楽天で急に売れなくなった…原因不明の売上急落を回復に導く3ステップ
ある日突然、これまで順調だった店舗の楽天での売上が突如として売上が急落する……。
そんな経験をしたことのある楽天店舗の店長は少なくないのではないでしょうか。RMSのデータを眺めても原因が分からず、「どうしたら売上が回復するのだろう」と悩む方も多いはずです。
モール型ECでは、競合店舗やプラットフォーム独自のアルゴリズムによって、急な売上の変動は避けられません。しかし、「楽天で急に売れなくなった」状況は、ただの危機ではなく、自社店舗や自社商品をより強くするチャンスでもあります。
本記事では、ECコンサルタントの視点から、この状況を乗り越えるための体系的なアプローチ3つのステップで解説します。
- 現状分析: データに基づき、売上急落の根本原因を特定する
- 短期・中期でのアクションプラン策定:即効性の高い施策で 売上減少を食い止め、日次単位でKPIをトラッキングする
- 長期的な競争優位性の構築: より強靭で収益性の高い店舗へと進化させる
目次
STEP1:売上の因数分解と各指標の下落要因の特定
売上急落という事態に直面した際、一番のNG行為は直感的に「最近、競合商品が増えてきたから…」や「最近、広告費を抑えていたから…」と結論付けることです。まず行うべきは実際のデータに基づいた客観的な原因分析です。売上は常に「売上 = アクセス人数 × 転換率 × 客単価」という方程式で成り立っています 。売上の減少は、必ずこの3つの指標のいずれか、あるいは複数の悪化に起因します。この原則に基づき、体系的に問題を切り分けることが、解決への第一歩となります。
1-1.RMSで売上の方程式を分解する
まず、RMSのデータから当月と前月、前年同月を比較します。
「アクセス人数が30%減少しているが、転換率は維持できている」など、どの指標が悪化したのかを客観的に特定します。
ポイントは、各指標が相互に影響し合うということ。
たとえば主要キーワードでの検索順位が下がるとアクセス数が減り、結果的にCVRも悪化します。
しかし、影響はそれだけにとどまりません。これまで獲得できていた購買意欲の高いユーザーが来なくなることで、店舗全体への流入の質が低下し、結果として「転換率」も悪化することがあります。したがって、最初にどの指標が悪化したのか、根本原因はどこにあるのかを深掘りすることが不可欠です。基本的に、モール内での販売はモール内の検索画面やランキングなどの仕組みによって、売れる商品の露出が増えて、より売れるようになる構造になっています。ですので、売上不調のフェーズにおいては、売上がどんどん下がっていく負のサイクルを正のサイクルに戻すことが重要です。
1-2. アクセス人数が減少した原因を探る
アクセス数の減少は大きく3つに分類できます。
①検索順位の低下
商材ジャンルにもよりますが、店舗への流入の大部分を占めるのが楽天サーチ経由であるため、検索順位の変動は売上に直結します。主要商品の流入キーワードや検索順位を確認する習慣が重要です。理想は毎日ですが、最低限週1回は確認しましょう。順位が急落していた場合、以下の原因が考えられます。
- 楽天のアルゴリズム変更への未対応: 楽天市場の検索アルゴリズムは常にアップデートされており変動します。特に近年では、商品のバリエーションを1ページに統合する「SKUプロジェクト」への対応や、「最強翌日配送」の導入など大きな変更がありました。これらの楽天市場の重要プロジェクトに対応できていない場合、相対的に検索順位が下落している可能性があります。
- 競合の影響: 競合店舗がSEO対策やRPP広告を強化したり、より魅力的な新商品を投入したり、高評価レビューを積み重ねたりすることで、相対的に自店舗の順位が押し下げられることがあります。
- 自店舗の問題: 低評価レビューの増加や、売れ筋商品、売れ筋SKUの在庫切れは、販売実績(売上件数や売上額)の低下に直結し、これが検索順位低下に繋がります。
②広告効果の悪化
RPP広告などの運用型広告は、検索流入を支える重要な柱です。RMSのパフォーマンスレポートでクリック数、CTR、CPC、ROASを確認し、以下をチェックしましょう。
- 予算切れによる広告停止が起きていないか: 月末やイベント期間中に、設定した広告予算を想定より早く消化してしまい、広告が停止しているケースは多いです 。
- CPCの高騰による露出減: 楽天スーパーSALEなどのイベント期間中は、多くの店舗が入札単価を上げるため、これまでと同じCPCでは広告が表示されにくくなります。
- CTR悪化による入札単価上昇:イベント以外の平常時においてはCTRの数値が悪化していないかを確認しましょう。CTRの悪化により必要な入札単価の高騰に繋がります。
その他のアクセス減少要因
- 売れ筋商品の欠品: 売れ筋商品は店舗全体への入口商品として機能します。したがって売れ筋商品が在庫切れになると、その商品自体の売上がなくなるだけでなく、店舗全体への入口が失われ、回遊していたユーザーのアクセスも途絶えてしまいます。
- 既存ユーザーの減少:商材自体のマーケットニーズの低下や競合の代替品登場により、自社商材を購入ユーザーが減少することがあります。
1-3. 転換率が低下した原因を探る
