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過剰在庫を防ぐには?“売れる数”から逆算する在庫最適化の考え方

はじめに

「在庫が余ってしまってお金が動かない」「人気商品が品切れで売上のチャンスを逃した」──そんなお悩み、ありませんか?
EC事業が成長するにつれて、SKUが増えたり、需要が読みにくくなったりして、これまでの在庫管理方法では追いつかなくなることもあります。特にExcelでの管理には限界を感じる場面も多いはずです。

この記事では、“売れる数”をもとに在庫を見直す考え方と、今すぐ始められる実践ステップをご紹介します。難しい理論は抜きにして、「どうすればムダなく、売れる商品をしっかり用意できるのか」を、わかりやすくお伝えします。

EC市場の成長と在庫管理のギャップ

EC市場は右肩上がりで成長しています。経済産業省によると、2023年の日本のBtoC EC市場規模は24.8兆円、EC化率は9.38%に達しています。市場が拡大するほど、需要変動は激しくなり、在庫管理の難易度も上がります。

一方で、在庫管理はそのスピードに追いつけていないのが現実です。「なんとなくの勘」で発注していると、

  • 在庫が多すぎて倉庫代がかさむ
  • 売れ残って値引きせざるを得ない
  • 人気商品がすぐ売り切れてしまう

といったことが起きやすくなります。

ECにおける過剰在庫の主な原因とは?

過剰在庫は、単に「発注しすぎた」だけでなく、以下のような複合的な要因によって発生します。

  • トレンド予測のズレ:プロモーションやSNSバズが一過性に終わることも多く、仕入れ判断が難しい
  • セールの売上を過信:キャンペーン後に売上が急落し、在庫だけが残る
  • 大ロット発注やMOQ(Minimum Order Quantity=最低発注数量)の存在:小ロットでの仕入れが難しい商材では過剰在庫化しやすい
  • 部門間連携の不備:マーケティングや商品企画と在庫担当が連携できていない
  • リードタイムの誤算:海外製造や受注生産型商材では、納期のズレが在庫過多につながる

在庫最適化の目的とKPIの考え方

「最適化」といっても、目的によってアプローチは異なります。まずは、自社が何を改善したいのかを明確にすることが大切です。代表的な目的と、それに対応するKPI(指標)は以下の通りです。

  • キャッシュフローを改善したい場合
     → 在庫回転率(月1.5回以上が目安)をチェックし、動かない在庫を削減することが鍵になります。
  • 欠品を防止したい場合
     → 欠品率や安全在庫率が指標となります。売れ筋商品が常に一定数確保されているかが重要です。
  • 値引き・廃棄によるロスを減らしたい場合
     → デッドストック率や値引き率を追跡し、ロスが出やすい商品カテゴリの見直しが有効です。
  • ESG※や在庫圧縮を推進したい場合
     → 棚卸資産の総額や在庫日数などが対象指標になります。在庫過多の常態化を防ぎ、持続可能な経営に近づけます。

※ESG=環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、持続可能な経営を評価する基準です。

「数字で考える」在庫管理の基本

在庫回転率とは?

在庫回転率とは、「どれだけ効率よく在庫が売れているか」を数字で表したものです。月に1.0〜1.5回転していれば「まずまず順調」とされます。これが低いと、売れ残りが多い可能性があるというサインになります。

在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫

※ECでは売上高ベースで簡易的に出してもOKです。

ABC分析ってなに?

