時計のアイコン

中国OEMとは?メリットやデメリット、手順、成功させるポイント

自社ブランドを作りたいと思う場合、一からサービスや製品をデザインしたり、製造したりするには膨大なコストがかかります。そこで、注目されているのが「OEM」や「ホワイトラベル」というキーワードです。最近はAmazonなどのECサイトで中国輸入のノーブランド製品に独自のロゴやタグを付ける「中国OEM」も増えてきました。

ここでは、そもそも中国OEMとは何か、メリットやデメリット、始めたい人に向けた具体的な手順について説明します。

中国OEMとは?

最初に中国OEMとは何かについて、製造委託に関する類似の用語との違いも含めて説明します。

そもそもOEMとは何でしょうか?OEMとは、「Original Equipment Manufacturing」の略称で、他者ブランドの商品を製造することや、それを行う企業のことを指します。日本語では、「委託者ブランド名製造」などと訳されます。

OEMという用語自体をはじめて聞く人も多いかもしれませんが、このビジネスモデルは日常生活の至るところにあふれています。例えば、OEMが進んでいるのは自動車業界です。道を歩いていても、見た目は同じ車が違うメーカーから異なる車種として販売されているのに気付くことがあります。例えば、ダイハツの軽自動車がトヨタから違う車名で販売されています。

その理由はダイハツにとってはトヨタブランドで売ることで販売台数の増加が見込めますし、トヨタにとっては新たなに軽自動車を一から開発したり、工場のラインを設置したりする必要がなくコスト削減になり、双方にとってメリットが大きいからです。

他にもセブンイレブンで販売されている「セブンプレミアム」はセブンイレブンが自らの工場で製造している訳ではありません。ほとんどの商品が異なる製造元で製造されたものですが、それにセブンイレブンが自社ブランドとして付加価値を付けて販売しているのです。

中国OEMとは?

OEMの中でも、「中国OEM」とは、中国にある工場やメーカーに商品の製造を委託することを指します。日本国内でのOEMを「国内OEM」と呼ぶのに対し、「中国OEM」や「中国輸入OEM」と呼ばれることがあります。

代表的なビジネスモデルとして、中国で製造されたノーブランド製品に自社のロゴを印字・刻印したり、オリジナルのタグを付けたりして、独自ブランド製品としてAmazonなどのECサイトで販売する手法が知られています。

OEMに似た製造委託に関する用語

ここでは、OEMに似た以下の用語について説明します。

・ODM
・OBM
・EMS

ODMとは、「Original Design Manufacturing」の略称で、受託側は企画から開発、設計、製造までを請け負う方式、あるいはそれを行う企業を指します。

OEMが製造のみ請け負うのに対し、ODMは企画開発から製造まで幅広く請け負うという点で異なっています。ODMを利用すれば、委託側は製品開発のノウハウや生産能力などが全くなくても、受託側にお任せすることで自社ブランド製品を販売することができます。

OBMとは、「Original Brand Manufacturing」の略称で、自社ブランドにより製品を製造することです。つまり、OEMだと委託する製造工程も自社で行う方式、あるいはそれを行う企業のことを指します。

一般的に中国や台湾の電子機器企業などは、OEM→ODM→OBMという流れで成長していくことが多いとされています。

EMSとは、「Electronics Manufacturing Services」の略で、電子機器の製造を受託するサービス、またはそのサービスを提供する企業のことです。

OEMと異なるのは電子機器の製造に特化している点、またOEMの場合、受託企業は委託企業の要望に応じて生産量をコントロールできますが、EMSでは契約に基づいたロット生産という点で異なります。また、OEM企業は委託企業の受託生産専業ではありませんが、EMSは委託先の生産を行う専業の企業です。

中国OEMのメリット

ここでは、中国OEMの代表的な4つのメリットについて説明します。

仕入れ原価が安く利益を出しやすい

中国OEMの1つのメリットは、仕入れ原価が安く利益を出しやすい点です。中国は一時期、その豊富で安価な労働力から「世界の工場」と呼ばれ、世界中の企業が中国に製造拠点を展開していました。しかし、サプライチェーンの脆弱性や人件費の高騰などにより、中国から製造工場を撤退したり、東南アジアに移転したりする企業も増えています。

とはいえ、中国は広大で場所によっては国内と比べ、製造業に関しては高い優位性を保っています。そのため、適切な製造拠点を選ぶことで、日本国内に比べて原価を抑えて商品を生産しやすいといえるでしょう。結果的に商品を安く仕入れることができ、高い利益率を保持することが可能になります。

また、単純に中国の製品を輸入してAmazonなどのECサイトで販売するビジネスはすでに成熟しており、価格競争に巻き込まれてしまいます。少しでも競争において優位に立つためにはひたすら安さで勝負しなければなりませんが、利益がほとんどでなくなりますし、ビジネスとしても疲弊してしまい、決して健全なかたちとは言えなくなるでしょう。