アクセス数に大きな変化はないものの売上が落ちている場合、転換率(CVR)の低下が原因です。これは、ページを訪れたユーザーが購入に至らない理由が生まれたことを意味します。
競合の動向変化
ユーザーは常に複数の商品を比較検討しています 。主要な競合店舗のページを定期的にチェックし、以下の変化がないか少なくとも週に1回は確認しましょう 。
- 価格・オファー: 競合が値下げを行ったり、よりお得なクーポンやポイント変倍を行っていないか確認します。1個あたり単価やグラム当たり単価など最小単位に割り戻した上で、ポイントやクーポンなど反映後の最終価格ベースでの比較を行いましょう。また、イベント時に大きな販促施策を打つ店舗さんも多いので、イベント時と平常時で分けて分析を行いましょう。
- 商品ページの魅力度: 競合が第一画像やLPを刷新したり、より魅力的で説得力のある商品説明を追加したりすることで、相対的に自店舗のページが見劣りしている可能性があります。第一画像やLPに必要な要素を洗い出した上で、要素毎に徹底比較することが重要です。
- 配送サービス: 競合が「最強翌日配送」や「39ショップ」ラベルを獲得したりすると、配送スピードやを重視するユーザーがそちらに流れる可能性があります。
レビュー・評価の悪化
楽天において、レビューはユーザーの購買決定に極めて大きな影響を与えます。特に、4以下の累計レビュー点数や商品ページの上部に表示される低評価レビューは転換率を著しく低下させる要因となります 。
- 低評価レビューの新規投稿: 新たに星1や星2のレビューが投稿されていないか確認します。
- レビューへの未対応: 低評価レビューに対して真摯な返信がないと、他のユーザーに「顧客対応が悪い店舗」という印象を与えてしまいます。
商品ページの自己診断
顧客の視点で自店舗の商品ページを客観的に見直すことも重要です。
- 情報不足: サイズや素材、利用シーンなど、顧客が購入を決めるために必要な情報が不足していないか確認します 。
- 「今買う理由」の欠如: 以前実施していた期間限定の割引やクーポンが終了し、ユーザーが「今すぐ買うべき理由」を失っている可能性があります 。
STEP2:短期的に売上を回復させる応急アクション
売上低下原因の仮説が立ったら、次に行うのは被害を最小化のための応急処置です。ここでは、即効性が高く、すぐに実行できるアクションプランを原因別に解説します。
2-1. アクセス数が減少した場合:SEO & 広告改善
アクセス数の急減は、店舗への入口が閉ざされている状態です。一刻も早く入口を再開通させる必要があります。
RPP広告の再稼働と最適化
主力商品の広告が停止している場合、少額でもすぐに予算を追加して再開することが最優先です。広告はアクセスや売上実績を最も早く回復させる手段です。パフォーマンスレポートを確認し、ROASが著しく低い商品は一時的に「除外商品」に設定し、成果の出ている商品に予算を集中させましょう。また、RPP広告経由の売上実績が大きいもののROASが高くない商品はサムネイルやキャッチコピーなどのCTR改善を通じて、CPC入札単価を下げてROASの改善を狙いましょう。
即効性のあるSEO応急処置
検索順位が急落した商品に対しては商品名の最適化を行います。これは費用をかけずに即時実施できる最も現実的なSEO対策の一つです。ユーザーの検索意図を反映した主要キーワードを商品名の冒頭に配置し、「期間限定」「ポイント10倍」「送料無料」といったクリックを誘う文言を追加したり、魅力的な第一画像を作成することでCTRの改善を図ります。CTRの改善は、自然検索順位の評価にも好影響を与えます。また、検索上位商品の商品名と比較して、漏れているキーワードを自社商品名にも反映しましょう。
2-2. 転換率が低下した場合:ロイヤリティとインセンティブの再構築
ユーザーは訪れているのに購入してくれない状況は自店舗や自店舗商材へのロイヤリティの低下、または相対的な購入インセンティブの不足が原因です。
セールやクーポン・ポイント施策
競合の値下げやキャンペーンに対抗するため、個別商品やイベントや週末限定で競合商品より魅力的なオファーを出して「今買う理由」を創出します。この施策は、購入を迷っているユーザーの背中を押す最も直接的な方法ですが、中長期での需要の先食いや安売り感に繋がるので割引率が高過ぎる割引施策や高頻度での実施は極力避けることをおすすめします。また、メルマガやLINE登録者限定での案内や先着〇〇名限定クーポンなどで公開範囲や使用範囲を制限することで、安売り感を最小限に留めることが出来ます。
低評価レビューへの対応
新規の低評価レビューには、発見後早期に返信します。低評価レビューはすべてのユーザーに対して公開されていて、購入率の低下に直結します。謝罪や問題の原因を説明し、個別に対応する旨を丁寧に記載して購入者に向き合う誠実な姿勢を示すことでレビューを見た検討ユーザーの不安は和らぎます。
商品ページ(LP)の改善
売上の9割近くはスマートフォンです。まずはスマートフォンでの「ファーストビュー」を改善します。メイン画像が魅力的か、各要素毎に情報の過不足がないかや競合と比較して魅力的かを確認し、オファー情報を目立つ位置に配置しましょう 。ユーザーがページを開いた瞬間に「信頼感」と「お得感」を伝えることが重要です。
