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【2026年増税市場分析】加熱式タバコ「600円の壁」到来で市場はどう動く?

#市場規模 #マーケティング #販促ノウハウ #ECデータ

2026年4月、加熱式タバコの値上げが予定されています。

 愛煙家の方にとっては「またか……」という状況ではないでしょうか。

今回の値上げは防衛増税によるもので、1箱あたり「54円〜104円」という過去最大級の上げ幅です。

 商品価格は大手メーカーの代表銘柄は580円から620円に、別の銘柄では530円から570円に。対象となる商品は、大手メーカー1社だけでも50銘柄と多くの銘柄が対象となります。

注目すべきは、いよいよ一部の商品が「600円」台に突入する点です。

 この「600円台」が入ってくることで、今回は3つの動きが起きると予想しています。

1:加熱式タバコの購入は一定数量で維持される
2:一方で、電子タバコへのシフトが増加
3:さらに、禁煙商品の「減らす」へのシフトが増える

特定のモールのデータをもとに、詳細を解説します。

「加熱式タバコ」と「電子タバコ」の違い

予測の前提として、まずはこの2つの違いを整理します。
似ていますが全く異なるものです。
私は非喫煙者なのですが、この2つに関して違いが判らなかったため、同じ状況の方向けの説明内容です。

◇加熱式タバコ
・たばこ葉を加熱して吸う。たばこ税がかかる。(今回の値上げ対象)

◇電子タバコ(VAPE)
・リキッド(液体)を気化させて吸う。たばこ税がかからない。(今回の値上げ対象外)今回、増税対象となるのは「加熱式タバコ」です。

値上げはいつ起きていた?加熱式タバコの値上げの流れ

加熱式タバコはどのくらい価格上昇しているのか。

2019年から代表ブランドA~Cを例に調査・確認しました。(下図)

こちらの図を見ると、2025年以降はメーカー主導の値上げも重なっていることが分かります。

図1:加熱式タバコ主要ブランドの値上げ推移(2019年~)

今回の値上げは増税額が大きいため、メーカー側での吸収が難しく、一部のブランド商品は600円台を超え、その他の主要銘柄も500円後半へと上昇予定です。

 さらに、2026年10月には防衛増税の第2弾(30円-50円幅)も予定されており、多くの銘柄が580円~600円台に突入するのではないかと予想されます。

値上げ時の駆け込み需要は?

「駆け込み需要」はあるのか? 

結論から言うと、大きな駆け込み需要は確認できませんでした。 

Nint ECommerceで動向を見てみましょう。

図2:加熱式タバコ市場の売上推移(月次) ※出典:Nint ECommerce(推計値)

2019年から2022年の段階的増税、2025年のメーカー値上げ。

どのタイミングでも、値上げ前月に売上が急増するような動き(駆け込み)は見られません。

「愛煙家は、値上げがあっても駆け込まず、価格よりも『愛用している体験』を優先して買い続ける」

そういう傾向が読み取れる内容かもしれません。

売上横ばいの加熱式タバコ、その実態は?

駆け込み需要がなく、値上げ後も売上は落ちていない。一見「影響なし」に見えますが、実態は違います。

単価が上がっているのに売上金額が変わらないということは、販売数量は確実に減っていると考えられます。 

「禁煙」まではいかなくても、1日1箱から2日で1箱へ。

加熱式タバコジャンル内では、「減煙」が静かに進んでいる可能性があります。

愛煙家はどこへ?急上昇する電子タバコ

加熱式タバコが数量減となる一方、急成長しているのが電子タバコ(VAPE)市場です。

図3:電子タバコ市場の売上推移(月次) ※出典:Nint ECommerce(推計値)

図を見ると、電子タバコ市場は2024年に入り急激に上昇していることが分かります。
加熱式タバコ市場も上昇する一方、電子タバコも上昇する流れが2024年。2025年はその動きが落ち着く流れも「加熱式タバコ市場」と類似しています。

なぜ、電子タバコ市場が増加しているのか?いくつか理由が考えられますが、個人的には「加熱式タバコ市場」からの流入が増加したのではないかと予想します。

電子タバコは、加熱式タバコに比べ、ランニングコストが圧倒的に良い特徴があります。

厚生労働省の基準(リキッド1ml=たばこ約10本分)をもとに、同じ「タバコ300本分」で比較すると以下のようになります。

  • 加熱式タバコ(15箱※1箱20本入想定):約9,300円(620円(1箱)×15箱)
  • 電子タバコ(30mlリキッド ※ニコチンなし):約1,500円

電子タバコならコストは約6分の1。 本体費用はかかりますが、日々のランニングコストで見ると差は歴然です。 「吸うのをやめる」のではなく、「コストを下げて同量を吸い続ける」選択肢として選ばれていると考えられます。

※参考:厚生労働省「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1462&dataType=1&pageNo=2

値上げによる「やめる」市場への影響は?