その点、OEMした商品はオリジナル商品という扱いになるため、価格ではなく、ブランドで勝負することができます。OEMによって付加価値を付けることで、価格競争から逃れることができ、ビジネスで優位に立つことができるのです。

長期的に販売しやすい

中国OEMの2つ目のメリットは、長期的に販売しやすい点です。ECサイトで商品力が高くなると、高い評価を得て、好意的なレビューが付き始めるようになります。一朝一夕という訳にはいきませんが、中国で生産できる商品の種類は豊富なため、ブランド力が高まってくれば、それが自分の資産となり、安定して販売を続けられるようになります。

ブランド力を高めることもできる

中国OEMの3つ目のメリットは、ブランド力を高めることができる点です。中国輸入ビジネスの場合、現地ブランドに頼っていてはどうしても価格競争に巻き込まれてしまいます。

この点、OEMであれば、マーケティング次第では効果的にブランド力を高めることができます。一旦ブランドが成長すれば、フォロワーが付くようになるため、他の商品なども販売し、売上を伸ばしていくことができます。

資産になる

中国OEMの4つ目のメリットは、自社の資産になるということです。資産とは、企業に帰属し、将来収益をもたらすことが期待されているものを指します。

中国OEMが軌道に乗れば、自社にとっては少ない労力で売上の維持が可能になるため、長期的に収益をもたらしてくれる資産になります。また、一つの製品をOEMによって自社ブランド化できれば、そのノウハウを生かして、他の製品でも横展開ができます。

中国OEMのデメリット

ここでは、中国OEMのデメリットについて3つ説明します。

開始するには一定の資金が必要となる

中国OEMの1つ目のデメリットは、開始する際に一定の資金が必要になることです。OEMは工場に自社の製品の生産を依頼しますが、工場によって最低ロット数が決まっています。商品をまとめて生産するため、まとまった初期費用が必要になります。そのため、はじめて中国OEMを行う場合は、1商材につき50~100万円程度は準備しておきたいところです。

資金回収までに時間がかかる

中国OEMの2つ目のデメリットは、資金回収まで時間がかかることです。当然ながら、自社ブランド製品をECサイトにアップして、すぐに爆発的に売れることは期待できません。SNSなどを使って認知向上を目指したり、実際に使ってもらって好意的な評価を受けたりするためには時間がかかります。一定の利益を上げるには、大量に販売する必要があるため、その段階に達するまでには時間がかかることは覚悟しておきましょう。

販売開始までに時間がかかる

中国OEMの3つ目のデメリットは、販売開始までに時間がかかることです。もし、中国の現地ブランドを買い付けて輸入してECサイトで販売するのであれば、スピーディーにビジネスを進められます。それに対して、OEMであれば、最初に商品を選定するためにサンプルを制作したり、確認した上で改良を重ねたりする必要があります。当然、工場を選定するのにも各地に赴くなどして工数がかかってしまいます。

中国OEMを行うときの手順

ここでは、中国OEMのメリット、デメリットを踏まえた上で、実際に行う手順について説明します。

Step1.商品の企画や開発の準備

最初に、商品の選定や市場のリサーチ、競合の調査を行います。どの領域に参入して、どの程度の利益が見込めるかを概算することも必要でしょう。ブランディングや集客方法、資金繰りについても具体的な青写真を描きます。

Step2.中国のOEM工場(メーカー)の選定

次に、中国のOEM工場を選びます。言語の問題もありますし、商習慣も異なるため、自分でOEM工場を選定することは困難です。そのため、一般的には信頼できる現地の代行業者を探して、問い合わせをすることになります。最終的には実際に自分自身も足を運び、工場を視察します。その際に、商品の詳細や、不良品の対応方法、費用などを踏み込んで交渉します。

Step3.工場へ見積もりを依頼

工場をある程度絞り込めたら、見積もりを依頼します。このやりとりも実績のある代行業者を経由して行うことになるでしょう。日本での常識は通じないため、気になるところは細部まで詰めておくことは大事です。特に価格面で曖昧にしておくと、後で痛い目に合う可能性もあります。

Step4.サンプル商品の依頼と確認

見積もりに納得できたら、サンプル商品を確認しましょう。サンプル商品は写真だけでなく、実物を良く確認します。デザインだけでなく使い心地や触り心地など、ユーザーの視点で気になるところがないか、よく精査しましょう。実際に生産が決まり、ロット数で注文すると、後戻りができません。また、Webサイト上のサンプル画像と実際の商品が異なることがあるため、不良品や仕様の異なる商品が届くリスクを事前に回避することが大切です。

Step5.OEM商品の量産を依頼

サンプルを精査したら、OEM商品の量産を依頼しましょう。量産された商品をいかにして日本まで輸入するかの手続きも重要です。国際輸送にはトラブルがつきものであるため、やはり現地の信頼できる代行業者を探すことが必須です。