STEP3:長期的な売上回復を支える店舗強化戦略
応急処置で売上低下を最小限に抑えたら、次に必要なのは継続的な売上拡大を支える本質的な店舗強化戦略の実践です。
強い店舗を作る:持続的成長を支える3つの柱
継続的な売上拡大を築くためには、「安定したアクセス確保」「高い転換率」「高い客単価」の3つをバランス良く育てていく必要があります。
第1の柱:継続的な新規ユーザーの獲得と既存顧客のリテンション
安定したアクセス確保のためには「継続的な新規ユーザーの獲得」と「既存顧客のリテンション」が必要です。ECの世界では、店舗とユーザーとの出会いは商品軸での出会いから始まります。そして、どんな人気商品にもプロダクトライフサイクルが存在し、衰退期がやがて訪れます。継続的なユーザー獲得のためには新規ヒット商品の創出や隣接カテゴリでの新規カテゴリ展開などで新規ユーザー獲得のための入口を確保し続けることが必須です。
また、商品は売って終わりではなく、その後の顧客接触が重要です。SNSやメルマガ、LINEなどを通じた定期的なコミュニケーションや新商品やキャンペーンの案内などを通じてリピーター育成を実現します。
第2の柱:継続的な商品ページ改善による転換率の向上
商品ページは一度作ったら終わりではありません。トレンドや時代の変化に合わせて常に改善を続けることが重要です。顧客が得られるベネフィットや、高評価レビューによる第三者評価での訴求や商品の改善点や新しいSKUの追加などで商品ページを強化し続けることが重要です。これらを充実させるサイクルを回し続けます 。
第3の柱:戦略的な客単価の向上
一人のお客様により多くの価値を提供し、結果として客単価を向上させる施策も不可欠です。
- 高単価ラインナップ商品の構築: 現状の人気商品からシリーズ化可能な商品を洗い出し、より高付加価値な新商品が開発できないか検討します。プレミアムシリーズや大容量ラインナップを作ることで商品単価の向上を狙います。
- まとめ買い・セット販売の促進:「組み合わせ販売設定」機能を活用し、商品ページで関連商品を提案することで、クロスセルを狙います。また「3点セットで〇〇%OFF」のような、まとめ買い自体がお得になるオファーも非常に効果的です。また、既存購入者に対してはメルマガやLINE限定などで、より高い客単価が狙える既存購入者限定クーポンの案内なども効果的です。
これらの施策を組み合わせることで、継続的な売上拡大を支える本質的な店舗強化戦略を実現します。
まとめ:売上急落は「店舗進化のチャンス」
楽天で急に売れなくなったときこそ、冷静な分析が店舗成長の第一歩です。冷静にデータと向き合い、一つひとつ原因を特定し、着実に対策を打っていくプロセスは、店舗運営のレベルを次のステージへと引き上げる力になります。
本記事で示した「分析」「応急処置」「本質的な強化」という3つのステップは、感覚的な運営から脱却し、データや客観分析に基づいた戦略的な意思決定ができる強い店舗へと生まれ変わるためのプロセスです。一時的な売上不調は組織進化のための必要プロセスと捉えて、店舗運営レベルを継続的に高め続けることで本質的に強い店舗へと成長していくことができます。
この記事を書いた人

村井宏海
EnterCommerce株式会社 代表取締役
学生時代にエンタメスタートアップの関西での事業立ち上げに参画。大学卒業後、楽天のECコンサルタントとして累計1,000社以上のEC事業支援に携わり、楽天賞を複数回受賞。その後、事業戦略部門でファッションEC事業立て直しプロジェクトに携わり、様々なプロジェクトを横断的にリード。17LIVE株式会社に入社し、ライブコマース事業「HandsUP」の事業責任者として立ち上げから携わり、国内導入数No.1のライブコマースサービスへの成長を牽引。2024年末に退職し、ソーシャルコマースをやライブコマースを支援するEnterCommerce株式会社を創業。
Nint ECommerceに関して

日本国内のEC市場の約7割を占める3大ECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング)の売上・販売数量をモール別、ジャンル別、ショップ別、商品別に分析できる画期的なツールです。Nint ECommerceを活用いただくことで、以下のイベント対策を効率的にサポートしています。
活用例
商品在庫(SKU単位)の拡充
・競合価格を見ながら自社の販売価格を設定
・競合のポイント倍率を見ながら自社のポイント倍率を設定
・商品名(商品情報)での差別化
・検索露出(RPPなど)の強化
Nint ECommerceを活用することで、ECビジネスチャンス創出に役立ちます。ご興味のある方は、ぜひ下記リンクよりNint ECommerceの詳細をご確認ください。
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【出典:「楽天で急に売れなくなった…原因不明の売上急落を回復に導く3ステップ」(2025年11月7日公開)】
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