ABC分析は、商品を「売上への貢献度」で3つに分ける考え方です。

  • A:よく売れる・よく利益を出す主力商品
  • B:そこそこ売れる商品
  • C:あまり動きがない商品

この分類で、A商品には特に注意を払い、C商品は在庫を絞るなどの判断がしやすくなります。

実践ステップ:在庫最適化の進め方

ステップ1:今の在庫状況を“見える化”

まずは、以下の数字を出してみましょう。

  • 在庫回転率(売上 ÷ 平均在庫)
  • 安全在庫(リードタイム×1日あたりの販売数)
  • 発注点(安全在庫+納品までに売れる見込み数)

これだけでも、どの商品が「多すぎる」「足りない」のかが見えてきます。

ステップ2:ABC分析で商品を分類

1年分の売上データをもとに、どの商品が稼ぎ頭なのかをチェック。A商品は売切れ防止を優先し、C商品は在庫を減らす対象としましょう。

ステップ3:「売れる数」をもとに発注を見直す

これまでの「なんとなく発注」をやめて、実際の販売数や傾向を参考に発注量を決めます。Excelでも十分対応できますが、Tableauなどのツールで可視化するとさらに便利です。

ステップ4:システム導入は“段階的”に

最初から大がかりな在庫管理システムを入れる必要はありません。まずは売れ筋カテゴリから、小さく始めて慣れていくのが成功のコツです。

ECならではの在庫管理の注意点

実店舗とは異なり、ECならではの在庫管理には以下のような独自の課題が存在します。これらの特性を理解したうえで、在庫最適化の設計を行うことが重要です。

セールや広告施策による売上の急変動

ECでは、広告やセールのタイミング次第で一時的に注文数が急増・急減することがよくあります。例えば、メルマガやSNS、ECモールの特集掲載により“バズる”商品が出ると、在庫が一気に枯渇したり、逆に見込み外れで大量の在庫が残ることも。販促施策との在庫連携が不十分だと、せっかくの施策が逆効果になるリスクもあるため、販売計画との連動が必要です。

返品リスクと再販判断の難しさ

アパレルや化粧品など返品率の高い商材では、返品在庫の扱いが非常に重要です。再販できるか否かの判断基準や検品体制が曖昧だと、返品品がデッドストック化するリスクが高まります。特に使用済みと判断されると再販不可な商材では、返品コストや在庫圧迫に直結します。返品・再販ルールの明確化が欠かせません。

SKU数の肥大化による管理負荷の増大

 ECでは、サイズ・色・香りなどのバリエーション展開が豊富な傾向にあります。SKU数が多いと、それだけ在庫管理・棚卸・発注判断の難易度が上がり、属人化しやすくなります。とくに、在庫の動きが鈍いCランク商品まで一律に在庫を持っていると、全体の効率が下がります。SKU整理や“売れ筋集中”の発想が必要です。

倉庫コストよりも販売機会損失が重視される

ECでは「倉庫費用を削減したい」という発想よりも、「欠品によって販売機会を失いたくない」という意識が強い傾向があります。そのため、やや在庫多めに構える企業も少なくありません。しかし、これは過剰在庫の温床にもなり得るため、“適正量”の見極めが肝要です。安全在庫の設計と、Aランク商品の重点在庫管理がカギとなります。

季節性・モール規制など外的要因の影響を受けやすい

バレンタイン、母の日、年末セールなど季節イベントの影響に加えて、モール側のルール変更や出店制限が在庫計画に直結するケースもあります。EC特有の“読みにくさ”を前提とした柔軟な在庫戦略が必要です。

このように、ECにおける在庫管理は「単に多い・少ない」の問題ではなく、事業モデルや販促施策、商品特性まで含めた総合設計が求められます。属人的判断に頼らず、データとルールに基づいた運用体制を整備することが最適化の第一歩です。

今後に向けたヒント

今後のECでは、以下のような動きがますます重要になります。

  • AIでさらに正確な需要予測
  • 倉庫とリアルタイムで在庫を連携
  • サステナブル経営の一環として、在庫を持ちすぎない工夫

まとめ

在庫最適化の第一歩は、「売れる数」を起点に在庫を“見える化”すること。数字に基づいた管理なら、売れ残りや欠品といったムダを防ぎ、キャッシュフローの改善にもつながります。

とはいえ、「何がどれだけ売れるのか?」を予測するのは簡単ではありません。
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