値上げによる「やめる」の動きはどうなっているのでしょうか?同様に禁煙サポート用品市場の動向も確認しましょう。

図4:禁煙サポート用品市場の売上推移(月次) ※出典:Nint ECommerce(推計値)
禁煙サポート用品での注目点は「2025年」の動向ではないでしょうか。
「加熱式タバコ市場」と「電子タバコ市場」が苦戦するなか、「禁煙サポート用品市場」は堅調に推移しています。
これは非常に興味深い内容であり、「継続して吸う」人が「減らす/やめる」方向にシフトした可能性を示唆する可能性があります。
ここで気になってくるのは「禁煙サポート用品」の用途として「減らす/やめる」の商品どちらが好まれているか、ではないでしょうか。今回、禁煙サポート用品を「用途」の軸で「減らす」と「やめる」に分離しました。
禁煙サポート商品には「用途」を軸に分類すると「減らす」と「やめる」の2つに分類できます。


◇「減らす」系
ニコチンゼロスティック等。「まずニコチンなしに置き換えてみよう」という方向け。


◇「やめる」系
禁煙パッチ・ガム等。医薬品で依存を治療する「本気でやめたい」方向け。


年間の売れ筋商品TOP300を「減らす」と「やめる」に分類し、その売上構成比を確認しました。

図5:禁煙サポート用品 売れ筋の構成比推移(「減らす」系 vs「やめる」系)
※出典:Nint ECommerce(推計値)

  • 2022年:「減らす」系 約85%
  • 2025年:「やめる」系 約55%

2022年は「減らす」系が圧倒的でしたが、3年後には「やめる」系が過半数を超えました。 喫煙家のニーズは、「減らす」から「やめる」へ変化しています。

なぜシフトしたのか?消費者心理の変化

理由は3つ考えられます。

  1. 累積的な「値上げ疲れ」
    長年続く増税に加え、メーカー値上げも重なり「もう限界」と感じる人が増えた。
  2. 物価高による「嗜好品」節約志向
    生活費が上がる中、年間20万円超のタバコ代が削減対象になった。

将来不安による購買意欲の低下
2026年以降も増税が続くと報道され、「ずっと上がり続ける」と分かった瞬間に禁煙を決意した。

「600円の壁」が転換点になる

今回の値上げが「今まで」と異なるとお伝えしましたが、その理由は「500円台」を越える商品が本格的に登場し始める点が挙げられます。

マイナビニュースの調査(2018年)によると、約4割の喫煙者が「500円〜700円」を禁煙の閾値として考えています。 2026年4月、大手メーカーの代表銘柄は620円に突入します。 この「ワンコイン※500円台超え」、「600円突破」がこれまで動かなかった愛煙家を動かす転換点になる可能性があります。この心理的な価格帯が多くの方が600円台ではないか。と考える傾向があるため今回のタバコ税の増税も、すべて商品価格に反映されていないという背景があると推察しています。

※参考:
マイナビニュース「タバコの値段、いくらになったら禁煙する? – 300名に聞いた」(2018/02/13) 

https://news.mynavi.jp/article/20180213-584063

 マイナビニュース:「たばこの値上げ、喫煙者が「禁煙」しようと思うのはいくらから?」(2021/09/01)

  https://news.mynavi.jp/article/20210901-1961841/

結局どうなる?2026年4月以降の予測

ここまで分析してきた私の予測は3つです。

1. 加熱式タバコは今回の「値上げ」も大きな影響を受けない 

コアなファン(愛用者)は値上げがあっても吸い続けます。駆け込み需要も急落も起きない。「吸う人は吸う」傾向は変わりませんが、吸う量を減らす動きは進むのではないかと考えます。

2. 電子タバコへのシフトは加速する 

「吸いたいけどコストは抑えたい」層は、たばこ税のかからない電子タバコへ。今回の「600円超え」で、この流れが一部加速するのではないかと推察します。

3. 禁煙サポート用品は「減らす」系が増える可能性がある 

ここ数年は「やめる」系へシフトしていましたが、今回の600円突破で新たに禁煙を意識し始める層が生まれます。 いきなりやめるのはハードルが高いため、まずはニコチンゼロスティック等で「減らす」ことから始める層が一時的に増えると推察します。

600円の壁への「挑戦」が、市場の新たなスタンダードを作る

今回の値上げは、単なる価格改定にとどまらず、過去の傾向とは異なる動きを生む転換点になると予想されます。

消費者の心理的ハードルである「600円の壁」。 この壁を前にして、電子タバコへのシフトや、禁煙(減らす・やめる)といった動きが加速することは、ある種自然な流れなのかもしれません。

しかし、かつてラーメン業界で「1000円の壁」が話題になり、今ではそれが受け入れられつつあるように、この「一定の価格」を最初に超え、市場に定着させていく挑戦は、業界の未来にとって必要なプロセスでもあります 。

厳しい逆風を理解したうえで、あえて「600円台」という未踏の領域に踏み込んだ大手メーカーの決断。 その動きは、単なるシェア争いを超えて、今後の加熱式タバコ市場がどう変化していくのかを占う、非常に重要な指標(ポイント)になるはずです 。

この一歩が市場にどう受け入れられていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

競合の動きや消費者の志向変化に先んじるためには、精密なデータ分析が欠かせません。

「Nint ECommerce」では、大手ECモールの詳細な販売実績やカテゴリごとのトレンドを直感的に把握することが可能です。

また、膨大なデータを分析して要点を整理する「AIインサイトレポート」を利用することで、複雑な市場動向の裏側にある勝機を迅速に見つけ出し、次の一手を確信を持って打つことが可能になります。

データだけでなく即戦力のEC人材をお探しの場合は、『EC Talent』にご相談ください。

調査概要

  • 対象期間:2019年〜2026年
  • データソース:Nint ECommerce
  • 対象カテゴリ:電子タバコ

この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

note:https://note.com/nint_ecommerce

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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