成比を32.4%から39.6%と7.2%増加させております。このことが、扇風機市場全体の平均単価上昇に寄与しました。

今後の平均単価は、AI分析を踏まえると、上昇傾向との結果となりました。近年は単に風を送るだけではなく、温風が出せるタイプや、空気清浄機機能付きのもの、リモコンが標準仕様となるなど、より付加価値を付けた製品が登場しており、それら商品が市場けん引をしている点、原材料の上昇と、原油高による輸送コストの増加が単価に反映される点からも、AI分析の予測通りになるのではないかと考えます。


3. 扇風機市場のメーカー状況

昨年売上シェア1位のメーカーA社の売上は96%と微減しました。その要因として、A社の主力商品である据え置き型扇風機の市場が苦戦したことが挙げられます。また、昨年度1位商品が、本年度は売上が79.7%となるなど、昨年度TOP10商品の内、9品が前年を下回る結果となりました。
一番売上を拡大したのはメーカーB社で売上は885%と急速に拡大しております。その要因は取り扱いアイテム数の増加です。2021年は該当期間中、15品前後でしたが、2022年では、30品以上となっております。また、販売ショップ数も2021年と比べて2022年では4倍以上に増加しました。アイテム数と販売ショップ数の増加が、B社の売上伸長の要因であったと考えられます。

4. 扇風機市場のショップ状況とその主力商品

市場における注目ショップは、ネッククーラーの販売で3モール全体のショップのなかで、売上No.1となったC社です。C社は商品の種類を大幅に増やすのではなく、商品を絞り、集中的に販売する戦略を取っています。実際、C社の販売商品は2021年で3品、2022年で9品と微増しましたが、これらのうち3品が売上を牽引しています。ショップでの一番売れ筋商品はネッククーラーで、その単価は市場平均単価の5倍以上です。商品説明ページには、商品のコンセプトをまとめた短い動画があり、冷やすだけでなく温めることも可能であること、大容量のバッテリーを持つこと、風量調整が9段階に設定可能であること、専用のキャリーケースが付属することなどが特徴として強調されています。
売上成長率が一番高いD社も注目です。D社の売上は前年同時期比167%と大幅に伸長しています。その戦略はポイント施策が中心となっています。主力商品はサーキュレーターで、小型で首振り機能とリモコンが付いているという製品特性と、ポイント施策を活用した販売戦略により、前年を上回る結果となっています。特に、1万円以上の高価格帯商品に対する特集やメルマガなどの施策を行い、一つの商品に集中して販促を行うことが特徴的です。

5. 扇風機市場での売れ筋商品特徴と、直近(6月5日調査時)トレンド

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングで販売されている扇風機・サーキュレーターの種類や特徴を2021年・2022年と比較、そして、2023年6月5日時点での3モールの売れ筋TOP30を確認、その共通点や違いをまとめました。

2021年
  • ネッククーラー商品が、30品中9品と約1/3を占める結果に
  • ハンディファンは30品中1品のみ※100品に広げると12品

2022年
  • ネッククーラー商品が、30品中11品と増加 (※クールプレートを謳う商品の登場)
  • ハンディファン30品中3品 ※100品に広げると13品

2021年・2022年共通特徴
  • タワーファンタイプが双方にランクイン
  • 空気清浄機能付きの扇風機がランクイン
  • 静音性の高いDCモーターのリビング扇風機が含まれている
  • 数品は据置型の扇風機がランクインしている
⇒ネッククーラーと買い替え需要もあり、タワーファンタイプを中心に、据置型の需要も一定数あります。

直近(6月5日調査時)トレンド(6月1日~5日までの最新状況)
  • ハンディファンが増加傾向※30品中8品に増加
  • ネッククーラーが1品になっている。
  • クリップ式の卓上扇風機のアイテム増加(例年1品~2品⇒3品)
  • 「サーキュレーター」のワードを入れる商品の増加(例年0品⇒9品)

6. まとめ

過去2年間、ハンディファンが需要期に売上上位に入ってこなかったが、本年6月の直近トレンドでは、上位にランクインしていることは、非常に興味深い結果でした。
腕がふさがるため、ニーズが無くなっているのではないかと予測しておりましたが、上位の商品を見ると、モバイルバッテリーとしても使えるなど、電池容量の性能上昇により、ニーズが再燃している可能性も考える必要が出てきております。
一方で、2年連続で好調に推移しているネッククーラーが1品のみランクインという状況も非常に興味深い結果となっています。大手GMSや生活雑貨ショップなどでも、ネッククーラーをよく見かけるため、今後どのようにEC市場で推移していくのかは注目です。
また、主力メーカーが苦戦をしている据置型タイプも、実際は各年の売上上位30品のランキングでしっかりと入ってくるなど、様々な事実・気付きがあった内容だったのではないでしょうか。夏本番まであと少し、本年はポストコロナ時代として初の夏になります。EC市場ではハンディファンがこのまま好調に推移するのか、それともネッククーラーが再び上位に多くランクインするのか、節電対策として、据置型タイプのニーズが再燃するのか、その動向に注目です。





作成者
山本 真大(Yamamoto Masahiro, Marketing Div.マーケティングUnit)
編集者
Nint Blog 編集長 加藤 洋平(Kato Yohei, ERP Div.カスタマーサクセスUnit)


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