【2025年8〜10月】DIY用品市場レポート|売上構成比の変化
2025年8月から10月におけるDIY用品市場は、前年同期の特需的な動きからの反動や主力カテゴリの動向変化により、全体として市場規模の調整局面が見られました。
一方で、安全・保護用品や既存工具を活用するためのアクセサリー類など、周辺カテゴリでは需要の拡大が確認でき、ユーザーの関心が「新規購入」から「維持・管理」「安全対策」へとシフトしている傾向がうかがえます。
本レポートでは、大手ECサイトにおけるNint ECommerceのデータをもとに、最新の市場動向を解説します。

目次
DIY用品の市場規模
2025年8月〜10月の期間におけるDIY用品(DIY・工具)市場の規模は以下の通りです。
- 3ヵ月合計販売金額(GMV) 約206億円(前年同期比 ▲17.2%)
- 販売数量 約496万個(前年同期比 ▲8.0%)
- 平均単価(ASP) 約4,161円(前年同期比 ▲10.0%)
全体として、3ヵ月合計販売金額(GMV)および販売数量ともに前年を下回る結果となりました。特に平均単価の下落傾向(▲10.0%)が顕著であり、市場の構成比が単価の高い本体製品から、比較的安価な消耗品やアクセサリー、安全用品へと移行していることが、市場全体の数値に反映されています。
DIY用品市場のカテゴリ別売上構成比とトレンド
具体的に「どのカテゴリが伸び、どこでシェア構造の変化が起きているのか」を見ていきます。
カテゴリ別売上構成比(上位5カテゴリ)
市場全体では調整局面にあるものの、カテゴリ別に見ると成長している分野も明確に存在します。特に、現場作業の安全性を確保するためのアイテムや、手持ちの工具を長く使うためのアクセサリー類のシェア拡大が目立ちます。
- 電動工具本体
構成比 31.5%(前年同期比 ▲18.7%)| 平均販売価格 約23,543円
- 安全・保護用品
構成比 19.1%(前年同期比 +5.3%)| 平均販売価格 約3,954円
- 電動・エア工具用アクセサリー
構成比 6.1%(前年同期比 +1.8%)| 平均販売価格 約5,467円
- 計測工具
構成比 5.3%(前年同期比 +1.5%)| 平均販売価格 約6,243円
- 塗装用品
構成比 5.0%(前年同期比 +1.3%)| 平均販売価格 約4,632円
製品開発のトレンド
主力である「電動工具本体」のシェアが落ち着きを見せる一方で、作業服や安全靴、ヘルメットなどを含む「安全・保護用品」が大きくシェアを伸ばしています。また、バッテリーや替刃といった「アクセサリー」カテゴリや、精密な作業に必要な「計測工具」、補修・メンテナンスに使われる「塗装用品」の需要が高まっており、ユーザーの投資先が「新しい道具を買う」ことから「作業環境を整える」「道具をメンテナンスする」ことへ変化しているトレンドが見て取れます。
DIY用品市場の価格帯別販売構成と販売戦略
本セクションでは、市場の収益構造を「価格帯」という切り口から解き明かします。
価格帯別の販売構成について
価格帯別の動向を見ると、低価格帯の消耗品が販売数量のベースを支えつつ、高価格帯では特定機能を持つ製品や防災用途を兼ねた製品が一定の売上を確保する構造となっています。売上金額ベースでの構成比は以下の通りです。
低価格帯(〜約1.8万円) 売上構成比:約48%
販売数量の大部分を占める最大のボリュームゾーンです。消耗品、手動工具、安全保護用品などが中心で、購入頻度が高い傾向にあります。
中価格帯(約1.8万円〜約5.3万円) 売上構成比:約23%
エントリーモデルの電動工具やセット品が主となる価格帯です。DIY初心者から中級者層の取り込みにおいて重要な役割を果たしています。
高価格帯(約5.3万円〜) 売上構成比:約29%
プロ仕様の高性能電動工具に加え、ポータブル電源などが含まれます。特にポータブル電源は防災・アウトドア需要を取り込み、単価の高さから売上金額への貢献度が高いセグメントです。
価格帯別の販売戦略について
低価格帯
高単価な本体とのセット提案や、消耗品のまとめ買い(バンドル販売)を促進し、顧客単価と購入頻度を高める施策が有効です。
中価格帯
比較検討されやすいこの価格帯では、バッテリーと本体のセットなど「すぐに使える」利便性やコストパフォーマンスを強調し、DIY初心者や買い替え需要を確実に取り込む戦略が求められます。
高価格帯
プロ仕様の工具やポータブル電源などの高額製品は、機能や信頼性が重視されます。防災やアウトドアなど利用シーンを広げる提案を行い、明確な目的を持つ層へスペックの優位性をアピールすることが重要です。
(参考)ジャンル別価格分布
Nint ECommerceを使った価格帯別売上規模推移
市場の見える化を実現するツール「Nint ECommerce」でTOP5メーカーの価格別売上構成比を見ると以下のように確認できます。
※ご契約プランによって確認可能

横軸:価格帯で分けており、太さが構成比
縦軸:該当価格帯におけるメーカーシェア率
出典:Nint ECommerce
展望予測とDIY用品市場を読み解くヒント
本章では展望と市場を読み解くヒントをご紹介します。
今後の展望
短期的には、年末に向けた大掃除やメンテナンス需要により、洗浄機器や補修用品、収納用品の動きが活発化すると予測されます。
中長期的には、労働安全衛生への意識の高まりから「安全・保護用品」の堅調な推移が続くと見られ、機能性だけでなくデザイン性や快適性を重視した製品開発が市場の鍵となるでしょう。
DIY用品市場を読み解くヒントは「Nint ECommerce」!
詳細なDIY用品市場の分析や、競合各社の動向把握には、ECデータ分析ツール「Nint ECommerce」が強力な武器となります。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大モールの膨大な購買データを精緻に可視化し、「今、何が売れているのか」「競合店舗はどんな手を打っているのか」を瞬時に把握可能。自社の立ち位置を客観的に捉え、勘や経験だけに頼らない、確かなデータに基づいた「勝てる戦略」の立案を実現します。

さらに、Nintが提供する「AIインサイトレポート」は、変化の激しいEC市場において、多忙な皆様に代わりAIがトレンドの予兆をいち早くキャッチします。膨大なデータの中から特筆すべき市場の変化や急上昇商品を自動で抽出し、インサイトとして提供。分析にかかる時間を大幅に短縮し、迅速かつ精度の高い意思決定を強力にバックアップします。データとAIの力で、市場のチャンスを逃さず掴み取るための「羅針盤」としてご活用ください。

調査概要
- 対象期間:2025年8月1日〜2025年10月31日
- データソース:Nint ECommerce
- 対象カテゴリ:DIY・工具
この記事を書いた人

山本 真大(やまもと まさひろ)
株式会社Nint マーケティングDiv ECアナリスト
株式会社明治の菓子営業としてキャリアをスタートし、主に店頭での販促施策を担当。その後IT業界・流通業界・他業界のメーカー職を経験し、オフライン市場における、製造・流通に携わる。EC業界の今後に魅力を感じ株式会社Nintへ入社。営業・カスタマーサクセスを経て現在、ECデータアナリストとして、数々のブログや電子書籍の執筆、セミナー登壇に関わる。
セミナー登壇数は20を超え、オフラインの経験とオンラインのデータ分析をもとにした、セミナー内容は参加者からも好評をいただいている。
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