2025年8〜10月スポーツ用品市場の販売データから読み解く変化
スポーツ用品市場は、健康志向の高まりやスポーツ観戦の盛り上がりに加えて、日常の通勤・通学やレジャーシーンにも自然に入り込む分野です。競技利用だけでなく、学校行事や部活動、軽いランニングまで幅広い用途に利用されるため、季節やイベントの影響が出やすい構造があります。
本記事では、大手ECモールの販売データをもとに、2025年8〜10月のスポーツ用品市場の変化を整理しました。前年同期間との比較を通じて、市場規模の推移やカテゴリ別の特徴、価格帯構造から見えるポイントをまとめます。
※本記事は大手ECサイトにおけるNint ECommerceデータを元に執筆しています。

目次
スポーツ用品市場の規模
2025年8〜10月のスポーツ用品市場は、3カ月合計販売金額(GMV)が約34.3億円、販売数量が約122.6万点となりました。平均販売価格(以下、ASP)は2,799円で、前年から5.2%上昇しています。

スポーツ用品市場のカテゴリ別売上構成比と成長要因
カテゴリ別の売上構成を比較し、成長要因を読み解きます。
カテゴリ別売上構成比

スポーツケア用品とスポーツ用インナーの2カテゴリで市場の約4割を占めており、とくにスポーツケア用品は、数量・売上とも大きく伸びています。
カテゴリ別の成長要因
スポーツケア用品は、固定力やサポート性の高いモデルだけでなく、通気性や軽量性を重視した着用しやすい商品が増えており、日常的なトレーニングや部活動でも取り入れられやすくなっています。スポーツ用インナーは前年とほぼ横ばいの構成比となっており、季節の変わり目には特に売上を伸ばしやすい傾向があります。
一方で、ジャージは前年と比べて構成比が下がりました。上位モデルの比重が高まり、単価は維持しているものの、需要のピークが一巡したことや、秋冬のアウターとの選択が分かれる時期だったことが影響していると見られます。スポーツバッグはほぼ横ばい、スポーツサングラスは数量の伸びが大きく、ランニングや自転車、観戦用途など軽いスポーツシーンで利用が広がっている印象があります。
価格帯別の構成と販売戦略
ここでは市場全体を価格帯別データに分けて整理し、販売戦略を考察します。
価格帯別の販売構成について

2000〜9999円の中価格帯が全体の約55%を占め、滑り止め・携帯氷嚢・高機能フェイスカバー・リカバリーウェアなど機能性アイテムが中心です。
1,999円以下はフェイスカバーやスポーツブラなどの小物、1万円以上は高機能タイツや医療用サポーター、スポーツネックレスやスマートウォッチ・GPS距離計といった高付加価値アイテムが並びました。
価格帯別の販売戦略について
■ 0〜1,999円帯
フェイスカバーやテーピング、冷却タオルなど「季節の不快や痛みを緩和する消耗・小物」が主力。カテゴリの「入口商品」として、圧倒的な回転率とレビュー蓄積で露出を最大化してください。商品名は「UVカット」「息苦しくない」「冷感」など、直感的な機能ワードを軸に検索対策を行うことがおすすめです。
■ 2,000〜3,999円帯
滑り止めパウダー、氷嚢、高機能スポブラなど「特定の競技課題や環境ストレスを解消するツール」が中心。ここは「(スポーツなどの)プレーの質を落とさないための課題解決商品が揃う価格帯」という位置づけです。手汗対策、アイシング、揺れ防止など、具体的な悩み別に商品ページを構成し、解決策として具体的なイメージを提示してください。
■ 4,000〜9,999円帯
リカバリーウェア(シャツ)、リカバリーサンダル、高機能膝サポーターなど「身体ケアへの初期投資商材」が増える価格帯です。「疲労回復と怪我予防の意識を高める商品が揃う価格帯」という位置づけです。エントリーモデルの位置づけ商品が増えるため、上位帯(スパッツ等)へのステップアップとしての役割も担わせるとよいでしょう。
■ 10,000〜20,000円帯
メディカル・高機能ブランド帯 医療用サポーター、高機能コンプレッションタイツ、磁気ネックレスなどが中心の価格帯です。安価なサポーターとの違いとして、耐久性・医学的設計・特許技術を言語化し訴求してください。
■ 20,001円〜帯
体幹バランサー、スマートウォッチ、GPS距離計など数値管理と身体能力向上への投資商品が上位を独占。プロアスリートの使用実績や、デバイスの計測精度・バッテリー性能などのスペックを比較表で明示し、「なぜこの価格か」の納得感が購入に直結しやすくなります。
(参考)ジャンル別価格分布
Nint ECommerceを使った価格帯別売上規模推移
市場の見える化を実現するツール「Nint ECommerce」でTOP5メーカーの価格別売上構成比を見ると以下のように確認できます。
※ご契約プランによって確認可能
棒グラフの太さ:売上構成比
棒グラフの縦軸:TOP5メーカーの構成比

横軸:価格帯で分けており、太さが構成比
縦軸:該当価格帯におけるメーカーシェア率
出典:Nint ECommerce
展望予測とスポーツ用品市場を読み解くヒント
季節的行事などの影響を受けやすいスポーツ用品市場。本章では展望と市場を読み解くヒントをご紹介します。
今後の展望
スポーツ用品市場は、季節・イベント・学校行事などの影響を同時に受けるため、短期的な変化が起こりやすい分野です。2025年8〜10月のデータを見ると、ケア用品やインナー、小物など、日常的な運動習慣と結びつきやすいカテゴリが市場を支えています。必要なものを必要なタイミングで買い足す行動が多いため、今年だけの特需というより、継続的な需要として底堅い動きが続いていくと考えられます。
一方で、ジャージやウェアなどは、デザインの流行や気温変化など外部要因の影響を受けやすいカテゴリです。競合状況や季節性を踏まえ、どのタイミングでどの価格帯のラインアップを厚くするかが、今後の売場づくりのポイントになりそうです。
スポーツ用品市場を読み解くヒントは「Nint ECommerce」に!
スポーツ用品市場の状況を正確に捉えるには、カテゴリ別・価格帯別・ブランド別で動きを比較できるデータが必要です。Nint ECommerceでは、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大モールの販売データをもとに、売上や販売数量、平均販売価格、シェアを同じ指標で比較することができます。
スポーツケア用品やインナー、バッグ、サングラスなどのカテゴリ別の推移だけでなく、価格帯別の構成比や主要ブランドのポジション、自社と競合の違いも把握できるため、「市場全体がどう動いているのか」を理解したいときに大きな助けになります。

また、スポーツ用品のようにカテゴリが細かく、価格帯の幅が広い領域では、すべての変化を手作業で追いかけるのは負担が大きくなりがちです。Nintの「AIインサイトレポート」では、カテゴリ別や価格帯別の変化、伸びているカテゴリや価格帯、競合が強い領域などを抽出できます。
とくにスポーツ用品市場では、「どの価格帯のケア用品が伸びているのか」「インナーはどのASP帯で構成比が動いているのか」など、日常業務では分析しきれないポイントも短時間で把握できるのが特徴です。

調査概要
- 対象期間:2025年8月1日〜2025年10月31日
- データソース:Nint ECommerce
- 対象カテゴリ:スポーツウェア・アクセサリー
この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。
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【出典:「2025年8〜10月スポーツ用品市場の販売データから読み解く変化」(2025年11月27日公開)】
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