Step6.OEM商品以外の準備

商品が届くのを待つ間、OEM商品以外の準備をします。つまり、販促活動を行います。ECサイトにアップロードする写真や商品説明を魅力的に整えたり、SNSなどを活用したマーケティング戦略を展開したりします。

Step7.販売開始

商品が無事届き、Webページが完成したら、いよいよ商品の販売開始です。

Step8.販売状況の分析

販売開始したら、常に販売状況をモニタリングします。具体的には、レビュー集めや広告の必要性を検討します。また、改善点をリストアップして、次回の生産へ活かしましょう。

中国OEMの工場やメーカーを探すときのポイント

ここでは、数ある中国OEM工場やメーカーを探すときの4つのポイントについて説明します。

現地以外に日本にも窓口があるか

1つ目のポイントは、現地以外に日本にも窓口があるかどうかです。別の目安としては、日本企業との取引実績がある工場を選ぶようにしましょう。日本企業との取引実績があれば、日本語が話せる現地スタッフがいる可能性も高くなります。日本語対応できるスタッフが不在の場合は、通訳を雇うなどして対応しなければなりません。

FBA輸送に対応しているか

2つ目のポイントは、FBA輸送に対応しているかどうかです。FBA輸送とは、「フルフィルメント by Amazon」の略称で、Amazonの配送ネットワークを使って輸送することです。FABを活用すれば、注文の受注から梱包、発送、カスタマーサービス、返品対応のすべてをAmazonが代行してくれるため、ノウハウのない企業にとってはとても助かります。

納期遅延ややりとりに問題はないか

3つ目のポイントは、納期遅延ややりとりに問題はないかどうかを確認することです。過去に別の日本企業との取引において納品や輸送におけるトラブルを抱えているとすれば、同じ問題が自社にも起きかねません。

検品体制が整っているか

4つ目のポイントは、検品体制が整っているかです。生産した商品を日本へ輸入したとしても、そこに大量の不良品が含まれていれば売り物になりませんし、クレーム対応に終始することになります。そのため、できるだけ品質管理体制が整っている工場を選ぶようにしましょう。

中国OEMを成功させるためのポイント

最後に、中国OEMを成功させるための4つのポイントをまとめます。

最初は最小ロット数で見積もりを行う

1つ目のポイントは、最初の見積もりはリスクを抑えるために最小ロットで行うことです。中国のOEM工場は値段交渉が難航することが多いため、見積もりの段階で値段の調整を行ったほうが良いでしょう。少しでもコストを抑えるために、複数の工場に見積もりを依頼することをおすすめします。工場やメーカーは、1688.comなどで検索できます。

価格競争が起きている商品への参入は避ける

2つ目のポイントは、価格競争が起きている商品への参入は避けるようにすることです。なぜなら、価格競争が起きている商品をどれだけ安く仕入れても、安く販売できるかが求められるため、利益を出すことが難しくなるからです。

特に、類似製品が多いジャンルは価格競争が起こりやすいといえます。それを回避するためには、常に新しい商品のリサーチが必要となるでしょう。

時期や季節などに影響を受けない商品を開発する

3つ目のポイントは、できるだけ時期や季節などに影響を受けない商品を開発することです。そうすることで、安定した利益の確保を目指せます。

良い商品を作るだけではなく販売戦略を考える

4つ目のポイントは、良い商品を作るだけでなく、販売戦略を工夫することです。同じような商品でもマーケティング戦略によって、ブランド力を高めることもできれば、毀損することにもなります。より高い付加価値を提供できるように、集客手段や中長期的な運用プランを用意しましょう。

中国OEMで成功するためには長期的な視野が必要

中国OEMに限ったことではありませんが、商品を生産し、販売を開始し、ブランドが市場に浸透して、売上に結びつくまでには時間がかかります。また、自社のブランド設計や信頼できる工場や、代行業者などを選定するのにもそれなりの準備が必要です。中国OEMで成功したいと思うなら、一時的なトレンドに流されず、長期的な視野でビジネスを展開することが必要になるでしょう。

作成者
趙 恵善(Cho Hyesun, ERP Div.マーケティングUnit)
編集者
Nint Blog 編集長 加藤 洋平(Kato Yohei, ERP Div.カスタマーサクセスUnit)

◆Nint ECommerceについて
Nint ECommerceは、大手ECモール(楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon)の公開データを独自技術で集計し、商品カテゴリ別の流通額やメーカー別シェア、モールに出店する企業の商品毎の売れ筋商品や広告施策の動向分析といった市場動向データを提供するデータ分析ツールです。Nint ECommerceは貴社のEC運営の意思決定をサポートします。
詳しくは、サービスHPをご覧ください。


◆株式会社Nintについて
株式会社Nintは、日本の大手ECモールのデータ分析サービスのNint ECommerceを提供する他、中国の大手ECモールのデータ分析サービスのNint Chinaも提供します。長年培った独自のデータ収集と分析手法で、日本と中国のEC市場に関わる企業様のビジネスをサポートします。
詳しくは、会社HPをご覧ください。