【2025年8〜10月】生活家電市場|高単価な「洗濯乾燥機」が伸長
2025年8月から10月における生活家電市場は、前年同期と比較して市場規模全体の縮小が見られました。一方で、洗濯機カテゴリにおいては単機能製品が苦戦する中、高単価な洗濯乾燥機が大きく売上を伸ばしており、家事の時短や効率化を求める「タイパ(タイムパフォーマンス)」需要の定着がうかがえます。
本レポートでは、大手ECサイトにおけるNint ECommerceのデータをもとに、最新の市場動向を解説します。

目次
生活家電の市場規模
2025年8月〜10月の期間における生活家電市場の市場規模は以下の通りです。物価高による買い控えや耐久消費財の買い替えサイクルの影響を受け、全体としては前年を下回る結果となりました。
- 3ヵ月合計販売金額(GMV) 約143億円(前年同期比 ▲5.6%)
- 販売数量 約134万個(前年同期比 ▲5.6%)
- 平均単価(ASP) 約10,684円(前年同期比 0.0%)
市場全体では、売上金額・販売数量ともに5%台の減少となりました。平均単価はほぼ横ばいで推移していますが、これは低価格な消耗品・アクセサリー類の構成比維持と、一部の高付加価値製品の単価上昇が相殺し合っているためと考えられます。
生活家電市場のカテゴリ別売上構成比とトレンド
本章ではカテゴリ別の売上構成を比較し、トレンドを読み解きます。
カテゴリ別売上構成比(上位カテゴリ)
市場の過半数を占める「掃除機・クリーナー」が堅調なシェアを維持する一方で、洗濯機関連のカテゴリでは明確な明暗が分かれています。
- 掃除機・クリーナー
構成比 53.5%(前年同期比 ▲3.8%)| 平均販売価格 約19,277円
- 洗濯機
構成比 12.2%(前年同期比 ▲18.1%)| 平均販売価格 約31,618円
- 生活家電用アクセサリー・部品
構成比 10.9%(前年同期比 ▲2.8%)| 平均販売価格 約2,300円
- 洗濯乾燥機
構成比 6.6%(前年同期比 +24.1%)| 平均販売価格 約145,406円
- ミシン
構成比 4.8%(前年同期比 ▲5.8%)| 平均販売価格 約26,896円
製品開発のトレンド
大きなトピックは「洗濯乾燥機」の2桁成長です。単機能の「洗濯機」が売上を落とす一方で、洗濯から乾燥までを一貫して行える高機能モデルへのシフトが加速しています。平均単価が約14.5万円と高額であるにもかかわらず需要が拡大しており、消費者が「価格」よりも「家事負担の軽減」という価値に投資している様子が見て取れます。また、主力カテゴリの掃除機では、コードレスやロボット掃除機などの利便性が引き続き支持されています。
生活家電市場の価格帯別販売構成と販売戦略
ここでは市場全体を価格帯別データに分けて整理し、販売戦略を考察します。
価格帯別の販売構成について
価格帯別に見ると、手頃な消耗品や小型家電が数量を支える一方で、売上金額の面では高価格帯製品の貢献度が上昇しています。
低価格帯(〜約2.9万円) 売上構成比:約43%
消耗品やアクセサリー、単機能の掃除機やアイロンなどが中心です。販売数量においては市場の大部分を占めるボリュームゾーンであり、特に新生活需要以外の時期でも安定した動きを見せます。
中価格帯(約2.9万円〜約7.2万円)売上構成比:約32%
高機能なコードレス掃除機や、スタンダードモデルの洗濯機が含まれます。性能と価格のバランスを重視する層に支持されていますが、一部需要が高価格帯へシフトしている傾向も見られます。
高価格帯(約7.3万円〜)売上構成比:約25%
ドラム式洗濯乾燥機やハイエンドのロボット掃除機などが該当します。特に14万円を超える超高価格帯の製品群が、洗濯乾燥機の好調に伴い存在感を強めています。
価格帯別の販売戦略について
低価格帯
コモディティ化が進む領域であるため、アクセサリーや消耗品のまとめ買い訴求、あるいは小型家電におけるデザイン性や「一点突破」の機能性をアピールし、衝動買いを誘発するアプローチが有効です。
中価格帯
機能比較が激しいこのゾーンでは、特定の機能(吸引力、静音性など)における優位性を明確にする必要があります。また、型落ちモデルのアウトレット訴求なども、価格に敏感な層を取り込む鍵となります。
高価格帯
「時間を買う」というベネフィットを具体的に提示することが重要です。洗濯乾燥機であれば「干す手間の削減」、掃除機であれば「自動化による自由時間」など、製品スペックそのものより、ライフスタイルの変化を訴求するストーリー作りが購買の決め手となります。
(参考)ジャンル別価格分布
Nint ECommerceを使った価格帯別売上規模推移
市場の見える化を実現するツール「Nint ECommerce」でTOP5メーカーの価格別売上構成比を見ると以下のように確認できます。
※ご契約プランによって確認可能

横軸:価格帯で分けており、太さが構成比
縦軸:該当価格帯におけるメーカーシェア率
出典:Nint ECommerce
展望予測と生活家電市場を読み解くヒント
本章では展望と市場を読み解くヒントをご紹介します。
今後の展望
短期的には、年末の大掃除シーズンに向け、掃除機やスチームクリーナー、洗浄機などの需要が大きくなると予測されます。また、冬物衣類のケア需要として、毛玉取り器や衣類スチーマーの動きも活発化するでしょう。中期的には、共働き世帯の増加を背景に、洗濯乾燥機に代表される「高単価・時短家電」へのシフトは不可逆的なトレンドとなり、メーカー各社は高付加価値製品の開発競争をさらに加速させると見込まれます。
市場を読み解くヒントは「Nint ECommerce」!
詳細な生活家電市場の分析や、競合各社の動向把握には、ECデータ分析ツール「Nint ECommerce」が役立ちます。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大モールのデータを活用し、自社のポジショニング確認や次なる一手にご活用ください。

また、NintではAIを活用して市場トレンドをいち早くキャッチできる「AIインサイトレポート」も提供しており、変化の速いEC市場において、迅速かつ精度の高い意思決定をサポートします。

調査概要
- 対象期間:2025年8月1日〜2025年10月31日
- データソース:Nint ECommerce
- 対象カテゴリ:生活家電
この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。
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