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【2025年8〜10月】靴市場レポート|高付加価値品へのシフトが進む

#市場規模 #マーケティング #販促ノウハウ #ECデータ

2025年8月から10月における靴市場は、販売数量の大幅な減少により市場規模が縮小しました。一方で、平均販売価格(ASP)は上昇傾向にあり、消費者の需要が低価格帯の量販品から、機能性やブランド力を重視した高単価商品へとシフトしている様子がうかがえます。

本レポートでは、大手ECサイトにおけるNint ECommerceのデータをもとに、最新の市場動向を解説します。

靴の市場規模

2025年8月〜10月の期間における靴市場(靴ジャンル)の市場規模は以下の通りです。前年の需要からの反動減に加え、物価上昇に伴う買い控えの影響が見られますが、単価アップにより売上金額の減少幅は販売数量ほど大きくありません。

  • 3ヵ月合計販売金額(GMV)約199億円(前年同期比 ▲7.2%)
  • 販売数量 約320万個(前年同期比 ▲12.7%)
  • 平均販売価格(ASP)約6,230円(前年同期比 +6.2%)

全体として、販売数量が二桁減と苦戦する一方で、平均単価は前年比+6.2%と明確に上昇しています。これは、安価な商品の回転数が落ちる一方で、秋冬シーズンに向けたブーツや高機能スニーカーなど、単価の高いアイテムが底堅く推移していることを示唆しています。

靴市場のカテゴリ別売上構成比とトレンド

本章ではカテゴリ別の売上構成を比較し、トレンドを読み解きます。

カテゴリ別売上構成比(上位カテゴリ)

市場全体が縮小する中、カテゴリ別に見ると「レディース靴」が比較的健闘しており、市場シェアの過半数を維持しています。一方、「メンズ靴」は二桁のマイナス成長となり、市場全体の押し下げ要因となっています。

  • レディース靴

構成比 53.28%(前年同期比 ▲4.8%)| 平均販売価格(ASP) 約6,607円

  • メンズ靴

構成比 42.01%(前年同期比 ▲10.3%)| 平均販売価格(ASP) 約9,160円

  • 靴ケア用品・アクセサリー

構成比 4.50%(前年同期比 ▲5.8%)| 平均販売価格(ASP) 約1,354円

製品開発のトレンド

主力であるレディース靴・メンズ靴ともに単価が上昇傾向にあります。特に市場を牽引するレディースカテゴリでは、デザイン性だけでなく、長時間履いても疲れにくい機能性インソールや、悪天候に対応した防水・撥水素材など、実用的な付加価値を持つ製品が選ばれる傾向にあります。また、既存の靴を長く履くための「ケア用品」も一定のシェアを維持しており、メンテナンス需要への対応も製品開発のポイントとなります。

靴市場の価格帯別販売構成と販売戦略

ここでは市場全体を価格帯別データに分けて整理し、販売戦略を考察します。

価格帯別の販売構成について

価格帯別の動向を見ると、販売数量ベースでは低価格帯が市場を支えていますが、売上金額ベースでは1万円を超える高価格帯が最大のシェアを占めています。この「数量の低価格帯」と「売上の高価格帯」という二極化構造が鮮明です。

低価格帯(〜5,799円)売上構成比:約28%

販売数量の約65%を占めるボリュームゾーンです。サンダルや日常履きのスニーカー、上履きなどの実用靴が中心ですが、単価上昇の影響でこの層のシェアは縮小傾向にあります。

中価格帯(5,800円〜11,599円)売上構成比:約27%

一般的なブランドスニーカーやパンプスが含まれるゾーンです。価格と品質のバランスを重視する層に支持されています。

高価格帯(11,600円〜)売上構成比:約45%

有名ブランドのスニーカーやブーツ、本格的な革靴が含まれます。販売数量シェアは約15%にとどまりますが、市場売上の半数近くを創出する重要収益源となっています。

価格帯別の販売戦略について

低価格帯

競争が激しいこの価格帯では、送料ラインを意識したまとめ買い(ソックスやケア用品との合わせ買い)を促進し、客単価を引き上げる施策が有効です。

中価格帯

機能性や着用シーン(通勤、ランニング、雨天など)を具体的に提案し、「失敗したくない」という消費者の心理に応えるコンテンツ強化がコンバージョン向上の鍵となります。

高価格帯

ブランド価値や素材のこだわりを伝えるリッチな商品ページ作りが大切です。また、サイズ交換無料サービスや詳細なサイズガイドの提供など、高額品購入のハードルを下げる安心感の醸成が求められます。

(参考)ジャンル別価格分布

Nint ECommerceを使った価格帯別売上規模推移
市場の見える化を実現するツール「Nint ECommerce」でTOP5メーカーの価格別売上構成比を見ると以下のように確認できます。
※ご契約プランによって確認可能

横軸:価格帯で分けており、太さが構成比
縦軸:該当価格帯におけるメーカーシェア率
出典:Nint ECommerce

展望予測と靴市場を読み解くヒント

本章では展望と市場を読み解くヒントをご紹介します。

今後の展望

短期的には、11月以降の本格的な冬到来に向け、防寒ブーツや厚手のシューズの需要がピークを迎えます。市場全体のASP上昇トレンドは続くと予測され、単に安いだけでなく「価格以上の価値」を感じさせる商品が勝ち筋となるでしょう。中長期的には、販売数量の減少を補うため、リピート率の高い消耗品(インソールやケア用品)のクロスセルや、高単価なロイヤルカスタマーの育成がより重要になります。

市場を読み解くヒントは「Nint ECommerce」!

詳細な靴市場の分析や、競合ブランドの動向把握には、ECデータ分析ツール「Nint ECommerce」が役立ちます。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大モールのデータを活用し、自社のポジショニング確認や次なる一手にご活用ください。

また、NintではAIを活用して市場トレンドをいち早くキャッチできる「AIインサイトレポート」も提供しており、変化の速いEC市場において、迅速かつ精度の高い意思決定をサポートします。

調査概要

  • 対象期間:2025年8月1日〜2025年10月31日
  • データソース:Nint ECommerce
  • 対象カテゴリ:靴

この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト

株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。

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【出典:「【2025年8〜10月】靴市場レポート|高付加価値品へのシフトが進む」(2025年12月5日公開)】
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